太平洋サバ類 漁獲枠78割減検討
漁獲量の多いものの中には、沿岸漁業、特に定置網漁業や底びき網漁業で多く漁獲されるものが含まれており、数量管理の導入に当たっては、想定外の大量来遊による漁獲の積み上がり等への対応や迅速な漁獲量の収集体制の整備等の課題の検討が必要となります。
しかし、それ以降、生産量が急速に減少し、平成3(1991)年には漁獲量が約70トンにまで減少したことから、研究機関が算定したシミュレーション結果や漁業者間の会合での議論を踏まえ、平成4(1992)年9月から3年間の全面禁漁を行うことに合意し、全ての漁業協同組合の組合長により「はたはた資源管理協定」が締結されました。その後、沖合では、底びき網漁船の減船及び小型化等に、また、沿岸では、定置網及び刺し網の統数削減のほか、産卵場保護のため、操業禁止区域を設けるなど、それぞれ漁獲努力量を減らすことが決められました。さらに、漁業者等で構成する「ハタハタ資源対策協議会」において、自主的なTAC制度によって管理することが決定され、漁業協同組合によっては、配分されたTACを更に漁業者に割り当てているところもあります。
さらに、平成14(2002)年度から、減少傾向にある魚種について、幅広い範囲の関係漁業者、都道府県、国等が協力して、漁獲努力量の削減(減船や休漁、網目規制等)を計画的、総合的に行い、その回復を図ろうとして、国や都道府県が策定する「資源回復計画」が開始されました。これは、漁業者の自主的な取組を国や県の公的な管理枠組みの中に整合的に取り込んだものです。
また、クロマグロの来遊状況により配分量の消化状況が異なることから、漁獲したクロマグロをやむを得ず放流する地域がある一方で、配分量を残して漁期を終了する地域も発生していました。このため、くろまぐろ部会では都道府県や漁業種類の間で漁獲枠を融通するルールを作り、平成30(2018)年漁期から漁獲枠の有効活用を図っています。
TACを個々の漁業者又は船舶ごとに割り当て、割当量を超える漁獲を禁止することによりTACの管理を行う漁獲割当(IQ)方式は、産出量規制の1つの方式です。我が国は、ミナミマグロ及び大西洋クロマグロを対象とする遠洋まぐろはえ縄漁業とベニズワイガニを漁獲する日本海べにずわいがに漁業に対して国によるIQ方式を導入しています。
なお、これまで、北部太平洋で操業する大中型まき網漁業を対象に、サバ類についてIQ方式による管理が試験的に実施されてきましたが、IQ方式の導入によって漁業者の責任が明確化されることにより、より確実な数量管理が可能となるとともに、割り当てられた漁獲量を漁業者の裁量で計画的に消化することで効率的な操業と経営の安定が期待されます。
平成23(2011)年度には、由比(ゆい)港漁業協同組合及び大井川港漁業協同組合において、資源管理計画(休漁、漁獲量制限、試験操業による小型魚保護が主な管理措置)が作成され、自主的な資源管理の取組が続けられています。平成27(2015)年度に行われた評価・検証では、資源水準がやや低迷しているとの結果が示され、また近年では漁獲量は低迷していますが、漁業者は、静岡県水産・海洋技術研究所が示す科学的データ等も踏まえながら、資源量の回復に向け、自主的な資源管理の取組を継続しています。
資源管理の手法は、1)漁船の隻数や規模、漁獲日数等を制限することによって漁獲圧力を入口で制限する投入量規制(インプットコントロール)、2)漁船設備や漁具の仕様を規制すること等により若齢魚の保護等特定の管理効果を発揮する技術的規制(テクニカルコントロール)、3)漁獲可能量(TAC:Total Allowable Catch)の設定等により漁獲量を制限し、漁獲圧力を出口で制限する産出量規制(アウトプットコントロール)の3つに大別されます(図表3-5)。我が国では、各漁業の特性や関係する漁業者の数、対象となる資源の状況等により、これらの管理手法を使い分け、組み合わせながら資源管理を行ってきました。
漁獲量の減少が年々続く太平洋の「サバ類」について、水産庁は今年の漁獲枠を去年より7割から8割削減する案を示しました。 「サバ類」の漁獲量の減少は年々続いていて、おととしは10万トン余りと5年前の半分以上まで落ち込んでいます。 水産庁は5日、漁業者などと有識者会議を開き、太平洋のマサバやゴマサバ、いわゆる「サバ類」について、今年の漁獲枠をあわせて▼6万8000トン、または▼10万9000トンとする去年の35万トン余りからおよそ7割から8割削減する2つの案を示しました。 水産庁によりますと、特に「マサバ」の成長が鈍化しているほか、親魚の資源量が大きく減っていることが要因だということです。 仮に漁獲枠が大幅に減った場合、国産「サバ類」の価格高騰や輸入ものに頼ることになるかもしれませんが、水産庁は来月にも最終的な漁獲枠をとりまとめるとしています。 一方、日本海や東シナ海での「サバ類」は漁獲量が回復傾向にあることから、去年と大きく変わらず22万トン余りと示されています。
ハタハタは、秋田県において郷土料理であるしょっつる鍋やハタハタ寿司に欠かせない食材であり、秋田県では主に沖合・小型底びき網、定置網及び刺し網漁業で漁獲し、昭和50(1975)年には、底びき網の生産量の半分近く、生産額の4分の1を占める重要な魚種でした。
令和3(2021)年3月末現在において、小型魚の漁獲実績は漁獲上限4,238トンに対して3,105トン、大型魚の漁獲実績は漁獲上限6,160トンに対して5,318トンとなっています。
このような資源管理型漁業の推進のほか、人工種苗の大量放流や産卵藻場の造成等の取組により、秋田県のハタハタの漁業生産量は、解禁直後の平成7(1995)年には143トンとなり、さらに、その後、平成16(2004)年の漁獲量は禁漁前の約46倍の3,252トンに達し、資源回復を果たしています。こうした中、令和元(2019)年9月に秋田県秋田市で開催された第39回全国豊かな海づくり大会では、秋田県漁業協同組合が資源管理型漁業部門大会会長賞を受賞しました。近年、ハタハタの漁獲量は減少傾向にありますが、ハタハタ資源の増大のため新たな取組を行うなど長期的かつ継続的な資源管理の取組が高く評価されました。
現行のTAC魚種について、1)サバ類(マサバ太平洋系群及び対馬暖流系群、ゴマサバ太平洋系群及び東シナ海系群)については、令和元(2019)年6月に、MSYベースの資源評価結果が公表され、その後、資源管理方針に関する検討会(ステークホルダー会合)を2回実施し、令和2(2020)年漁期から新たな資源管理に即したTACによる管理を先行して実施しています。2)マイワシ、マアジ、スルメイカ、スケトウダラ、ズワイガニについては、令和2(2020)年の夏から秋にかけて、MSYベースの資源評価結果(更新結果)が順次公表され、水産資源ごとに資源管理方針に関する検討会(ステークホルダー会合)を開催し、資源管理の目標や今後どのように管理していくのか(漁獲シナリオ)について活発な議論が行われました。こうした議論を経て、意見が取りまとめられ、それぞれの漁期開始から、新たな資源管理に即したTACによる管理を実施します。3)サンマやクロマグロの国際資源については、令和2(2020)年にTAC意見交換会を実施し、関係する地域漁業管理機関の決定や議論の進捗に応じたTACの設定が行われました。このように、現行のTAC魚種については、令和3(2021)年漁期から新漁業法に基づくTACによる管理に移行することになりました。
漁業の成長産業化のためには、基礎となる資源を維持・回復し、適切に管理することが重要です。このため、資源調査に基づいて、資源評価を行い、漁獲量がMSYを達成することを目標として資源を管理する、国際的に見て遜色のない科学的・効果的な評価方法及び管理方法を導入することとしています(図表3-7)。
TAC魚種の拡大については、漁獲量が多いものを中心に、その資源評価の進捗状況を踏まえ、TACによる管理を順次検討・実施する資源を公表していくこととしています。
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