ドル円 日銀追加利上げ観測で円高進行
今週初めのドル円は、トランプ大統領の関税政策の影響が懸念される中、154円台後半でスタートしました。
トランプ大統領がカナダ、メキシコ、中国からの輸入品に対する関税を強化する大統領令に署名したことでアメリカでインフレが再加速するとの見方が広がり、3日(月)のドル円は一時155円台後半へと上昇しました。その後リスク回避の円買いが強まって154円台前半まで下落しましたが、トランプ政権によるメキシコへの関税措置の発動が1ヶ月間停止されたことが伝わるとドルが買い戻され、4日(火)夕方には155円台半ばまで持ち直しました。
4日に米12月雇用動態調査(JOLTS)求人件数が発表されると、予想を下回る結果を受けてドル売りが強まり、ドル円は154円台前半へと下落しました。
5日(水)には日本の12月毎月勤労統計調査で現金給与総額が市場予想を大きく上回ったことや、赤澤経済再生担当大臣が「足もとはインフレの状態という認識、植田総裁と齟齬ない」と発言したことを受けて日銀の追加利上げ観測が強まり、ドル円は153円台前半へと続落しました。さらにその後米1月ISM非製造業景況指数が予想下振れとなったこともドル売りを誘い、約2カ月ぶりの水準となる152円台前半まで円高ドル安が進みました。
6日(木)には一時152円台後半まで持ち直す場面もあったものの、米新規失業保険申請件数などが弱い結果となったことで再びドル売りが強まり、7日(金)午前には一時150円台後半まで下落しました。
今週のドル円は日銀の追加利上げ観測が強まって下落する展開となりました。米指標で弱い結果が目立ったこともドル売りを誘い、昨年12月以来の水準まで円高ドル安が進みました。
来週は米1月消費者物価指数(CPI)や米1月小売売上高などの重要イベントが予定されています。ドル円の上値の重さが意識される中、重要なインフレ指標とされる米CPIを受けて相場にどのような方向感が出るか注意深く見極める必要がありそうです。
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ドル円相場2 3週振り返り 日銀追加利上げ観測で円高進行
FOMC直後の金融市場は比較的落ち着いた動きとなりました。これに対し、日銀金融政策決定会合後の金融市場は、追加緩和期待が高まっていただけに、失望感が広がり円高、株安が進行しました。ただ足元では緩やかな米利上げペースが市場に浸透し、リスク資産全般に持ち直し傾向がみられ、また日銀の追加緩和観測自体は継続すると思われます。そのためここから相場の地合いが急速に悪化し、円の上昇や日本株の下落が更に加速していく可能性は低いとみています。
米国では、12月にも利上げが行われる可能性がありますが、日欧の低金利環境下で投資家の米国債に対する需要が強いことがサポート要因となることから、米金利の上昇は限定的となり、その後利回りはレンジ圏で推移すると見込まれます。欧州では、ECBが金融緩和策を強化する見通しですが、テーパリング(金融緩和策の縮小)の観測もくすぶるため、長期金利は緩やかにレンジを切り上げる展開が見込まれます。日本では、日銀のイールドカーブ・コントロールにより、日本国債の利回りは低位での推移が見込まれます。米国など主要国の社債市場は、企業の底堅い業績などを背景に、社債スプレッドは引き続き安定的に推移する見通しです。
現時点でトランプ次期大統領の政策はまだ何も決まっていません。そのため大統領選挙後の世界の金融市場は、過度な「期待先行」、「思惑先行」で動いていることになります。したがってその持続性にはやや疑問が持たれ、新興国市場のトリプル安もいったん落ち着く可能性があります。この先は、新興国の資産のみならず日米の株価や長期金利、そしてドル円についても、次第に明らかになる具体策をにらみつつ、適正水準を模索する展開が予想されます。
ドル円相場は、米ドルからみて下落スピードが速く、落ち着きを待つ展開です。米ドルの水準は、追加利上げが極めて緩やかとの期待の上に成り立っていることから、6月の利上げの可能性が高まる指標が発表されるかが重要です。一方、中国などの新興国経済の減速懸念は依然くすぶっているほか、原油・資源価格の値動きも予断を許さない状況が続いています。リスク回避の動きが強まる場合には、円高が進むリスクも引き続き考えられます。ユーロ円相場は、ECBと日銀の金融政策の方向性が同じであり、また、5月はそれぞれ金融政策を決定する会合がないことから、総じて横ばいの動きが予想されます。
ドル円は大幅な米ドル安・円高となりました。米ドル/円は2014年10月以来の106円台まで円高となりました。日銀が金融政策を据え置いたことで、市場にあった追加緩和期待が剥落したことが背景です。ユーロ円もユーロ安・円高が進みました。
「日本銀行の植田でございます」で始まったその講演の内容を多くの投資家が一言一言、追いかけていたと思います。総裁の講演内容はこうでした。利上げについては「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」「経済や物価の改善にあわせて、金融緩和の度合いを少しずつ調整していくことは息の長い成長を支える」と述べ、これまでどおりその意義を強調しました。一方で市場の最大の関心事、次の利上げのタイミングについては「先行きの経済・物価・金融情勢次第」「毎回の金融政策決定会合ではその時点で利用可能なデータや情報などから経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら判断していく方針だ」と述べるにとどまりました。「あると思っていた次の利上げに向けたメッセージはない」市場の受け止めは「肩透かし」と言ってもいいものでした。外国為替市場では総裁の発言から日銀は早期の追加利上げには踏み切らないのではないかという見方が広がり、講演の直前に1ドル=153円台で取引されていた円相場は、1ドル=155円台まで円安が進みました。
トランプ次期大統領は、2017年1月20日の就任式を経て、「就任100日行動計画」に基づき具体的な政策を打ち出す見通しです。足元で相当な「期待」を織り込んでいるドル円相場を一段と押し上げるには、政策が「期待」以上の内容となることが求められます。
日銀 植田総裁「もちろん前進はみられていると思う。全国のCPI(消費者物価指数)が今週後半に発表されるので、それをみたいと思う。東京について出た10月のデータは、ある程度サービス価格への転嫁が進んでいると判断している」
一方、トランプ政権による追加関税は不透明感が強い。現状では、対中国関税が一部引き上げられることで、ドルの下値が支えられる程度と想定している。この結果、3ヵ月後の水準は現状比でややドル安の154円前後と見込んでいる。ただし、トランプ政権の政策発動は予測困難であり、想定よりも大規模・広範な追加関税が実現する場合には、160円を突破する可能性もある。
20日の政権発足後には、大統領令による即時の関税引き上げが回避されたことを受けて一旦ドル安に振れたが、直後にトランプ大統領が2月からのメキシコ・カナダに対する関税引き上げの可能性を示唆したことでドルが反発するなど、ドル円は乱高下した。
米国は、緩やかな利上げペースのスタンスを維持すると思われますが、次の利上げは早くても6月頃と思われます。ユーロ圏では、足元では金融緩和の効果を見極めるスタンスで、追加の緩和は年後半と思われます。日本も金融緩和の効果を見極めるスタンスです。ただ、物価水準が再び下振れていること、企業マインドが悪化していること、1-3月期の実質GDP成長率も低位に留まること等から、政府・日銀として政策対応が発動される可能性があります。
ドル円相場については、トランプ次期大統領の政策に対する期待が強く、日米長期金利差の拡大が見込まれることから、米ドル高・円安へと向かいやすい環境が当面続くと考えられます。ユーロ円相場については、低インフレを背景に、ECBが12月理事会で量的緩和を延長する可能性が高いため、ユーロは当面軟調な展開が見込まれます。また、英国のEU離脱選択に伴う不透明感から、英ポンドは当面下落圧力を受けやすい地合いが引き続き予想されます。
たしかにまだ1か月。この先、経済がどう動くのかわからない中で、利上げするかどうかの判断を下すのは難しいのかも知れません。ただ、日銀が政策に込める思いと市場の受け止めにズレがあった場合にどんなことが起きるのか。それは株価が記録的な乱高下となった前回の追加利上げの直後(8月上旬)を振り返るとすぐにわかります。市場は「日銀は前回の追加利上げ時のコミュニケーションに課題があったと反省しているだろう。次の利上げのときは、あらかじめ“やるぞ”というメッセージを発信してくるのではないか」と見ています。
月初1.1%台前半でスタートした長期金利は、好調な米経済指標を受けた米金利上昇や日銀による1月利上げ観測を受けて、今月半ばに1.2%台半ばに到達。その後はFRB高官の利下げに前向きな発言などを受けてやや低下し、足元では1.1%台後半にある。
UBS証券 足立正道チーフエコノミスト「今回の植田総裁のメッセージは12月の会合で利上げに関するコミットはなく、慎重なスタンスだったように思う。ただ、日銀はすでに2025年に向けた賃金ダイナミクス(上昇の動き)がポジティブ(前向きに)に展開していることを認識しており、何らかの理由で予期せぬ市場の混乱が起こらないかぎりは、日銀が12月に利上げをするという見方だ」
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