米高騰 背景に 消えた21万トン
――農林水産省は「コメの生産量は増えているのに、行方がわからなくなっているコメが21万トンある」と指摘していて、これが価格高騰の背景にあるとみています。「行方不明のコメ」「消えた21万トン」などと言われているコメは、どこに行ったんでしょう?
日本総合研究所 三輪泰史氏:農水省が「消えた」というある意味で強い表現なんですけども、通常のルートとは違うところの人はなぜ入ってくるのかというと、お米を仕入れて高く売ればもうかるからと、お米を普段扱っていない人が出てきているんです。この方々は、少し強調すると、“転売”に近いような形での仕入れと売りになっていくので、少しでも高いところに売れればそちらのルートを選んで行くんです。通常のルートであれば、それぞれの商慣行の中では信頼関係があるので、相場に合わせて売っていくんですが、そうじゃないところで異常な高値で買っていくと、JAであったり、卸業者はそこに負けないように高い値段で仕入れなくてはいけないということで、全体が“消えたお米”の影響で、値上がりにつながってしまっているという状況なんですね。
――例年であれば新米が出回れば値段が下がりますが、今回はそうではないですね?通常であれば、量が足りるようになったら値段が下がるというのが基本路線なのですが、今回、量はあるけど足りないというのが“消えた”部分なんです。この部分がちゃんと市場のルートに流れていれば、もう値段は手頃な価格に戻っているはずなんです。いわゆる「売り惜しみ」「出し惜しみ」が発生しているので、市場のバランスが崩れて値段が上がっていると。
たとえば、農家がJA(農協)に出荷せずに、直接販売や自家消費を増やした場合、それは政府の統計には反映されません。そのため、「市場に出回っているはずのコメがない!」と見えてしまうのです。でも実際には、どこかに消えたわけではなく、 販売ルートが変わっただけ という可能性が高いです。
つまり、「17万トンのコメが消えた!」と聞くと驚きますが、実態を知ればそこまで大騒ぎする話ではない可能性が高いのです。次の章では、「統計のズレ」が起こる仕組みをさらに詳しく解説していきます!
では、JAに集まらなかったコメは、どこに「消えた」のか。
24年夏、減反政策で生産量を減らしていたところに、猛暑による高温障害が追い打ちをかけて供給不足が起こり、スーパーからコメが消えた(参考記事〈このままでは「令和の米騒動」が繰り返される…コメ不足を放置して利権を守る「農水省とJA農協」の大問題〉)。
「コメが17万トンも行方不明!?」というニュースを見て、「誰かが隠したのでは?」「市場から消えたのでは?」と思った人もいるかもしれません。でも実際は、 統計と流通の仕組みの違いが原因で、数字が合わなくなっている可能性が高い んです。
「17万トンのコメが行方不明!?」と聞くと、市場から突然コメが消えたような印象を受けるかもしれません。でも、実際には 流通の仕組みが変わったことで、従来の統計とズレが生じている可能性が高い のです。
こういったケースでは、統計に反映されません。つまり、「市場に出回るはずのコメが消えた」と見えるわけです。
●「行方不明の米」は実際に消えたわけではないこうした要因が重なると、 政府の統計上は「行方不明」になったように見える だけで、実際には農家や業者の手元にある、または海外に渡っている可能性が高いんです。
コメは、9月ころに収穫したものを倉庫で保管し、10月から翌年9月の収穫時までナラシて(各月ほぼ均等に)販売・消費する。昨年夏にスーパーの店頭からコメが消えたのは、この時期が端境期になっているからである。農林水産省は、いずれ24年産の新米が供給されるのでコメ不足は解消されると言ったが、24年産米は本来24年の10月から25年の9月にかけて消費されるものである。24年8~9月は、24産の新米を先(早)食いしている状態だった。
こうしたさまざまな要因が重なった結果、「行方不明」とされた17万トンのコメは、実際にはどこかに存在している可能性が高いのです。単に従来の流通経路を通らなかったり、統計に反映されなかったりしただけで、本当に消えてしまったわけではないのかもしれません。
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