【見通し】株式明日の戦略-中小型優位の流れが継続、米CPIを受けたグロース250指数に要注目

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【見通し】株式明日の戦略-中小型優位の流れが継続、米CPIを受けたグロース250指数に要注目

12日の日経平均は続伸。終値は162円高の38963円。

 東証プライムの騰落銘柄数は値上がり851/値下がり743。古河電工や住友電工など電線株が買いを集めており、フジクラは全市場の売買代金トップとなる大商いで10%を超える上昇。決算を材料にSBが大幅高となり、決算発表前のソフトバンクGにも資金が向かった。指数が最高値を更新したスタンダード銘柄では、「継続企業の前提に関する注記」の記載解消が好感されたメタプラネットが急騰。三井物産と北米市場向け基板ECを新規開設すると発表したピーバンドットコムがストップ高となった。

 一方、日産自動車が5%を超える下落。台湾鴻海が日産に対して買収ではなく提携の方向で検討していると伝わったことが売り材料となった。川崎重工やIHIなど防衛関連の一角が軟調。前日ストップ高のDeNAは買いが先行したものの、失速してマイナス圏に沈んだ。決算では前期計画未達のクラレや3Qが市場の期待に届かなかった大阪ソーダなど、化学セクターの銘柄が厳しい下げとなった。

 日経平均は続伸。高く始まって失速したが、マイナス圏に沈んだところですぐに切り返しており、売りづらさは印象づけられた。グロース250指数はきょうで6日続伸、スタンダード指数は最高値を更新と、中小型株には引き続き流れが来ている。グロース250指数のきょうの高値は693.22pで、昨年7月の戻り高値697.56pに迫ってきた。同水準や節目の700pを早々に上回るようなら、そのことが新興銘柄の復活に対する期待を一段と高める材料にもなり得る。

 本日、米国では1月の消費者物価指数(CPI)が発表される。足元では米国の10年債利回りが高値圏で推移している。日本の新興銘柄は足元では米金利上昇を気にするような動きを見せてはいないが、昨年は長期金利の動向に神経質になることも多かった。CPIが弱めの結果となって米金利が低下し、米国株の上昇を呼び込むというのが日本株には理想的な流れ。一方、CPIが強く米金利が上昇するようだと、日本のグロース株にも逆風となる。この際に大型グロースだけが嫌われるのであれば足元の地合いに変化はないだろうが、新興グロースが大きく下げるようだと日本株全体では手詰まり感が出てくる恐れがある。グロース250指数の強い基調が続くかどうか、あすの値動きが大きく注目される。

・提供 DZHフィナンシャルリサーチ

[紹介元] 外為どっとコム マネ育チャンネル 【見通し】株式明日の戦略-中小型優位の流れが継続、米CPIを受けたグロース250指数に要注目

見通し 株式明日の戦略中小型優位の流れが継続 米CPIを受けたグロース250指数に要注目

当ファンドでは最近、東京海上ホールディングスへの新規投資を行いました。新規銘柄の組み入れは、昨年の日立製作所以来となります。 東京海上ホールディングスは、1879年に日本初の損害保険会社として創業しました。同社は国内のメガ損保グループ3社のなかでも最大手であり、保険引受事業の収益性を示すコンバインドレシオも安定して業界トップ水準にあります。 当ファンドでは、同社への投資によって株主が得られるリターンとして年率一桁後半から10%前後が長期間にわたって期待できると考え、投資を行いました。この「年率一桁後半から10%前後」の期待リターンは、当ファンドで組み入れている高成長銘柄群の期待リターンと遜色ない水準ですが、両者のリターンの源泉には大きな違いがあると考えています。高成長銘柄群の株価押し上げ要因は、年率一桁後半から10%前後が見込まれるビジネスそのものの利益成長率に主に依存しています。例えば、毎年事業利益が10%成長すると株価が10%上昇する、といった具合です。そして配当利回りは相対的に低く、自社株買い・消却による一株当たり利益の押し上げ要因は小さいのが特徴です。 一方、東京海上ホールディングスは、ビジネス全体の利益成長率見通しこそ年率一桁前半から半ばとやや低めですが、相対的に配当利回りが高く、継続的な自社株買い・消却による一株当たり利益の押し上げ要因が大きいのが特徴です。後述するように、これら3つの要因(利益成長率、自社株買い、配当利回り)を合計すると「一桁後半から10%前後」が年率期待リターンとなります。PER(株価収益率)などでみた株価指標も現在の日本の株式市場平均に比べ安く、バリュエーションの切り下がりリスクも小さいと判断しています*1。*1 会計上の当期純利益をベースとしたPERでみても13倍程度、同社が経営指標としている修正純利益*2をベースとするとPER10倍程度と割安にとどまります。*2 修正純利益とは当期純利益に、保険ビジネス特有の異常危険準備金、危険準備金、価格変動準備金などの年度繰入額を足し戻したうえ、企業買収に伴って発生する無形固定資産の定期償却額やその他評価性引当金を足し戻すことで計算されるキャッシュフロー利益に近い概念です。損保各社が使っている同利益指標は、より適正な資本効率(修正ROE)を示したり、配当原資を計算する根拠になっています。

当ファンドではマクロ経済のデータや見通しのみを投資判断の材料とはしません。あくまで個別企業のビジネスが株主にとって魅力的であるかを見極めて投資をします。しかし日本の大型株を中心に投資する以上、経済の見通しに対して何らかの見解を持って運用にあたることは大切だと考えます。2023年11月の運用コメントで触れたとおり、当ファンドが考えている日本株市場における今後の重要な時代認識は「インフレの常態化」と「金利の正常化」です。短期的にはインフレや金利の落ち着きが見られたとしても、長期的には株式市場が想定しているよりも国内インフレが上振れる可能性が十分あるという前提に立っています。そうなれば長期金利にも上昇圧力がかかるでしょう。このような環境下では、当ファンドではグローバルでビジネスを展開する国際優良銘柄、およびグローバル企業でありながらも国内金利上昇(金利正常化)の恩恵を受けるような銘柄が投資対象として魅力的であると考えています。

2024年9月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.53%の下落、日経平均株価は同1.88%の下落となりました。 月前半は米国のISM製造業景況感指数や雇用統計が予想を下回ったことで、米国経済の減速懸念が高まり市場心理に影響を与えました。さらに米連邦公開市場委員会(FOMC)による利下げ期待と日銀の利上げ期待の高まりにより、月半ばにかけて円高が進行しました。このような状況の中、株式市場は一時的に下落した後、反発が見られたものの上値は重く、投資家は慎重な姿勢を維持しました。 月後半はFOMCが0.5%の利下げを決定した後、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が緩和を急がない姿勢を示したことや、日銀が金融政策を現状維持したことから円高が一服し、輸出関連株や半導体関連株の買い戻しが進みました。また、自民党総裁選挙で高市早苗氏が当選し、金融緩和が再開されるとの見通しが高まったことで日経平均株価は26日から27日にかけて大きく上昇しました。しかし、最終的には石破茂氏が勝利し、経済政策への警戒感が高まったことなどから30日の日本株式市場は全面安の展開となり、前月末比で下落して当月の取引を終えました。

(長期で魅力的なビジネス) 同社が展開する損保ビジネスは、海外での成長余地が膨大にあること、また成熟化している日本国内では高水準で安定した利益が生み出されていることから、「魅力的なビジネス」であると当ファンドでは考えております。同社が経営指標として重視する修正ROEは12.7%(2022年3月期実績。会計上のROEでみても10.9%)と、資本収益性も日本企業の平均を上回っています。 日本国内における損保産業は自動車保険、火災保険ともに広く普及している結果成熟化が進んでおり、高い成長性を求めるのは難しい環境にあると考えます。しかし同社は海外の保険会社買収により、平均して年率一桁半ばの利益成長率をこれまで実現しています。 この買収戦略を可能にしているのが、過去20年でメガ損保3グループを中心に進んだ国内業界再編による市場寡占化(=高い参入障壁)と、豊富な含み益を持つ政策保有株の存在です。寡占化によって国内市場で潤沢な利益が生み出されるようになったことに加え、以前は非効率な金融資産と見なされていた政策保有株も、今日では売却資金化によって戦略的活用が可能となりました。政策保有株は、世界的にも珍しい日本のメガ損保独自の競争優位性となっています。同社の政策保有株の規模は、今日現在でも時価2.4兆円程度に上ります。このうち、毎年の売却資金額は年1,000億円規模です。 生み出されたこれらの資金は、海外企業の買収だけでなく、継続的な自社株買いにも活用されます。会計上、政策保有株の未実現利益の変動は貸借対照表の純資産の部(その他有価証券評価差額金)に反映されますが、日本の株式市場が好調な場合、未実現利益の拡大によって当期純利益の増大を伴わずに純資産が膨れ上がることを意味します。同社は政策保有株の売却資金を自社株買いにまわすことで、分母である資本面からもROEを高めることが可能なポジションにあると考えます。 自社株買い・消却によるメリットは、一株当たり利益の引き上げにもつながります。同社の中期経営計画の主要な目標は「修正純利益CAGR(年平均成長率)+3~7%」ですが、継続的に自社株買い・消却を進めることで、「一株当たりの分け前」が増えることになります。過去の実績を鑑みると、今後も一株当たり利益の伸び率は、当期純利益全体の成長率よりも1.5~2.5%程度高くなることが予想されます。従って、持続性のある一株当たりの利益成長率見通しは保守的に見ても一桁半ばから後半とみなすことができると考えます。同社の自社株買いは2017年3月期以降、少ない時でも年500億円、多い時で年1,500億円実施しています。 このように同社は、会社の利益全体を引き上げる効果がある海外買収案件が見つかればM&Aに、なければ一株当たり利益を引き上げる効果がある自社株買いに資金を活用することで、最適な資本配分を行っているのです。当然、自社株買いも自社の株価水準が割安であるかどうかが実施の判断基準となります。 さらに同社は成長投資に資金を振り向けてもなお、潤沢なキャッシュフローが手元に残るため、配当性向の継続的な引上げも行っています(2017年3月期実績:配当性向36%、一株当たり配当金140円、2023年3月期計画:同50%弱程度、同300円)。現在の中期経営計画における2024年3月期の配当性向目標は50%です。2022年6月末時点の株価だと配当利回りは4%前後になるため、同社株を保有することによる期待リターンは下記の通り年率一桁後半から10%前後となると考えます。

2)過去の実績や事実に関する情報 外部の人々による意見や将来に関する業績予想・見通しは出来るだけ排除することで、吟味する情報量を軽減します。他者の主観的意見によって、自分たちの判断が左右されるのを極力避け、事実や実績に基づいた分析によって当ファンド独自の意見や、ビジネスの質に関する評価、将来の見通しをたてることを意識的に行うようにしています。こうすることで、コンセンサスからは差別化された投資判断が可能となります。株式投資で市場平均を上回るリターンのためには、自らのポートフォリオが差別化されていることが重要なのは2021年9月の月次報告書で述べたとおりです。

花王 2022年12月期の第2四半期累計(1~6月)の売上高は前年同期比8.7%増となりましたが、営業利益は同23.9%減と苦戦しています。2018年10月に株価がピークをつけて以降、同社は業績の低迷が続いています。2018年ごろより日用品ブランドのアジア(特に中国)における強みに陰りがでてきただけでなく、その後も国内で新型コロナウイルス感染拡大による訪日客の減少、いくつかの製品分野での競争激化や原材料価格の上昇など逆風が続いています。現在は、既存製品の高付加価値化やマーケティング手法の改善、原材料コスト高騰に対応した製品値上げ、コスト構造改革などで成長軌道への回帰を模索している段階にあります。同社が短期的に業績回復を遂げるかは不透明ですが、当上期の決算内容を見る限り、国内において衣料用洗剤や生理用品などにおいてわずかながら市場シェア拡大の兆しが見えています。またアジアではインドネシアが比較的好調を維持しています。同社は2018年度のピークまで過去20年の一株当たり増益率が年率10.8%、平均ROE13.2%、そして今期を含めて33期連続の増配記録を更新する見通しの優良かつ実績のある企業です。同社の2030年までの長期ビジョンでは売上高2.5兆円、営業利益率17%、ROE20%を超える水準を目標としています。

リクルートホールディングス 2023年3月期第1四半期決算では、売上収益は前年同期比26.8%増、調整後EBITDAは同15.9%増と当四半期は好調な決算が続きました。しかし、経営陣は主力のオンライン求人広告事業(HRテクノロジー部門)について、金利上昇に伴う景気減速感の台頭で7月以降に売上伸び率にも減速の兆しがでてきていることを認めており、通期の見通しは慎重に見たほうが良さそうです。とはいえ、同分野における同社の市場シェア・競争力ともに圧倒的と言われており(同社の2022年3月期決算説明会によると2021年の人材マッチング市場は前年比64%成長に対し、同社の売上増加率は100%以上)、労働市場環境が正常化すれば力強い成長力が戻ってくる可能性は高いと思われます。また国内で販促メディアを手掛けるマッチング&ソリューション部門では、コロナ終息後の経済再開に伴い成長軌道への回帰が見込めます。加えて、近年は顧客企業(飲食店、ヘアサロン、小売店など主に零細のパパママストア)の業務効率化を支援するためのSaaS(Software as a Service、ソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービス)ベースのソリューション「Airビジネスツールズ」に注力しており、今後の牽引役になることも期待されます。同社の利益水準は過去5年でほぼ倍になっているうえ、同期間の平均ROEは18.8%と日本の上場大企業のなかでは屈指の水準です。

2022年9月の月次報告書において、当ファンドでは、企業が実際にビジネスを運営する際に使用している資本に対してどれくらいの利益を生み出しているかをみる指標としてROE(株主資本利益率)よりもROCE(使用資本利益率)が有効であるとお伝えしました。なぜなら高いROEは、株主資本を意図的に過小にすることで比較的容易に達成できてしまうからです(過小資本の企業は財務リスクが高くなるので必ずしも望ましいと言えません)。しかし、なかには株主資本が非常に分厚くても高いROEを実現している企業も存在します。その一社が、当ファンドが最近新規投資したHOYAです。 光学ガラス部品メーカーである同社は、日本のなかでも極めて収益性の高い製造業です。手掛けている製品は半導体製造に欠かせないマスクブランクスやハードディスク用ガラス基板といったハイテク部材、メガネレンズ、コンタクトレンズといった生活必需品、および眼内レンズや内視鏡といった医療用製品など多岐にわたります。 同社が素晴らしいのは過去5年平均ROE19.9%、同10年平均17.9%、同15年平均16.4%、同20年平均17.6%と、どの時間軸でみても日本企業の平均を大幅に上回る高い資本収益性を誇るところです。同社は自己資本比率が平均7~8割という分厚い資本構造にも拘わらずこれを達成しています。また営業利益は2008年金融危機以前のピークから2022年3月期にかけて約2倍に成長、過去10年の一株当たり利益成長率は年率16%です。 ではどのように経営陣はこれを達成しているのでしょうか?一つ目は、手掛けている製品の利益率が非常に高いということです。最先端の半導体製造に使われるEUVマスクブランクスは世界シェア7割程度、ハードディスク用ガラス基板に至ってはシェア100%と言われています。このため同社は価格決定権が強く、これら製品の営業利益率は5割を超え、大きな超過利潤を得ることができていると考えます。同社の基本的な事業戦略に「小さな池の大きな魚」という考え方があります。これはニッチ市場において圧倒的なシェアを獲得すれば、高い利益率を確保できるという意味です。実際、マスクブランクス、ハードディスク用ガラス基板などは世界市場規模が1000億円~1500億円程度の「小粒」な分野です。しかし、これらの市場は成熟産業ではありません。今後市場拡大が続くことで同社の売上成長が期待されます。 二つ目は、生産設備などの資産効率が高いということです。同社のキャッシュフロー計算書を時系列で見ていくと、多くの年度において設備投資額が減価償却を下回っています。このため2008年3月期時点で1,522億円あった有形固定資産(純額ベース)は、2022年3月期においても1,697億円と微増に留まっています。それにも拘わらず、同社の連結売上は4,816億円から6,614億円へと約4割増えているのです。これは同期間にかなり効率的あるいは価格競争力のある経営が行われていたことを意味します。実際、同社は設備投資の経営判断を行う際、確度の高い顧客企業の短中期的な需要見通しのみを前提に生産能力増強を行うように心掛けています。このため、生産設備の稼働率は常に8割程度とフル稼働に近い状況が維持されています。 三つ目は、時代を通じて事業ポートフォリオの取捨選択を行っている点です。同社は1941年の創業です。当初はクリスタル食器製造を行い、その後1960年代にメガネレンズ、1970年代にコンタクトレンズ、半導体マスクブランクス、1980年代に眼内レンズ、1990年代にハードディスク用ガラス基板、2007年には内視鏡(ペンタックス㈱を買収)など、それぞれ有望市場と思われる分野に参入しています。一方で、2009年には祖業ともいえるクリスタル事業から撤退、2010年にはHDDガラスディスクのメディア事業から撤退(現在は基板事業に特化)、2011年にはペンタックス㈱買収時に取得したデジタルカメラ事業を売却するなどをしています。これによって常に収益性が高く、将来の展望が明るい製品群を維持し続けていると考えられます。 四つ目は、余剰資金を活用した自社株買い・消却によって株主資本の過度な膨張を防いでいるという点です。高い競争力からこれまで継続的に高水準の利益を生み出し、例えば同社の自己資本比率は2008年3月期の57%から2015年3月期に81%へと上昇しましたが、それ以降は自社株買いを定期的に行うようになっており、同比率は80%前後で安定推移しています。自己資本比率8割というのは同社の潜在的な事業リスクに対して過剰だとも言えますが、少なくとも高いROE維持の妨げともなりうる、必要以上の自己資本の積みあがりは抑えられていることがわかります。また自社株買いを行うようになって以降、一株当たり利益の成長率は当期利益全体の成長率を約1%強上回る状況が続いています。これは定期的に買い入れた自社株の消却を行なっているためです。 最後に同社はガバナンス面でも先進的な会社であることが広く知られています。社外取締役を置くようになったのは1995年と早く、また2000年代初頭には半数以上が社外取締役となるよう定款に定められています。経営の執行と監督の分離がしっかりと行われている模範のような会社と考えます。

もちろん、機関投資家の世界では詳細にフォローしている業種担当アナリストが在籍し、当然各担当業種に精通しているでしょう。しかし実際に運用会社で最終的に売買判断を行っているのはアナリストではなくファンドマネジャー達です。限られた数の銘柄だけを分析するセクターアナリストと異なり、オールアラウンドに様々な銘柄をフォローしなくてはならないファンドマネジャー達は、世界中の数多くの損保株をひとくくりにしてみているとしても想像に難くありません。 誰もが市場参加できる株式投資において、表面上の会計数値をみるだけで、当ファンドが解説するように細かく分析する人は少数派かもしれません。そして他の大勢の人が注目しなければ、決して株価は評価されないので無意味と考えるかもしれません。しかし、当ファンドが理論的に正しいと主張する「本当の」価値は、巡り巡って顕在化するものだと思います。例えば、のれん償却などの理由で会計上の利益が実際のキャッシュベース利益を大幅に下回る企業でも、キャッシュフロー創出力が強いことから思った以上に速いスピードで現預金が積み上がるはずです。ひいては株主還元強化につながりやすく、株主は増配などの恩恵を受けられますし、成長投資も積極化できるため、事業競争力が向上します。一方、人件費の大部分をストックオプションに頼っている企業は、現金流出を抑えられるためキャッシュフローが潤沢にみえるかもしれませんが、発行済株数は増えてしまうため、確実に株主利益の希薄化が起きているのです。 当ファンドが投資をする際、銘柄に関する投資意見が株式市場とは違うほうがむしろ好都合です。多数派の意見は、すでに株価に織り込まれたものであり、そこから大きな利益を得るのは難しいことを理解しなくてはなりません。自分なりの分析で辿り着いた視点について人々が懐疑的だとしても、あとから企業の真の価値を誰もが認めるようになればその株を買うようになり、株価上昇を通じて当ファンドの意見が「正しい」と証明されるのです。これが少数派意見のときに投資することで、市場平均を上回るリターンを達成できるメカニズムです。すなわち、投資で成功したいのであれば、人と違うことをしなくてはなりません。これが差別化されたポートフォリオにつながります。 ただし、これは「言うは易し行うは難し」です。株式市場における多数派の意見や将来に関する見通しは正しいことが殆どです。大半の人が未だ懐疑的・否定的な見方をしているなか株式投資するという決断は、心理的な居心地が非常に悪いことを理解する必要があります。株式市場に対峙する時には、「少数意見」かつ「正しい意見」をもって投資に望むことが大切です。

運用成績が振るわなかった要因はいくつかありますが、最大の理由は当ファンドで組み入れているグロース株が、金利上昇により株価バリュエーションの切り下がりに見舞われたことです。この点については、2022年2月の月次報告書でキーエンスなどの事例をあげてご説明しました。 グロース株の場合、長期金利の上昇局面では将来見込まれるキャッシュフローの現在価値が目減りするため、株価の下押し要因となります。しかし、当ファンドではグローバルで成長が期待できる企業に投資し続けることが、人口減少が続く日本で最も有効なアプローチだと考えています。世界を舞台に成長できる企業であれば内需型企業に比べて潜在市場規模が遥かに大きいため、息の長い業績拡大が期待できます。キーエンスの現在の株価は2021年の過去最高値から3割程度調整した水準にありますが、同社の中長期的な成長見通しは大きく変わっていないと考えられます。これまでの年率10%超の利益成長が継続すれば、3~4年程度で下落分を取り戻せる計算になりますが、それまでは辛抱が求められると考えます。 一方でPER(株価収益率)切り下がりリスクがあまりなく、ファンドの絶対リターンを牽引してくれるであろう銘柄も存在します。今後バリュー株からグロース株への変貌を遂げると期待される日立製作所などです。当ファンドでは2021年に会社業績予想を前提にPER10倍程度の局面で同社に新規投資を行い、現在でも割安であると考えています。未だ製造業主体の企業として、原材料コスト上昇、半導体不足、中国におけるロックダウンなどの影響で短期業績の大きな成長は期待しにくい状況ですが、ルマーダ事業を通じてビジネスモデルの構造変化が進むことで、中長期で利益の継続成長とバリュエーションの切り上がりの可能性があると当ファンドでは予想しています。 三菱商事も、2022年末時点のPERは一桁台、PBR(株価純資産倍率)は1倍割れと長らくバリュー株としてレッテルを貼られていますが、当ファンドでは総合商社を世界中に人的ネットワークを持つ投資事業会社であると考えております。今日の彼らのバランスシートは世界的にも珍しい事業資産ポートフォリオを有しています。これら資産の積み上がりが総合商社の本源的価値の増加につながり、ひいては一株当たり純資産価値の成長に反映されると考えます。例えば、三菱商事の一株当たり純資産価値は過去5年、10年、15年、20年でみても一桁後半から10%前後の年率成長を達成しています。このことから、当ファンドでは三菱商事を成長性のないバリュー株ではなく、割安に放置されたグロース株であるとみています。

ミスミグループ本社 2023年3月期第1四半期決算では、売上高は中国におけるロックダウンや原材料費高騰を理由に前年同期比2.4%増、営業利益は同1.6%減となりましたが、通期見通しは前期比10.2%増収、9.7%増益を据え置いています。同社の精密機械部品・FA部品は豊富な品揃えと、例え部品1点からでも短期納入(平均2日以内)できることから、顧客製造業の圧倒的な支持を受けています。工場にとって生産ラインの故障によって製造停止することは大きな損失につながりかねないため、生産ラインを構成するこれらの機械部品が必要なときにすぐ入手できる同社サービスは高い付加価値があると考えられます。また、同社はMeviy(メビー)と呼ばれる特注の機械部品に関する即時見積もり、即時加工・出荷する独自のサービスにも注力しており今後が楽しみです。過去10年、20年の営業利益伸び率が年率平均でそれぞれ12.1%と12.5%、過去5年の平均ROEは11.6%です(前期実績ROEは14.3%)。

当月は当ファンドで保有している日用品3社(ロート製薬、花王、ユニ・チャーム)の近況についてご説明します。これら3社は当ファンドで2008年頃から投資を行っています。消費財・日用品企業の特徴は、本来景気に左右されにくい安定したビジネスである点です。当ファンドが着目している市販目薬、スキンケア化粧品、紙おむつ、その他家庭用品などは比較的安価な商品であるうえ、生活必需品に近いため、不景気時においてもそれほど需要は落ち込まないと考えられます。とりわけ日本発の高品質、高付加価値を武器に、各社ともグローバル市場で着実に成長を続けられることが期待されます。 ロート製薬は創業時の胃腸薬販売から始まり、20世紀初頭に市販目薬事業、1990年代から2000年代にかけてスキンケア事業を加えてきました。目薬、スキンケア商品はいずれも今日の稼ぎ頭です。2023年3月期第1四半期決算は、連結売上が前年同期比23.5%増、営業利益が同37.8%増と大変好調でした。全体売上の約6割を占める日本では、コロナ禍のリモートワークで需要が高まっている高額目薬や、行動制限の緩和に伴って外出機会が増加したことから日焼け止めや、スキンケアシリーズの「メラノCC」などが大幅に伸びました。海外も大変好調です。全体売上の約4分の1を占めるアジアではコロナ禍が収束に向かうベトナムでV字回復となり、インドネシアも好調です。また売上規模は小さいですが米国とヨーロッパも増収増益となっておりポジティブです。 同社の魅力は市販目薬(アイケア部門)や化粧品(スキンケア部門)のアジアにおけるニッチなブランド力です。インドネシア、ベトナム、カンボジアなどの国々では今後、全人口に占める生産年齢人口の割合が高まっていく、所謂「人口ボーナス」期への移行が予想されます。現段階から同社ブランドの消費者認知度を高めるため先行投資を行うことは、長期的にみて正しい戦略であると当ファンドでは考えます。もう一点将来楽しみなのは、10年ほど前から国内で取り組み始めた再生医療事業と、近年開始した眼科用医療用医薬品事業です。再生医療について同社が進めているのは、脂肪由来の幹細胞を利用した再生医療用製剤で、肝硬変、新型コロナ肺炎、肺線維症、重症心不全などの適応症向けに治験が進められています。独自開発した自動培養システムを使って、再生医療用細胞を受託製造するビジネスも本格展開する予定です。 このような新規分野への進出について、当ファンドでは1)同社が100年を越える歴史のなかで、これまでも事業ポートフォリオを多角化させる事に成功している点、2)現会長が創業家出身の四代目であり、長期的な視点で新規ビジネスの育成を進めていること(なお現社長は武田コンシューマーヘルスケア出身の杉本氏が2019年に就任)、そして3)再生医療には、目薬とスキンケア事業で培った「細胞を扱う技術」と「無菌製剤技術」の応用が可能(一見関連性の低いと思われる再生医療事業への進出理由はここにあると考えられます)なことから、引き続き今後の展開を興味深く見守っていく方針です。 最後に、企業買収面では2020年に㈱日本点眼薬研究所(現ロートニッテン㈱)を、2021年には痔の薬「ボラギノール®」で有名な天藤製薬㈱を買収しており、商品ポートフォリオの拡充も進めています。 花王は、2018年10月に株価のピークをつけて以降、業績の悪化が続き株価が調整しました。当ファンドでは数年前より同社の日用品ブランドのアジア(特に中国)における強みに陰りがでてきたことを理由に一旦保有比率を下げてきましたが、その後もコロナ禍による訪日客の減少や、国内でも洗剤等日用品分野での競合激化や原材料価格の上昇など、逆風が続いています。2022年12月期第2四半期決算は、連結売上が前年同期比8.7%増、営業利益が同23.9%減と苦戦したため、会社側は今期通期営業利益見通しを期初時点に比べて若干の下方修正をしています。同社が短期的に業績回復を遂げるかは不透明です。しかし、社内における意識改革は進んでおり、社員が危機感をもって現在収益性の改善に取り組んでいると考えます。とりわけ改革が先行していた化粧品事業においてはかつて49あったブランドを19にまで絞り込み、広告宣伝費のメリハリをつけることで少しずつヒット商品も登場するようになっています。現在は他の日用品分野においても集中と選択をすすめています。原材料価格の高騰を受けて値上げも実施し、またコスト合理化策も実施することで目下、連結業績の底入れを目指しています。同社は当期純利益がピークをつけた2018年度まで過去20年の一株当たり増益率が年率11%、平均ROE13%、そして今期を含めて33期連続の増配記録を更新中の優良かつ実績のある企業です。同社の2030年までの長期ビジョンでは売上高2.5兆円、営業利益率17%、ROE20%を超える水準を目標としています。 一方、ユニ・チャームは、2019年12月期に中国における乳幼児用おむつ事業の減損損失計上に踏み切って以降、生理用品と大人用紙おむつ事業への収益構造シフトを鮮明にしています。このため、アジア中東(中国、タイ、インドネシア、ベトナム、インド、サウジアラビア)では生理用品が、日本では生理用品および大人用紙おむつが収益の柱となっています。とりわけアジアの生理用品市場における同社の市場シェアは平均3-4割と首位にあります。北米では近年ペットケア事業が成長しているのが注目です。長期的にはアジアの人口高齢化で大人用紙おむつの成長、中国などにおいてはペット人口が増えることでペットケア事業などが成長ドライバとして上乗せされることが期待されます。同社は海外売上比率が6割を超えており、2007年当時の3割から大幅に拡大しました。同社の経営指標のひとつであるコア営業利益率も安定して10%台前半を維持しており、上述2社に比べて収益性が高いのが特徴です。2022年12月期第2四半期決算は、連結売上が前年同期比11.8%増、コア営業利益が同10.3%減と売上は堅調だったものの、原材料コストや物流費の上昇により花王同様に減益を余儀なくされました。下期以降は値上げや、生産性改善などで吸収し、通期業績で3%増益を達成する意気込みです。 最後に、事業が一部重複しているロート製薬、花王、ユニ・チャームの3社について、長期的には当ファンドはそれぞれの企業に対して異なる投資魅力があると考えております。ロート製薬は規模が他の2社に比べて小さく、小回りのきく経営が可能です。ニッチな分野で新商品を発売することで業績を伸ばすことが比較的容易であると考えられます。また現時点で評価は難しいですが、再生医療事業も楽しみな分野です。原料コスト面も石油化学品を使用する割合が低いことから、相対的に影響が少ないのが特徴です。 花王に期待されるのは、同社が持つ幅広い日用品ラインアップのアジア全地域での展開が本格化していくことです。足元の業績こそ低迷していますが、同社の製品群は家庭用清掃品、衣料用洗剤、化粧品など多岐にわたっており、得意とする高付加価値を武器に長期的にはアジアでシェアを伸ばしていくことを期待しています。 一方、ユニ・チャームは大人用オムツ、生理用品、ペット用トイレシートなど吸収体をベースとしたパーソナルケア製品に強みを持っています。専業プレーヤーとして花王に比べ世界展開が進んでおり、東南アジアだけでなく、インドや中東、北中南米などにも広がりをみせているのが特徴です。 3社とも数十年にわたり有能な経営陣によって経営されていると当ファンドでは考えます。過去10年、20年間における各社の一株当たり利益成長率は、それぞれロート製薬が年率10.2%と11.4%、花王が同10.2%と4.4%、ユニ・チャームは同7.4%と10.8%です。長期の安定した売上成長に加え、花王の場合は継続的な自社株買いが成長の下支えとなっています。さらに直近期におけるROE(株主資本利益率)はロート製薬が12.6%、花王が11.6%、ユニ・チャームが13.8%と日本企業平均を上回る水準です。 一方、経営体制は3社で異なります。ロート製薬では再生医療事業のような新規分野を創業家出身の山田会長が手掛け、既存事業一般を外部採用した杉本社長が担当しています。花王は二代目社長までは創業家出身でしたが、それ以降は国内の一般大企業と同様に生え抜き社員から選ばれた社長(現在は長谷部佳宏社長)が経営にあたっており、ユニ・チャームは創業者の息子にあたる高原豪久社長が今日率いています。統計上はオーナー系企業が長期的に株主価値を生み出す力が強く、ひいては株価パフォーマンスもサラリーマン社長が経営する会社を上回る傾向があると考えます。一方、そのようなカリスマ社長の場合は後継者問題が常につきまとうものです。当ファンドでは、異なる経営体制の企業をバランスよく保有することで、リスクの分散を図っています。

当ファンドでは、現時点では含み益を考慮したPBRによる株価評価が妥当だと考えます。一方、経営陣は中長期的にアセットをあまり使わないフィービジネスに注力していく方針です。例えば2024年3月期決算説明資料には「投資案件が大型化する中、『アセマネ・シフト』を進め、AUM100兆円を目指す(2024年3月期末時点:69兆円)」と記載されています。同戦略が狙いどおりに進めば、同社の株価評価軸はPBRからPERへよりシフトしていくと予想します。 同社は総資産約16兆円に対して自己資本約4兆円(自己資本比率約24%)です。経営陣は3~4兆円程度の自己資本は必要との認識ですが、アセットをあまり使わないビジネスの比率が上がってくれば、自社株買いをして自己資本を減らしても財務安定性を損ねることなく、ROEを上げやすくなるはずです。将来の見通しが立ちやすいフィービジネスの成長によってROEが向上していけば、これまで10倍前後に留まっていたPERもより高い倍率が許容されると考えます。結果としてPBRが1倍を優に超える状況も考えられるかもしれません。

ソニーグループ 2023年3月期第1四半期決算では、売上高は前年同期比2.4%増、営業利益は同9.6%増と過去最高益を更新しましたが、通期見通しについては巣ごもり需要のピークアウトを理由にプレイステーション事業の利益予想を期初比で下方修正しています。経営陣は、ゲーム機プレイステーション5の生産拡大といくつかの大型人気ゲームソフトの投入により、テコ入れを行う方針です。同社の強みはビジネスが音楽事業、映画事業、半導体事業、AV機器事業、金融サービス事業など多岐にわたっており、一部門における不調を他部門で補うことで安定した収益構造を誇っているところです。さらに、映画のキャラクターなど多くの知的財産を抱えており、映画上映だけでなく音楽化やゲーム化することにより収益の最大化を図ることができます。毎年、工場などに多額の設備投資を必要とする一般的な製造業と異なり、版権を活用したビジネスは少ない資本で参入障壁を維持しながら業容拡大することが可能という意味で魅力的なビジネスと言えます。過去5年の平均ROEは19.2%と一過性要因もあり高水準ですが、平常時だった前期においても13.9%と日本企業の平均を大きく上回っています。

東京海上ホールディングス 2023年3月期第1四半期決算では、正味収入保険料は前年同期比11.2%増と北米を中心とする海外事業を牽引役に好調ですが、修正純利益は国内における季節はずれの自然災害発生(雹害)などにより通期計画に対して進捗率は25%と例年に比べてスローな出だしとなりました。近年、日本では異常気象などで頻発する自然災害を理由に、積極的な保険料の引き上げが可能となっています。長年かけて進んだ国内の業界再編により3社のメガ損保に集約されたことから保険料率決定権が強化されたのが主因と思われます。よって同社を始めとする損保会社の中長期的な見通しは明るいと、当ファンドは考えます。また同社は北米のスペシャリティ保険事業を中心に海外比率が連結全体の半分近くを占め、保険リスクのグローバル分散が図られているのも魅力です。通期純利益見通しについては、この北米事業の計画を上回る好調もあるため期初見通しを据え置いています。同社の修正純利益を前提としたROEは過去5年平均で9.6%ですが、近年の利益水準の上昇、継続的な自社株買い・消却により前期実績は14.4%と高い水準にあります。また当年度の一株当たり配当金は300円と前期比約18%増です(配当利回り約4%)です。同社の配当原資は過去5年の平均修正純利益がベースとなっており、同水準が切り上がっていくことで継続的な増配も期待されます。

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