ドル円140円割れを予想する理由
動画配信期間:2025/02/19~
1. ドル円相場の見通し(長期的視点)
中長期的に円高方向へのトレンド転換が予想される。1982年以降、8-9年ごとに高値をつけて円高に転換する周期的パターンが観察される。2015年6月の125円85銭、2023年7月の162円近辺が直近の重要な高値となっている。現在は円高方向へのサイクルに入った可能性が高い。
目先の重要な節目は151円台前半で、一目均衡表の週足の雲のレベルと一致している。この水準を下抜けると、テクニカル面での売りが加速する可能性がある。年末に向けて135円前後を目指す動きも想定される。ただし、極端な円高には向かいにくい構造的要因が存在している。
2. 円高方向への詳細な根拠
金融政策要因として、日米金利差が縮小傾向にあり、日銀の金融政策正常化への期待が高まっている。政策金利の段階的引き上げが予想され、日銀審議委員の構成が徐々に引き締め派寄りに変化している。
企業活動要因としては、日本企業による国内資金還流の増加が挙げられる。これには配当金の国内還流、積極的な設備投資、研究開発投資の増加、人材育成投資の拡大などが含まれる。また、海外企業による日本企業買収の可能性もあり、セブン&アイホールディングスの案件など、10兆円規模の取引の可能性がある。
3. 米国経済の現状と課題
インフレ動向については、1月CPIが前年比3.0%増、コア指数は前年比3.3%増となっている。季節要因による一時的な上昇の可能性も指摘されており、PCEデフレーターの重要性が増加している。
消費動向では、小売売上高が2年近くで最大の落ち込み(前月比-0.99%)を記録。12月の駆け込み需要の反動や、耐久消費財(自動車、家具、スポーツ用品など)の需要減少が見られる。
4. トランプ関税政策の影響
4月2日に詳細発表が予定されており、自動車関税は25%程度の可能性がある。鉄鋼・アルミニウム関税、対中国追加関税なども検討されている。カナダ・メキシコへの措置は3月4日まで延期されており、一定数量までの例外措置の可能性も示唆されている。
5. 日本の財政状況と金融政策
2025年度予算では、一般会計総額が過去最大の115兆円となっている。主要支出項目として、社会保障費が最大、国債費が第2位となっており、利払い費の増加が懸念されている。
日銀の金融政策については、現行の政策金利0.5%から、2025年までに1-1.5%まで上昇する可能性が指摘されている。段階的な引き上げが予想され、市場との対話(コミュニケーション)の重要性が増している。
6. メキシコペソ、トルコリラの見通し
メキシコペソについては、インフレ率の低下(3ヶ月連続)、政策金利の引き下げ(5会合連続)が進んでいる。対米関係では、国境管理強化や両国間の貿易・安全保障作業チーム設置など、前向きな動きが見られる。メキシコペソ円は7.2-7.8円で推移している。
トルコリラは、新経済チーム導入による政策転換が進み、インフレ率が8ヶ月連続で低下している。実質金利のプラス転換や国民の外貨預金比率低下など、改善の兆しが見られる。シリア情勢との関連性も重要な要因となっている。
7. 地政学的リスク
ウクライナ情勢については、米ロ外交協議の進展が見られず、ゼレンスキー大統領の反応も厳しい状況が続いている。停戦への道のりは依然として不透明である。
中東情勢では、イスラエル・パレスチナ問題、イラン・イラク情勢が注目される。これらの影響により、金価格は3000ドル突破の可能性も指摘されている。
結論
2025年の為替市場は、緩やかな円高トレンドが予想されるものの、極端な円高には向かいにくい構造が続くと予想される。新興国通貨は、各国のファンダメンタルズ改善により、一時的な下落を経て底堅さを増していく展開が見込まれる。
短期的には4月のトランプ関税政策の詳細発表までは市場の変動性が高まる可能性が高く、慎重な運用が求められる。特に3月は決算期末要因も重なり、相場の変動が大きくなる可能性がある。
投資家は、各国の金融政策、インフレ動向、地政学的リスク、財政状況などを総合的に判断しながら、機動的な投資判断が求められる状況が続くと予想される。地政学的リスクは引き続き市場の重要な変動要因となり、特にウクライナ情勢や中東情勢の展開により、安全資産としての円の需要が急激に高まる可能性もある。
動画の概要
幅広い金融知識と豊富なマーケット経験を兼ね備えた経済アナリスト、田嶋智太郎氏が登壇。
ついに米政権交代!不動の人気をほこるドル円に「まさか」の展開は?気になる円相場の方向性は?
そして、トルコリラやメキシコペソなどの高金利通貨の相場展望についても解説します。
田嶋智太郎氏
経済アナリスト 慶應義塾大学を卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、経済アナリストに転身。現場体験と綿密な取材活動をもとに、金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産掲載まで幅広い範囲を分析・研究。 WEBサイトで経済・経営のコラム執筆を担当し、株式・外為・商品などの投資ストラテジストとしても高い評価を得ている。 また、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」など書籍も手掛けるほか、日経CNBCレギュラーコメンテーターも務める。

外為どっとコム総合研究所 調査部 研究員
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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ドル円140円割れを予想する理由期待できるトルコリラ 田嶋 智太郎氏
3月18、19日にも日銀の会合は予定されており、2月下旬あたりから市場がソワソワし始める可能性もあるだろう。2月中旬までには3月本決算企業の第3四半期決算の発表も一巡し、株式市場でも日銀の政策の行方に対する関心が高まりやすい。2月下旬あたりからFRBと日銀の政策の方向性に対する市場の関心と警戒が一段と高まり、一旦はドル売り・円買いの動きが強まりやすくなる。
FXではユーロ・ドル、ポンド・ドルなどさまざまな通貨ペアが想定されるが、注目度が高い通貨ペアは、やはりドル・円だ。欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)の利下げの動きは一般的にわかりにくい。24年は米国の場合は利下げ方向、日本の場合は07年以来、17年ぶりの利上げに踏み切るタイミングとみられる。金融政策的には正反対のベクトルで、チャンスが多い。
中東情勢では、イスラエル・パレスチナ問題、イラン・イラク情勢が注目される。これらの影響により、金価格は3000ドル突破の可能性も指摘されている。
田嶋智太郎氏 経済アナリスト 慶應義塾大学を卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、経済アナリストに転身。現場体験と綿密な取材活動をもとに、金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産掲載まで幅広い範囲を分析・研究。 WEBサイトで経済・経営のコラム執筆を担当し、株式・外為・商品などの投資ストラテジストとしても高い評価を得ている。 また、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」など書籍も手掛けるほか、日経CNBCレギュラーコメンテーターも務める。
23年のドル・円為替相場のチャートによると、上げ幅からの修正の目安(チャートポイント)が1ドル=133、136、140円あたりにあることを考えれば、24年は133~136円前後を目指して緩やかな円高が進むのではないか。市場の過熱で円高が進みすぎることもあるだろうが、修正の目安のほぼ中間にあり、「節目」として意識されやすい「135円」が基軸になるとみている。
つまり、目下の市場の見方ほど米利下げの頻度は高くないものと考えられ、ドルが極端な売り圧力に押される可能性もそう高くはないのではないか。ただ、年内に少なくとも2~3回程度の利下げが行われる公算は大きく、それは一定のドル売り材料として市場に受け止められる可能性も十分にあると認識しておきたい。
幅広い金融知識と豊富なマーケット経験を兼ね備えた経済アナリスト、田嶋智太郎氏が登壇。ついに米政権交代!不動の人気をほこるドル円に「まさか」の展開は?気になる円相場の方向性は?そして、トルコリラやメキシコペソなどの高金利通貨の相場展望についても解説します。
ただ、市場には「常に行きすぎる」習性があり、いよいよ日銀がマイナス金利解除に踏み切る段階になれば、一時的にドル安・円高方向へ大きく進む可能性も否定できない。とはいえ、あくまで一時的なものと割り切ったうえで、ドル・円については135円あたりを意識しておく必要があろう。
例えば、米国のインフレ鈍化が着実に進んでいると考えられる中、注目の米インフレ指標が強めの結果を示した結果、一旦ドルが強く買われるような場面がある。こうした市場の流れに安易に乗り、投資家が「ドル高」にベットすることは失敗して手元の資金を溶かしてしまうリスクが高い。インフレの沈静化が進む中にあっては、ドル高に先走った市場の過剰反応はすぐに修正されることが多いためだ。ここはむしろ、下落基調の相場が一時的に戻る(上がる)のを待って「売り」を入れる「戻り売り」の好機と考える方が有利になる場合が多い。
仮にドル安・円高が一時的に進んだとしても、それが必ずしも趨勢(すうせい)的なものになるとは限らない。日銀がマイナス金利を解除しても、おそらくその後は「ゼロ金利」の状態がしばらく続き、さらに一歩進んで「金利がある世界」に踏み込んだとしても、景気抑制が必要なほどの大幅な利上げに日銀が踏み切る可能性は薄いだろう。
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