南アフリカランド、対ドルで持ち直し
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと基本的に連動性が高い(第1図)。
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート(資料)Bloomberg
第二次トランプ政権は、全貿易相手国に対する相互関税をすぐには発動しない模様であり、ウクライナ紛争の停戦交渉なども推進。中国に対しては既に10%の追加関税を発動し、全貿易相手国からの鉄鋼・アルミ製品輸入に対する25%追加関税の発動も宣言したものの、当初警戒されていたような大規模な貿易戦争は一先ず発生していない点などを材料に、トランプ政権始動以降、一定の楽観的見方の浮上からいわゆるトランプトレードが巻き戻される動きによりドルは下落基調が続いており、ランドも対ドルで持ち直しがみられている。
南アランド今後の見通し
一方、トランプ政権は、南アフリカ政府が最近成立させた土地収用法が白人を不当に扱うものとして非難し、同国への援助を停止する大統領令に署名。南アフリカが議長国を務める2025年G20の財務相・外相会議に米財務長官や国務長官が相次いで欠席を表明するなど、米国との軋轢(あつれき)が目立ち始めている。南アフリカ国内でも、統一政府(GNU)を構成する与党第一党のアフリカ民族会議(ANC)と第二党民主同盟(DA)の間で、既にこの土地収用法を巡り意見対立が表面化していたが、足元では付加価値税の引き上げの可否を巡り新たな対立が発生。連立政権が崩壊に至るとまではみられていないが、投資家のセンチメントには良からぬ影響を与えそうだ。またタイミング悪く、昨年3月以来、約10ヵ月発生していなかった国営電力会社エスコムによる計画停電が1月末に発生した。
ランドを取り巻く国内外の情勢は、芳しくない方向への推移がみられている。景気やインフレ率は安定を維持していることもあり(第2図)、これまでのところ、グローバルなリスクセンチメントの改善に沿って、ランドは、一定の底堅さを維持しているが、トランプ政権の今後の関税政策の展開などを巡って、市場のセンチメントが大きく悪化した場合の変動リスクには注意が必要だろう。
第2図:南アフリカの政策金利と消費者物価上昇率(資料)Bloomberg
【南アフリカランド/円 日足】
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新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。

公益財団法人 国際通貨研究所 経済調査部 上席研究員
橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
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南アフリカランド 月間為替予想 ドル安基調と南アフリカランドの行方米
一方、トランプ政権は、南アフリカ政府が最近成立させた土地収用法が白人を不当に扱うものとして非難し、同国への援助を停止する大統領令に署名。南アフリカが議長国を務める2025年G20の財務相・外相会議に米財務長官や国務長官が相次いで欠席を表明するなど、米国との軋轢(あつれき)が目立ち始めている。南アフリカ国内でも、統一政府(GNU)を構成する与党第一党のアフリカ民族会議(ANC)と第二党民主同盟(DA)の間で、既にこの土地収用法を巡り意見対立が表面化していたが、足元では付加価値税の引き上げの可否を巡り新たな対立が発生。連立政権が崩壊に至るとまではみられていないが、投資家のセンチメントには良からぬ影響を与えそうだ。またタイミング悪く、昨年3月以来、約10ヵ月発生していなかった国営電力会社エスコムによる計画停電が1月末に発生した。ランドを取り巻く国内外の情勢は、芳しくない方向への推移がみられている。景気やインフレ率は安定を維持していることもあり(第2図)、これまでのところ、グローバルなリスクセンチメントの改善に沿って、ランドは、一定の底堅さを維持しているが、トランプ政権の今後の関税政策の展開などを巡って、市場のセンチメントが大きく悪化した場合の変動リスクには注意が必要だろう。
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