結婚式場の3割が赤字 2023年度
同行は、2017年11月に持続可能な社会の実現に努めることを誓う、「しがぎんSDGs宣言」を発表。SDGs宣言を実施したのは地方銀行で初であった。SDGsコンサルティングに関するメニューを強化し、経営にSDGsを取り入れようとする顧客の要望に応えてきた。また、近年、事業内容が抱えるリスクだけでなく、その事業が生み出す環境・社会に対する影響を評価し、資金供給の判断を行うインパクト・ファイナンスが潮流となっていることを踏まえ、同行も、2020年8月に「サステナビリティ・リンク・ローン」の取扱いを開始。その内容は、企業の成長と事業内容が環境・社会に与えるインパクトの双方に効果的な分野において、顧客に野心的な目標設定を求め、その目標を達成した場合、金利などの融資条件が優遇されるという仕組み。さらに、2021年11月から脱炭素に向けた設備投資をサポートする「カーボンニュートラルローン 未来よし」の取扱いを開始した。独自のESG評価を通じて、顧客の経営課題を把握・共有するとともに、取組度合いに応じた金利優遇を行っている。
9 実際に、(独)中小企業基盤整備機構(2023)のアンケート調査によると、中小企業においても、SDGs(持続可能な開発目標)のうち、持続的な消費と生産を目指す「つくる責任つかう責任」を目標に貢献しようとしている傾向があるとされている。これに関連して、資源制約(金属資源等の将来的な枯渇への懸念や供給途絶等のリスク)や環境制約(廃棄物処理の困難性やカーボンニュートラルの対応の必要性)、成長機会の観点から、資源自律経済の確立を通じた循環経済(サーキュラーエコノミー)への転換が求められている。経済産業省(2023)では、実際に微細藻類により、貴金属を効率的に回収し、資源循環と経済循環の実現を目指す企業の事例として、(株)ガルデリアが挙げられている。詳細は、経済産業省(2023)『サーキュラーエコノミースタートアップ事例集』を参照。
ここからは、金融機関側について確認していく。第2-1-20図は、金融機関に対して、地域課題解決事業に取り組む事業者に対する資金供給の実施状況を確認したものである14。これを見ると、9割以上の金融機関で資金供給を実施したことがあることが分かる。
経済産業省(2020)によると、「広域で複数の地域に、地域の持続的発展に資する製品又はサービスを供給する地域外法人(アグリゲータ)」にとって、「基礎自治体といった地域の単位では、持続可能なビジネスとしての収益獲得に必要な需要の確保が困難であっても、サービスを複数地域で広域的に展開することによって事業を継続・発展する可能性が高まる」とされている11。そのため、第2-1-13図でも確認した、事業の広域的な展開について、その詳細を確認する。第2-1-14図は、事業の他地域への展開数別に、収支状況を確認したものである。これを見ると、展開している地域数が多いほど黒字の割合が高いことが分かる。
最終損益では、2022年まで4期の利益が判明した75社のうち、黒字は43社(構成比57.3%)、赤字は32社(同42.7%)だった。黒字企業数は2019年にはおよばないものの、黒字企業率は2021年と比べて32.6ポイント増の急回復を見せている。
世界的なインパクト志向の潮流や同団体の多岐にわたる取組などにより、インパクト投資の国内での市場規模は2016年度の推定200~300億円程度から、2021年度の推計値では、約1兆3,000億円に急成長した。また、2022年には、金融機関が投資や融資を通じて社会課題の解決に協働で取り組む「インパクト志向金融宣言」に署名する金融機関が49社にまで増加(2023年4月1日現在)。これにより、社会や環境の課題解決に向けて、良いインパクトを与える可能性のある事業者が、融資等を受けやすくなる環境が整いつつある。常務理事の工藤七子氏は、「今後は投資家だけでなくスタートアップ、大企業、市民や消費者といった経済活動のあらゆる当事者がよりよい社会へのインパクトを目指す、というインパクト・エコノミーの実現に向けて取り組んでいきたい。」と語る。
石川県七尾市の株式会社エフラボは、2007年設立の椅子や家具の張り替え補修、特注の椅子や家具の製造などを行う企業。主力である椅子再生事業は、ホテルやレストラン、結婚式場などを主な顧客として事業を展開している。工業製品として大量生産が当たり前になり、国内における椅子の製造拠点が海外へ移行した結果、国内で製造を行うことも直すことも難しくなった。職人技術の結晶である国産椅子も「古びて壊れた=廃棄」とされることが増え、物と共に技術も失われつつあった。「直して使うことで、椅子も技術も次世代に残したい」という思いから、同社の松井正尚代表取締役社長は同事業をスタート。SDGsという言葉がまだ一般化していない時期から、限られた資源を有効にいかし、産業廃棄物削減や木材使用量削減に寄与する椅子再生事業に取り組んできた。
売上高の増減をみると、2022年の増収企業は92社(構成比58.2%)で、減収企業は35社(同22.1%)、横ばいが31社(同19.6%)だった。2021年の増収企業は28社だったのに対し、2022年は約3倍増となっている。
「SEOが理不尽なクソゲーになった」時代の生き方とは? 衝撃の移籍を発表した辻さんと渡辺さんが語った202 いいね!
滋賀県大津市に本店を置く株式会社滋賀銀行は、1933年設立の地方銀行である。滋賀県は、少子高齢化や人口流出などにより、2014年10月を境に人口減少に突入し、このままの状態では、地域経済が右肩下がりに縮小していくことが懸念されている。また、同県は、県内総生産に占める第2次産業と製造業の割合がいずれも全国トップであり、サプライチェーンの一翼を担う製造業が多い地域であるため、近年では脱炭素への取組が喫緊の課題となっている。しかしながら、こうした脱炭素や人口減少といった地域課題の解決を事業として進めるためには資金調達面での課題が存在する。こうした中、同行は、「地域の悩みは当行の課題。地域経済の縮小角度を支え、変えていくことが地方銀行の使命である。」という考えの下、地域社会との共存共栄を柱に、地域課題の解決に取り組む企業に対し、積極的に資金供給等の支援を行っている。
11 経済産業省(2020)「地域の持続可能な発展に向けた政策の在り方研究会 報告書」
このAI送電線点検システムは、2019年にAIを活用した高専生による事業創出コンテスト「全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト」で準優勝を受賞した。これに手応えを感じた武智社長は、2020年に香川県三豊市と香川高専、東京大学大学院が連携してAI人材の育成等を目的とする、一般社団法人みとよAI社会推進機構MAiZM(マイズム)の支援を受け、当時20歳の若さで在学中に起業した。同システムの特徴としては、送電線を点検するロボットが撮影した映像を基に、異常があると思われる箇所を自動で抽出。抽出した異常はソフトウェア上で確認することができ、確認後、異常箇所をまとめた報告書も自動で作成が可能だ。また、送電線を点検するロボットは、持ち運びなど扱いやすさを大きく左右する重量や価格も他社製品の3割程度であり、この点が強みとなっている。
「結婚式場」業界動向調査(2024年度) 結婚式場の苦境が続いている。国内で結婚式の専門式場やハウスウェディングなどを経営する「結婚式場」の運営企業を調査した結果、2023年度の損益動向が判明した104社のうち、33.3%が「赤字経営」だった。前年度から「減益」となったケースを含めると、全体の約6割で業績が「悪化」した。コロナ禍の打撃から挙式数は回復しているものの、家族や親族のみで行う小規模な披露宴の拡大や、物価高を背景に「ナシ婚」「ジミ婚」などのトレンドも定着し、式場間の競争が激化していることなどが主な要因となった。
運用開始から約2年が経過した2023年2月時点で、800社を超える企業がS認証を受けるなど、取組は徐々に進展してきている。S認証の取得を通じて、第三者に対して自社の事業の価値を説明できるようになり、取引先からの評価向上や従業員のやりがいにつながったといった認証企業からの声もある。さらに、認証企業同士の交流会を通じて、業種を超えた関係が構築される例も出ている。例えば、産後ケア施設を運営する事業者が施設で使用するベッドのリネン業者を探していたところ、交流会をきっかけにお互いの取組に共感しマッチングが成立した。また、2023年1月からは活動に賛同した兵庫県の但馬信用金庫も新たに参画し、京都、大阪、滋賀、兵庫と地域的な広がりも見せている。榊田代表理事は「S認証は、企業がどのように社会の役に立っているかを可視化するものだが、この認証を取得することが目的でなく、心の底から事業が世の中の役に立つことを目指す方々の集合体でありたい。そして、そういった方と共に活動を広げることで、心温かい社会をつくっていきたい。」と語る。
8 ここでの地域課題の分野は、経済産業省(2019)「平成30年度商取引・サービス環境の適性化に係る事業(ソーシャルビジネスに係る市場調査)最終報告書」等を参考に整理している。ただし、ここでの地域課題の分野は必ずしも全ての地域課題に関わる要素が網羅されていない点に留意されたい。具体的な課題の分野については、第2-1-10図を参照。
コメント