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動画の内容をギュッと要約
高金利3通貨(メキシコペソ、南アフリカランド、トルコリラ)についての解説要約:
## 高金利通貨の詳細分析
### メキシコペソ
– 最近の経済指標が弱くなっており、貿易収支が赤字に転落した
– 失業率も悪化し、製造業PMIも下落傾向にある
– 消費者物価指数(CPI)は徐々に低下してきており、今後も利下げが続く可能性が高い
– 今週金曜日に2月の消費者物価の発表があり、これが約3%程度であれば中央銀行にとって理想的な水準となる
– シャインバウム大統領はトランプ政権の関税政策に対して強気の姿勢を示しており、「25%の関税を押し付けてくる国に従属する必要はない」と発言している
– テクニカル面ではドル円と同様に下髭を伸ばして上昇している状態だ
– トランプ政権とメキシコの間にはUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)という貿易協定が存在するにもかかわらず、会議も経ずに関税をかけようとする姿勢に反発が生じている
– ラトッニク総務長官の関税緩和発言の影響を受けて、今後の動向次第では相場が大きく変わる可能性がある
### 南アフリカランド
– 土地収用法について、アメリカ側が「白人を締め出すもの」として批判し、援助を減らすと脅している
– 付加価値税(VAT)を引き上げようとする動きがあり、これは財政赤字削減のための措置だが、国民に寄り添うDA(民主同盟)党が反対している
– DAは極端な政策を取らず、議論を重ねて解決を図る党であり、これが連立政権が半年以上うまく機能している理由の一つだとされている
– 300日以上停電がなかったものの、最近また停電が始まり、これがGDPにマイナスの影響を与える懸念がある
– インフレは3%台で落ち着いており、この水準が続けば徐々に利下げが進む可能性がある
– テクニカル面ではボリンジャーバンドの3シグマの下限から反発している状態だ
### トルコリラ
– トルコは経済政策面では良い取り組みを多く実施している
– インフレ率は78-80%近いレベルから現在は30%台まで大幅に改善している
– 日本ではインフレ30-40%は衝撃的な数字だが、トルコの状況からすれば大きな改善だと評価できる
– 経済指標も良好で、リセッション(景気後退)を抜け出し、今年は3.2%程度の経済成長が予測されている
– しかしリラが上昇しない理由として、国民の預金の30%以上が外貨預金であることが挙げられている
– この状況は日本と比較すると異常で、日本の預金に占める外貨預金の割合は0.7%程度(7兆円/1000兆円)に過ぎないが、トルコでは30%以上が外貨預金となっている
– 高インフレに対する自己防衛として外貨預金を持つことが一般的で、以前は預金の半分以上が外貨だったものが、ようやく3分の1程度まで低下してきたとはいえ、まだ高い水準だ
– インバウンド観光客から得る外貨をリラに変えず、輸出業者も外貨収入をリラに変えない傾向があり、中央銀行はこれをリラに変換するよう法律を出しているが、リラへの信頼は完全に回復していない
– 20%以上という高金利はこのような状況を改善するためのものだが、メキシコやランドと違って金利の効果が現れるまでにはまだ時間がかかると予想されている
### ベテラン投資家が語る、高金利通貨の投資戦略
– 高金利通貨が全般的に弱くなっているのは、各国固有の問題というよりも「円高の独歩高」が主な原因だと分析されている
– 世界情勢が不確実になると、日本の投資家がアメリカなどから資金を日本に戻す傾向があり、これが円高の一因となっている
– 高金利通貨投資の基本戦略は「高金利で為替損を相殺する」ことであり、全体として高金利通貨が弱くても深刻に考える必要はないとの見解が示されている
– 高金利通貨は各国がさまざまな問題を抱えているからこそ高金利となっているのであり、その高金利が通貨の弱さを癒す役割を果たしている
これらの高金利通貨は、トランプ政権の関税政策や各国固有の経済状況によって今後も変動が予想されるが、基本的には各国の貿易状況や金融政策、そして円相場の動向が重要な決定要因となる。
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野村雅道 氏
FX湘南投資グループ代表 1979年東京大学教養学部を卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。82年ニューヨーク支店にて国際投資業務(主に中南米融資)、外貨資金業務に従事。85年プラザ合意時には本店為替資金部でチーフディーラーを務める。 87年米系銀行へ転出。外資系銀行を経て欧州系銀行外国為替部市場部長。外国為替トレーディング業務ヴァイスプレジデントチーフディーラーとして活躍。 財務省、日銀および日銀政策委員会などの金融当局との関係が深く、テレビ・ラジオ・新聞などの国際経済のコメンテイターとして活躍中。為替を中心とした国際経済、日本経済の実践的な捉え方の講演会を全国的に行っている。現在、FX湘南投資グループ代表。
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トルコリラが上がらない理由ベテラン投資家が語る 高金利通貨 メキシコペソ
2020年は3月にいわゆる「コロナ・ショック」の大乱高下が起こったこともあり、全般的にボラティリティが高くなりましたが、それにしてもトルコリラ/円のボラティリティの高さは図抜けた数字になっていることが再確認できるのではないでしょうか。
やはり高金利通貨として知られてきた南アフリカランドの政策金利が3%台まで引き下げられたことを考えると、トルコリラの相対的に高い金利は一際目立つところとなりました。ただそれほどまでに高い金利のトルコリラでありながら、比較的頻繁に「トルコリラ・ショック」といった暴落も含めて大幅な下落が続きました。
岡根 これはトルコリラの債券だね。債券というのは借金の証書みたいなもの。それを買った人は毎年決まった金利がもらえる。新興国の債券は金利が高いから人気なんだ。
ところが、トルコのエルドアン大統領は、「インフレ対策にはむしろ利下げが有効」といった独特の持論があり、利上げに強く反対する姿勢を続けてきました。こういった中で、トルコリラは長期に渡り大幅な下落が続いたのです。
メキシコペソは高金利通貨、資源国通貨としてインフレ懸念の強まりとともに注目度が上がりました。世界有数の原油埋蔵量を誇るメキシコ湾に面する産油国だけに、原油価格がメキシコペソ相場に大きな影響を与えます。メキシコ湾へのハリケーン来襲、それによる製油所の破損などで相場が動くことがあります。2022年のロシアのウクライナ侵攻による原油価格上昇はメキシコペソの上昇要因となりました。メキシコペソ相場は、米国経済の影響を受けやすい傾向にあります。1994年にNAFTA (北米自由貿易協定) が発効して以降、メキシコと米国との経済関係はますます強まりました。そのため、米国の景気が良くなるとメキシコの景気も良くなる傾向があります。なおNAFTAは再交渉ののち2020年7月1日にメキシコ名称「Tratado entre Mexico, Estados Unidos y Canada , T-MEC」として発効しています。中央銀行の金融政策もメキシコペソ相場に大きく影響します。メキシコ中央銀行 (BOM) はインフレ目標を採用しており、前年比のCPI (消費者物価指数) 上昇率を+3% (その上下1%が許容レンジ) にすることを金融政策運営の目標としています。1993年1月にデノミを実施して新ペソを導入。1996年8月には変動相場制に移行しました。経済基盤の脆弱さや政治的・社会的問題などからメキシコペソ相場は大きく変動するので、十分なリスク管理が必要です。
トルコ経済の最大の問題は、2022年6月の消費者物価の前年比上昇率が78%にも達するといった猛烈なインフレです。インフレ下では「モノ」の価値が高まるので、相対的に通貨価値の下落を招きます。そんな通貨価値の下落を回避するためには、利上げにより、金利面の魅力を高めるというのが基本の政策でしょう。
2006年から2008年前半にかけては1メキシコペソ=10~11円台で推移していたメキシコペソ / 円相場ですが、2008年9月のリーマンショック発生とともに、わずか3ヶ月で6円台まで急落。その後は6~7円台の持ち合い (ボックス圏) 相場が続きますが、2011年から2012年にかけて一段安となり、一時は5円台前半まで円高・メキシコペソ安が進みました。この間、リーマンショック後の世界経済の回復とともに原油高が進み、メキシコ経済も4~5%台の成長を実現していますが、ドル / 円の下落に歩調を合わせるような形でメキシコペソ / 円も下落しています。安倍政権下で金融緩和が始まった2013年以降はメキシコペソ高・円安にトレンドが転換。2014年後半には一時1メキシコペソ=9円近辺までメキシコペソ高が進行しました。しかし、その後2014年の原油価格の急落でメキシコペソは再び売られました。中国経済の鈍化懸念から世界的に株価が大幅に調整したことや、中国が人民元を事実上切り下げたことで新興国通貨全般に不安が高まったことも影響したようです。2016年に米国でトランプ政権が誕生するとメキシコに強硬政策をとったことでさらに5円台まで下落しました。2020年3月には新型コロナウイルスの感染拡大を背景にした原油価格の下落や経済悪化懸念などが原因でメキシコペソは急落し、メキシコペソ / 円は4.2円と過去最安値を付けました。その後原油価格の高騰、急速な利上げで上昇基調をたどりました。メキシコ中央銀行は商品高やコロナ禍一巡による経済活動の正常化で高まったインフレ抑制のため2021年から利上げを行いましたが、2022 年はインフレ率が 7.9%と一時23年弱ぶりの高水準に達しました。2023年5月、インフレ鈍化が確認され16会合ぶりに利上げを停止、政策金利を11.25%で据え置きました。7会合連続で据え置いた後、2024年3月に利下げを行いました。インフレはピークアウトしたものの目標を上回っていますが、景気の減速に配慮したとみられます。その後、中東の地政学リスクを巡って下落する場面があっても相対的に金利が大幅に高いメキシコペソは堅調地合いを続けました。流れが変わったのは6月2日の大統領・連邦議会選挙です。連邦議会選挙で与党連合が下院で改憲に必要な3分の2を超える議席を獲得したことで、ロペス=オブラドール現大統領が掲げるポピュリズム的な政策が実現するとの警戒感が強まり、メキシコペソは急落しました。シェインバウム次期大統領が司法制度改革を推進する意向を示していることも重荷です。2024年6月現在、1メキシコペ=8.5円近辺で推移しています。
トランプ大統領がメキシコへの関税に署名したことで、メキシコペソは一時21.29ペソと2022年3月来のペソ安を付ける場面もあったが、その後すぐに20.00-21.00ペソレンジに戻している。
例えば、トルコリラ/円は2015年初めには50円を上回っていましたが、その後はほぼ下落傾向が続き、2021年には6円まで下落しました(図表1参照)。このように長期にわたる大幅な下落は、経済政策の失敗といった「人災」の影響が大きいといった具合に、現在のトルコ特有の原因によってもたらされている可能性がありそうです。
PKK、トルコ政府と停戦宣言トルコからの分離独立を掲げて武装闘争を続けてきた少数派クルド人の非合法組織「クルド労働者党(PKK)」が3月1日、トルコ政府と「停戦する」と発表した。指導者のオジャラン氏が獄中から声明を出し、PKKの非武装化と解散を求めていた。 トルコ政府との和解が成立すれば歴史的だが、過去にも和平交渉が失敗しており最終的な和平への道のりは遠い。
日本で外国為替証拠金(FX)を手掛ける個人投資家の間で高金利の新興国通貨への買いが戻らない。対ドルで円の先高観が根強く、もともとリスクの高い新興国通貨への投資を積極的に進めようとのムードになりにくいためだ。米大統領選の不透明感に揺れるメキシコのペソや、中東情勢の混迷の影響を受けやすいトルコのリラなど、それぞれが抱える固有の買えない理由にも敏感になっている。
メキシコはブラジル、アルゼンチンとともに中南米を代表する新興国のひとつです。メキシコの 2023 年の名目GDPは1.79兆ドルと、中南米ではブラジルに次ぐ2位、世界でも12位となっています (IMF) 。1982年の債務危機と、1994年の通貨危機を経験していますが、2007~2009年の世界的な金融危機以降、近年は堅調な米国経済を背景に経済成長を続けてきました。天然資源に恵まれ鉱業がメキシコ経済の成長を支える主要産業となっています。原油は世界10位の生産量を誇ります。産業用途も多い銀の生産量は世界1位 (JOGMECより) 、自動車の潤滑油などの原料となるモリブデンの産地としても有名です。世界遺産登録数が35 (2023年現在) もあり、パンデミック下にあっても一度も国境を閉ざすことがなかった観光大国でもあります。人口は1.2億人を超え、若年層も多いことから、BRICsに続き成長が期待できる新興国のグループの総称「ネクスト11」にも挙げられた経済成長が期待される国です。国境を接する米国が最大の貿易相手国で、輸出の約8割、輸入の4~5割近くを占め経済的に密接な関係を持っています。米国向けの自動車製造工場も多くあり、雇用を創出しています。近年は「ニアショアリング」で、電気自動車 (EV) の生産拡大に向けた投資が活発です。そのため米国との関係はメキシコ経済にとって重要です。メキシコ国内の治安に不安があり、米国への不法入国や麻薬密輸などの問題は両国の関係に陰を落とす要因となっています。日本とも近年自動車関連業界を中心につながりを深めています。
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