導入進む 宿泊税 に疑問と課題
そうなれば、今後、ますます観光業が発達する可能性もあるだろう。宿泊税を導入した地域への投資を検討する際は、税の使途が観光資源の魅力向上に結びついているのかという観点に注目していきたいといえる。
有名観光地で続々と導入されている宿泊税は、宿泊客にとっていくらぐらいの負担なのだろうか。
さらに、宿泊税は目的税であり、その税収は観光関連施策の財源に充てられている。たとえば、石川県金沢市では、2023年度の宿泊税収の5割強が「歴史 ・ 伝統 ・ 文化の振興」や「観光客の受入れ環境の充実」といった観光需要の増加を促す施策に充てられている。また、北海道俱知安町では、宿泊税収のほとんどがリゾート地としての質や魅力の向上に充てられている。
2024年の訪日外国人(インバウンド)数とインバウンド消費額が過去最高を更新した。インバウンド消費額は8.1兆円と、自動車に次ぐ「輸出産業」となっている。ただ、その一方で、人気観光地では混雑、渋滞、ごみの増加、地域住民が路線バスに乗れないなどの問題が起きている。ごみ処理やバスの増便、トイレの整備などのコスト増にどう対応するのか。そこで、最近、導入が広がっているのが、観光税の一種である「宿泊税」である。東京都(2025年内をめどに見直し)、大阪府、京都市などに続き、多くの自治体が導入を探っている。本稿では、宿泊税、それに対する自治体の不満や課題を踏まえ、増大する観光関連のコストをどう手当てすれば良いのか考えてみたい。
すなわち、宿泊税の課税によって、それを財源とした観光振興のための施策が一段と充実し、その自治体の観光資源の魅力がより一層高まるといえるだろう。
宿泊税制度は、条例附則第7項の規定により5年ごとに制度の在り方について検討を加え、その結果に基づき見直しを実施することとしています。しかしながら、前回見直し時期であった令和3年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、税収見込みや宿泊単価の動向など有用なデータに基づき今後のあり方を議論することが困難でした。そのため、その時点においては現行制度を維持・継続することとし、データが収集可能となったタイミングで改めて検討を行うべきとしていました。その後、令和5年の水際措置の終了や新型コロナウイルス感染症の5類移行などによる来阪観光客数の回復を受け、有用なデータが収集可能となったことや、昨今、変化のスピードが早くなっている観光動向等を踏まえ、2024年4月に「大阪府観光客受入環境整備の推進に関する調査検討会議」に対し、宿泊税に係る制度の在り方等についての諮問を行い、全5回の会議を経て、同年8月に第一次答申をいただきました。 この答申を踏まえ、税率の引き上げ、免税点の引き下げ及び万博開催期間中における修学旅行生等の課税免除を継続する制度改正を行うことを2024年9月の大阪府戦略本部会議において決定いたしました。同年9月議会において、大阪府宿泊税条例の一部を改正する条例が可決され、同年11月から法定外目的税の変更について地方税法に基づく総務省との協議を開始し、2025年2月に総務大臣の同意が得られました。これを受け、同年2月下旬に本改正条例を公布し、周知期間をおいて、税率、免税点については同年9月1日に、課税免除については同年11月1日に条例を施行する予定です。
宿泊税の導入により、観光業に影響はないのだろうか。これについては、マイナスの影響を及ぼすという議論と特に影響を及ぼさないとの議論がある。
1人1泊の宿泊数に対して課されるのは各自治体で共通しているが、定額制ではなく定率制を採用しているところもある。定額制のケースでも、その金額にはばらつきがある。また、一定額未満の宿泊料には課さない免税点を設けている自治体もある。各自治体によって多種多様な税制といった印象である。
なお、東京都は、令和5年の税制調査会報告で、宿泊料金の上昇や観光振興費の増加などを踏まえ、税額を引き上げるのが相当としている。免税点をなくし民泊についても課税対象とする構えだ。
一般的に考えれば、宿泊税の分だけ宿泊費の負担が多くなるのであり、その分その地域への宿泊を控える傾向が発生するのではないかという懸念があるだろう。
観光資源としての魅力向上が宿泊費負担の増加を上回るものであれば、観光ニーズがさらに高まって、宿泊者数が増加することも考えられる。
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