午前の為替予想は… 注目の米雇用統計 市場は悪化を警戒
作成日時 :2025年3月7日8時00分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
ドル円予想レンジ
146.800-149.300円
前日の振り返りとドル円予想
昨日のドル/円は約5カ月ぶりに147円台前半へと下落した。日本最大の労働団体、連合の賃上げ要求が32年ぶりに6%を超えたことで日銀の利上げ観測が高まると円が全面的に上昇。米国の景気減速懸念を背景にドルが続落したことも相まって、昨年10月4日以来の安値となる147.31円前後まで下値を切り下げる場面があった。その後は大幅安の反動でショートカバーが入り、前日比85銭ほどドル安・円高の147.98円前後でクローズ。本日は米2月雇用統計に市場の関心が集まっている。市場予想は非農業部門雇用者数が16.0万人増、失業率は4.0%と、いずれも前月並みの予想値だ。ただ、5日の米2月ADP全国雇用者数や昨日発表された米2月チャレンジャー人員削減数など、このところ米労働市場の軟化を示す経済指標が散見されることから、市場は米2月雇用統計の悪化にも警戒感を抱いているようだ。悪化ならドルの続落は免れないだろう。ドル/円の下値メドは、昨年9月から今年1月の上げ幅の61.8%押しにあたる146.90円台と見ている。一方で、市場が悪化を警戒しているだけに予想以上に良好な雇用統計であればドルの反発も予想以上の大きさとなる可能性がある。日足一目均衡表の転換線が通る149.30円台が上値のメドだろう。なお、米金利先物が織り込む年内の利下げ回数(1回25bp刻みで換算)は、ここ2週間で1.5回から3回へと倍増。雇用統計の発表後に行われるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演にも注目だ。
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株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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ドル円午前の為替予想 注目の米雇用統計 市場は悪化を警戒
短期金融市場では、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合での50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げの織り込みが後退した。
もう一つは、1月の米国財貿易赤字が前月比+25.6%の1,533億ドルと過去最大を記録しました。トランプ大統領の関税発動を前に企業が前倒ししたとみられ、貿易赤字が1-3月期の経済成長の足かせとなる可能性があります。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、午後は「オペの応札倍率の低下を好感した可能性がある上、円高も進んでいる」と指摘。米雇用統計については「日銀の追加利上げ観測にも影響するため、注目度が高い」と述べた。
Q.きょうの外国為替市場で1ドル=160円まで円安が進行したが、その要因をどう見る?
外国為替市場では円相場が急激に値上がりする場面がありましたが、午後6時すぎ、財務省の神田財務官は記者団から政府・日銀が市場介入に踏み切ったのかと問われたのに対し、「私から介入の有無について申し上げることはない」と述べました。そのうえで「投機による激しい異常とも言える変動が国民経済にもたらす悪影響は看過しがたいものがある。引き続き、必要に応じて適切な対応をして参りたい。24時間365日対応できる準備をしている」と述べて、市場の動きを強くけん制しました。
また、ラトニック米商務長官による「トランプ大統領がカナダ、メキシコに妥協する考えもある」という発言によってドルは急速に買い戻され、1ドル=150円近辺まで円安が進みました。
5日の東京市場午前11時ごろに予定されているトランプ米大統領の施政方針演説に注目が集まっています。どんな発言が飛び出すか見当がつきませんが、トランプ大統領の発言に振り回される相場展開が続いても、ドル/円を動かす基本構図に変わりはないとの考えで臨みたいと思います。
また、ドル/円の根本的な構図は「日米の金融政策の時期」によって左右されますので、トランプ大統領の言動によって相場は振り舞わされても、乱高下の後、ドル/円はこの構図にのっとって動くことが予想されます。
これらの指標を受けて、アトランタ連邦準備銀行のGDPNowは2月28日時点でマイナス1.5%と2月19日時点の+2.3%から大きく下方修正し、3月3日時点ではマイナス2.8%とさらに下方修正しました。前倒し需要の反動や山火事、寒波などは一時的要因ですが、消費抑制は2月、3月も続くのかどうか注目です。
9月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比25万4000人増加。エコノミスト予想の中央値(15万人増)を大きく上回った。失業率は4.1%に低下。労働市場の著しい悪化に対する懸念が払拭(ふっしょく)された。
A.先週金曜日に日銀の金融政策決定会合があったが、市場では、円安に対応するために日銀がある程度、金融政策で対応するのではという期待があった。結果としては現状維持だったことや、その後の植田総裁の記者会見で円安に対する危機感と言うか、対応策を大きく示さなかったことが、円売り安心感を生むということになったと思う。また、構造的な変化で言えば、ウクライナ情勢の悪化以降、原油価格が上がったこともあって日本の貿易収支の赤字が大きく拡大した。去年以降、少しずつ赤字の幅は縮小はしているが、かつてと同じように日本は貿易収支が黒字だ、外貨を稼いでいるんだという構造ではなくなっていることが1つの要因だ。もう1つは最近、いわゆるクラウドサービスなどデジタル関連の赤字が日本では広がっている。こうした収支の悪化というのが基礎的なところにあって、プラスアルファで日米の金利差が拡大しているのが足元の円安につながる要因だと考えている。
FRBの利下げは年内1回、しかも年後半との見方が多かったですが、2月後半の低調な経済指標や消費者センチメントの悪化を受けて、6月に1回、9月か10月に1回、場合によっては12月と、年内2~3回の利下げの見方になってきています。FOMCまでの経済指標でこの見方が強まるのかどうか、あるいは後退するのかどうか注目したいと思います。
金融市場全般がウクライナ停戦協議やトランプ関税の不確実性に振り回されており、ドル/円も神経質な動きが続いています。トランプ大統領に振り回されることを嫌い、金利差コストのかかる円ロングポジションの保有期間を短くする傾向となっているようです。
3月は日銀金融政策決定会合とFOMC(米連邦公開市場委員会)が同じ日程の18~19日開催予定ですが、それまでは日米それぞれの経済・物価状況を確認しながら日米金融当局の姿勢を見極めていく動きになるでしょう。
まずは、3月5日の地区連銀経済報告(ベージュブック)で各地区の経済状況を確認したいと思います。そして、2月に発表された消費者センチメントの悪化が今月発表の指標にも影響しているのかどうか注目です。
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