人人人 京都中心地から日本人客減
こうした状況を受けて、日本人の京都離れも進んでいます。実は京都を訪れる日本人観光客の数は近年減り続けていて、国内観光地の各種ランキングでも順位を下げていました。「京都に行っても混みすぎているだろう」とか「ホテルが高過ぎる」という印象が定着してしまっていました。近年では世界的な「京都ブーム」と日本人の「京都ばなれ」が同時進行していたんです。
──私も学生時代を京都で過ごしましたが、「働くようになったら京都でお金をたくさん使い」とよく言われました(笑)。京都の人は、学生には寛容なところがありましたね。
京都以外の地域の富裕層同士の空中戦が行われているだけで、現地に住んでいる人間からすれば関係がない事。 投資目的で買って無人の空き室で放置されてるぐらいなら、宿泊施設や遊べる施設を作ってくれた方が、なんぼかマシだったりします。
その点、京都は「ここまでは譲っていいが、そこから先は地域コミュニティに傷がつく」といった境目に関して勘の良さがあるような気がします。よそから入ってくる人間からすれば、途中まではスイスイ進んで行くのに、とつぜん壁が現れてそこから先には進めなくなる現象があるんです。妖怪「ヌリカベ」が立ちふさがるような感覚ですね。
──今日は、弊害の目立ったコロナ前と観光客が消えたコロナ後の京都の両面について聞いていきます。まずはコロナ後の京都を振り返っていきたいと思います。
観光という営み自体もやはりノスタルジアと切っても切り離せないものです。そこに自分たちが住んでいる/生きている場所にはないものがあるからこそ旅に出かけるわけですが、とくに人々が京都に観光に来るというのは、自分たちの日常では喪われてしまったものを見に来るということですから……。
中井 街が賑わっていても、京都で暮らしている人たちがいなくなってしまえば、「京都らしさ」は喪われる可能性があります。高齢化や人口流出の問題は、外的な要因よりも京都にとっては脅威かもしれません。人がいなくなれば、内側から切り崩される可能性がある。持続可能性が問われるコロナ後の京都を考えるうえでも、観光客だけでなく京都人を増やす努力はより重要になるでしょう。
京都の住民が最も問題視しているのは、「民泊」である。民泊とは市内の住宅やアパートを旅行者など短期滞在者に貸し出すことで、Airbnb(エアビーアンドビー)などの仲介サイトの登場で人気が加速した。住宅所有者が自宅の1室を貸し出すだけならまだしも、開発業者や投資家が民泊市場になだれこみ、マンションを1棟丸ごと買い取って民泊専用に改修するようになった。
19年12月15日、筆者は、元京都市会議員で2月の市長選に立候補を表明した村山祥栄氏に観光公害についてインタビューする機会を得た。村山氏の選挙公約の大きな柱の一つは、観光改革である。
「観光公害」はいまや、避けては通れない政治問題である。地方議員も有権者も、観光客・産業界・住民おのおのの利害のバランスをどのようにとるかという問題に向き合わねばならない。今回の京都市長選は、日本の地域社会がこの厄介な問題にどういう答えを出すかが明らかになる試金石となるだろう。
東京五輪を機に訪日する外国人観光客は記録的規模に上るはずだ。その受け入れ態勢づくりが進むにつれ、京都でもそれ以外の地域でもようやく、観光のコストや恩恵の規制・共有をめぐる議論が始まりつつある。政府は2020年に4000万人の外国人観光客を誘致するという目標を掲げた。10年後には年6000万人にしたいとしている。
コロナ前の京都の状況は、取り戻すべき古き良き時代ではないことは観光産業に従事されている方も含めて一致した見解だろうと思います。今の「ウィズ・コロナ」の時代がこの先2年続くのか、3年続くのかはわかりませんが、グローバルな圧力が低下するこの時期は、もっと息の長いスパンで地域社会と折り合うことのできる持続可能な観光のあり方やシステムを構築するのに重要なチャンスになるのだと思います。
地域住民の生活に与える悪影響も、今まではあまり意識されてこなかったポイントだろうと思います。交通インフラやトイレなどが混みすぎてしまうと、住民にとっては迷惑です。京都で言えば、とくに観光客の動線と重なるルートでは市バスの混雑具合は常軌を逸したものでした。
──『パンクする京都』では、インバウンド需要の急増で地価が高まったことで京都から出て行く人が増えていて、一方で新たにそこに住もうとする住人が減少していると指摘されています。そうなると、「京都らしさ」も次第に損なわれるのではないでしょうか。
──コロナ後の京都についてご提言は?
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