J1広島の新本拠地 集客率90なぜ
北米4大プロスポーツリーグで最も人気が高いとされるアメリカンフットボールのNFL(ナショナルフットボールリーグ)では、ダラス・カウボーイズが1試合平均9万1619人(総合1位)、年間73万2958人を動員した。 同リーグ2位のニューヨーク・ジェッツに年間で10万人以上の大差をつけ、断トツの1位である。 NFLのスタジアムは6万人から8万人を収容する巨大なものばかりだが、カウボーイズの本拠地AT&Tスタジアムは10万人収容と他を圧倒する規模を誇り、観客動員率は90%を超える。ホームゲームは年間わずか8試合。 その8試合だけで、J1で最も多くの観客を動員した浦和レッズ(60万3534人/17試合)を軽く超えている。
2018シーズン、日本プロ野球(NPB)は過去最多となる2555万719人もの観客動員数を記録し、JリーグもJ1、J2、J3を合わせて976万9629人の過去最多を更新した。日本の2大プロスポーツリーグが堅実に成長している中、世界の主要なプロスポーツリーグは、いったいどれだけの観客を集めているのだろうか?
J1リーグでは埼玉スタジアム2002(6万3700人)を本拠地とする浦和レッズ(総合82位)や味の素スタジアム(4万9970人)のFC東京(総合111位)、日産スタジアム(7万2327人)の横浜F・マリノス(総合139位)など、規模の大きいスタジアムでホームゲームを行うチームが上位に入っている。 ただ、これらの会場は満席には程遠い状態となっており、何らかの改善策が必要といえるだろう。
J1リーグも近年、少しずつだが観客動員を増やしている。2018シーズンはイニエスタ加入効果を受けた神戸が1試合平均で3000人超も動員を増やしたことに加え、J1に復帰した名古屋グランパスが1試合平均2万5000人近い動員を記録したことも増加の要因となっている。ただし“イニエスタ特需”はいつまでも続くわけではないので、今後さらに動員を伸ばすためには、各クラブのさらなる努力が必要になるだろう。
2018年7月に世界的クラッキ、アンドレス・イニエスタが電撃的に移籍加入して以降、ヴィッセル神戸の試合のチケットが“プラチナ化”している。ホームゲームはチケット完売の試合が続出。アウェーゲームでも観客動員数は大幅に増えており、例えば、ことし4月20日のJ1第8節の浦和レッズ戦では、イニエスタと今シーズン加入したダビド・ビジャは欠場したものの、埼玉スタジアム2002に5万4599人の大観衆が集まった。
ちなみに、競技フィールドや会場の規模の影響により、上位はすべて屋外競技のリーグとなっており、会場規模の小さい屋内競技はどうしても動員数が少なくなってしまう。ナショナル・バスケットボール・アソシエーション(NBA)は平均1万7857人、ナショナルホッケーリーグ(NHL)は1万7456人だが、NBA、NHLともに動員率90%以上のチームが大半を占めており、人気の高さがうかがえる。この動員率で考えると、NPBやJ1には改善の余地が多く残されており、さらに数値を伸ばしていくことが期待される。
イニエスタの影響でJ1リーグの観客動員は明らかに増加しているが、世界にはJ1をはるかにしのぐ観客を動員するプロスポーツリーグがある。通年のリーグの場合は2018シーズン、年をまたぐリーグは2018-19シーズンの各リーグ1試合平均の観客動員を比較してみよう。
2019年5月3日、4日に開催されたJ1リーグ第10節において、節ごとの観客動員の歴代最多記録が更新された。 平成から令和へと元号が変わり、10連休の真っただ中に行われたこともあり、3日に行われた浦和レッズ対ジュビロ磐田戦(埼玉スタジアム2002)は5万3361人超、4日の北海道コンサドーレ札幌対ヴィッセル神戸戦(札幌ドーム)は3万4591人、ガンバ大阪対FC東京戦(パナソニックスタジアム吹田)は3万3905人と、各スタジアムで大盛況。 9試合合計で25万9521人、1試合平均2万8836人を動員した。
一方、NPBはスタジアム自体がファンを引きつける広島カープや横浜DeNAベイスターズが90%超の観客動員率をキープし、中日ドラゴンズも松坂大輔の加入効果で動員が増加。パ・リーグでも“山賊打線”で久々のリーグ制覇を達成した埼玉西武ライオンズや井口資仁監督が就任した千葉ロッテマリーンズが観客数を増やした。選手たちはNPBで実績を積み上げてMLBを目指す流れになっているが、少なくとも集客力という面において、NPBはMLBにも匹敵するものになっているといえるのではないだろうか。
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