
本日の欧州時間でユーロドルは、まずはドイツの債務抑制見直し案をめぐる政治状況が左右することになりそうだ。
そもそもの債務見直し案は、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)、社会民主党(SPD)、そして緑の党の3党が、3分の2の議席を保有している状態で可決する必要がある。2月23日に行われた選挙では、極右・ドイツのための選択肢(AfD)が第二党に躍進したことで、今月25日に発足する新議会ではCDU・CSU、SPD、緑の党では可決する議席数が足りず、新議会前に見直し案を通過させなければならない。下院の臨時議会が13日から18日とまだ時間はあるものの、昨日「現状のままでは支持しない」と反対に回った緑の党の動向が注目される。緑の党が賛成に回った場合はユーロは素直に買われるだろうが、難色を示した場合には上値を抑える要因にはなりそうだ。
ドイツの政治状況以外には、引き続きトランプ政権の動向に目が集まる。明日12日に鉄鋼とアルミニウムへの追加関税が発動される予定になっているが、朝令暮改を繰り返すトランプ米大統領はどのような対応を取るかが注目される。本日も米株指数先物が大幅に下げ幅を広げているが、一部では米株の投資判断を中立に引き下げる一方で、欧州は引き上げているように、トランプ米大統領が関税に過激な発言を繰り返した場合には株安によりユーロ買い・ドル売りに動く場面もありそうだ。
なお、本日は欧州からは主だった経済指標の発表は予定されていない。また、レーン・フィンランド中銀総裁の講演は予定されているものの、ここ最近の市場は欧州の金融政策への反応がやや鈍いことで市場を動意づけるのは難しそうだ。
・想定レンジ上限
ユーロドル:先週末の高値1.0889ドルや節目の1.0900ドルを超えた場合は、昨年11月6日高値1.0937ドル。
・想定レンジ下限
ユーロドル:10日安値1.0805ドル。その下は6日安値1.0766ドル。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
秋季見通しの変更はこうした動きを反映している
そのため、欧州委員会は11月21日に欧州連合機能条約(TEFU: Treaty on the Functioning of the European Union)第126条第3項に基づく過剰財政赤字の有無を認定する報告書を公表するとともに、欧州委員会の勧告116に対する、「特に深刻な財政規律違反(particularly serious non-compliance)」であるとの意見を採択した。報告書は、(1)最近の景気の下振れリスクは高まっているものの、16年以降継続して名目経済成長率が2%を超えており117、マクロ経済状況をもってイタリアが債務削減ベンチマークから大きくかい離する理由とすることはできないこと、(2)修正予算案では過去取り組んできた成長力強化のための構造改革、特に年金改革を著しく後退させるものであること、(3)修正予算案及び欧州委員会秋季見通し(18年11月)に基づくと、EU 経済財務相理事会(ECOFIN)が勧告した中期財政目標(MTO)達成に向けた調整軌道から、18年は著しくかい離(significant deviation)し、19年には特に重大な財政規律違反(particularly serious non-compliance)となるリスクがあること、の3点を中心に予算案を審査した結果、イタリアへの過剰財政赤字是正手続(EDP: Excessive Deficit Procedure)の適用が正当化されるとした。
このように、ドイツの労働市場はほぼ完全雇用状態が続いており、企業にとっては人手不足感、つまり労働力の側面からも供給制約感が高まっているものとみられる。今後の見通しとしては、資本面からの供給制約と同様に、内外の景気の回復ペースの減速に伴って労働面からの供給制約もある程度緩和されると考えられる。ただし、労働面からの供給制約が資本面からの供給制約と異なる点は、既に12年の段階で実際の失業率がNAIRUを下回っていることからもうかがわれるように、単なる総需要の変動による影響とは別に、労働市場の構造的な変化により労働需給がひっ迫している側面が存在することである。
EU諸国からの移民は、EU離脱交渉に係る不透明感の高まりに加え、ポンドの減価に伴い自国通貨建て受取賃金が従前に比べ割安となったことなどにより英国で働くメリットが低下し、減少傾向にある。EU諸国からの移民(注1)の純増数(流入数-流出数)は、15年7月からEU離脱を問う国民投票が行われた16年6月までの1年間の18.9万人をピークに減少が続き、17年7月から18年6月までの1年間では7万人程度となっている(図1)。仕事関連の目的を持ったEUから英国への移民の純増数動向をみると、求職を目的に来英したEU市民は16年6月を境として、また英国内で職を有しているEU市民についても18年初以降急減した(図2)。その結果、就業者の純増数に占めるEU域内からの移民は、15年7~9月期からEU離脱を問う国民投票があった16年4~6月期までの1年間では+29.2万人であったが、17年10~12月期から18年7~9月期までの1年間では-10.7万人となった。英財務省が18年11月に公表した、複数のEU離脱パターンを想定した経済見通しでは、いずれのパターンにおいても、EEA(欧州経済領域:EU、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)からの移民の流入に制限をかけた場合には、移民政策が現行通りの場合と比較して、15年後のGDPが2%弱程度低下すると試算されている(注2)。
EU加盟国は、「欧州セメスター」25において、財政の健全性確保やマクロ経済不均衡の是正等に向けた取組について3年間の財政計画である「安定化プログラム26」と雇用と成長を促進するための構造改革計画である「国家改革プログラム」を欧州委員会に提出することとされており、これらに対するEU首脳会議の勧告27に基づいて予算案を作成することとされている。しかし、18年末の19年度予算案の各国議会における採択に向けたプロセスを進める中で、幾つかの国28で6月のEU首脳会議において承認された予算の枠組みを超えて財政拡張的な予算編成を行う動きが生じている。秋季見通しの変更はこうした動きを反映している。特にイタリアでは、6月に新たに樹立された連立政権の下、拡張的な19年度予算案を欧州委員会に提出したため、欧州委員会との間で対立が生じている29。
この結果、12月19日にイタリア政府とEU加盟国及び欧州委員会との間で19年度の財政赤字GDP比2.04%、19年の実質経済成長率見通しを1.0%に引き下げることで合意65し、過剰財政赤字是正手続(EDP)の開始は回避された。ただし、欧州委員会は、財政赤字比率を同目標以内に収めるべく必要な措置が実際に講じられるか引き続き監視する必要があるとしている。
イタリア政府から提出された予算案について、10月18日に欧州委員会のドムブロフスキス副委員長とモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は連名で、EU首脳会議において7月13日に採択された勧告における目標から明らかに著しく逸脱し、かつ、その逸脱の規模が前例のない大きさであることから、加盟国の財政規律を定めた安定成長協定に基づく義務に「特に深刻な財政規律違反」であることを指摘する書簡をトリア経済財政相に対して手交した。書簡においては、勧告では財政支出の伸び率が0.1%を超えないようにすべき112、とされたのに対し、予算案では2.7%の上昇と勧告内容を大幅に超過していることに加え、構造的財政赤字を対GDP比で前年から0.6%削減すべきとされたのに対し、逆に0.8%増加させるなど、対GDP比130%を超える債務残高を安定成長協定で義務付けられた基準である60%に向けて削減する内容となっていないこと、を指摘している。さらに、経済見通しがイタリア議会予算局の承認を得られていないことも問題点の一つとして挙げた。その上でイタリア政府に対し、このような計画を策定した理由につき、10月22日正午までに説明を求めた。
ただし、この財政赤字削減は、主として現政権が公約に目玉政策として掲げていたベーシックインカムの導入及び11年に実施された年金改革の撤回先送りによるものである。仮に20年以降にこれらの政策を実施する場合には、財源として20年、21年の付加価値税率引上げを行うことが前提となるが、そうした措置が着実に実施されるかにつき、EUは引き続きイタリアの状況を監視する必要があると強調している。既に19年1月時点においてイタリア中央銀行が19年の成長率見通しを0.6%へ下方改定するなど景気が急速に悪化しており、EUとの合意内容の遵守については予断を許さない状況となっている。
本節では、ヨーロッパ経済の最近の動向を振り返るとともに、英国のEU離脱が英国経済に与える影響やイタリアの19年度予算案をめぐる動き等、ヨーロッパ経済にとって重大な政策不確実性をもたらしている事象を取り上げて概観1した上で、今後の見通しとリスク要因を整理する。
9月の金融政策委員会では、新興市場国通貨の下落や米中貿易摩擦の高まりによる景気の下押しリスクについて初めて具体的な言及がなされた。続く11月公表のインフレーションレポートでは、世界経済成長率の鈍化やユーロ圏経済の減速、景気の下方リスクの高まり等に言及する一方で、円滑なEU離脱となった場合には、不確実性が解消されることに伴う設備投資をはじめとした需要の回復により、インフレ圧力が高まることが見込まれるため、3年後の政策金利を従来見通しの1.25%から1.50%49に引き上げる必要があるとした。さらに、EU離脱の方向性によっては引締め・緩和のいずれもあり得ることに言及した。
コンテ伊首相は、イタリア議会における19年度予算案採決に先立ち、12月13~14日に開催されたEU首脳会議において、19年の財政収支赤字対GDP比を2.04%、19年の実質経済成長率見通しを1.0%120に引き下げる案を提案し、19日になってEU加盟国及び欧州委員会と合意し(表5)、過剰財政赤字是正手続の開始は回避された。
ユーロ圏の一般政府財政収支対GDP比は、09~13年平均の-4.7%から17年には-1.0%にまで縮小した。先行きについて、欧州委員会の春季見通し(18年5月)の段階では、景気の緩やかな回復や低金利等を背景に財政赤字は19年に向けて今後も徐々に縮小していくとされていた。しかしながら、同秋季見通し(18年11月)では、19年の財政赤字は一旦拡大し、20年に縮小に転ずると変更された24(第2-4-25表)。
2/28の米・ウクライナ首脳会談決裂を受け、3/3に1.0371ドルへ下落したものの、欧州各国が和平案を策定し米に提案することで合意。また、ユーロ圏2月HICPの上振れの一方、米2月ISM製造業景気指数の下振れから1.0503ドルへ反発。さらに3/4には、フォンデアライエン欧州委員長が防衛強化に向け1,500億ユーロの融資提案を示唆。加えて、ドイツが「債務ブレーキ」緩和に前向きな意向を示したことから1.0627ドルへ上昇。こうした財政拡大策への思惑は3/7にかけて続き、3/5に1.0797ドルへ上昇後、3/6のECB理事会はタカ派寄りの利下げとなり1.0853へ上昇。さらに3/7の米雇用統計を受けて1.0889ドルへ上昇後の反落も1.0826ドルまでに留まり1.0833ドルで取引を終えました。また、ユーロ円は3/3の155円93銭、3/4の155円60銭を安値にドイツの財政ブレーキ撤廃に向けた財政拡大の意向が景気回復につながるとの期待とともにドイツDAX指数が史上最高値を更新。さらに対ドルでの上昇にもサポートされ3/6に161円28銭へ上昇。その後の反落も限られ160円38銭で取引を終えました。ユーロドルは週足・雲の下限(1.0825ドル)を下値支持線として週足での三役逆転を脱却するとともに200週移動平均線(1.0874ドル)、先週末の1.0889ドル、さらに昨年11/6の1.0937ドルを上抜けるか注目。ただ、急ピッチな上昇に対する警戒もあり、ポジション調整による反落にも注意が必要です。3/6のECB理事会では今年と来年の成長率見通しを下方修正した一方、今年のインフレ見通しを上方修正。また、米政権の関税政策への不透明感がある一方、ウクライナ停戦に向け進展があるか、さらには、3/12のラガルド総裁、3/13のオーストリア中銀総裁をはじめ複数のECB高官の発言も合わせて注目されます。一方、ユーロ円は日足・基準線(160円75銭)を明確に上抜け、週足・雲の下限(3/10:163円98銭)を回復するか上値メドとして注目される一方、日足・転換線/基準線(いずれも158円04銭)を目指して下落するか、対ドルでの上昇とドル円の下落基調との狭間で明確な方向性が明らかになるか注目されます。
11月13日に欧州委員会へイタリア政府が再提出した19年度予算案は、経済成長見通しや財政収支赤字をはじめ、鍵となる数字は一切変更されておらず、19年までにGDPの1%相当の国有資産を民営化することによる一時的な収入により公的債務を削減するとの見通しが示されたのみだった。
以上でみた通り、WLTPの全面施行は、18年半ば以降のドイツの製造業生産や輸出に大きな影響を与えた。その影響が当初の見込みよりも長引いたことから、19年のドイツ政府による実質経済成長率の見通しも18年秋以降断続的に下方改定され(注9)、19年の見通しも19年1月時点で1%とするなど、潜在成長率を大きく下回る見込みとなっている。ドイツ経済の弱さを受けて、OECDによるユーロ圏の19年経済見通し(19年3月時点)も、潜在成長率を大幅に下回る0.7%とされている。ドイツの生産や受注をみると、道路運送車両等では18年末以降ようやくWLTPの影響からの回復の兆しもみられ始めているものの(前掲図4、図7)、全体としては弱い動きが続いている。
19年2月のインフレーションレポートでは、19年の経済成長見通しを1.7%(18年11月時点)から大幅に下方改定し、BOEが潜在成長率とする1.5%52を下回る1.2%とされた53。こうしたことから、市場が織り込む政策金利の動向についても、18年11月時点では22年半ばまでの予測期間中に3回程度となっていた金利の引上げ回数が1回程度となった。一方で、今後のEU離脱プロセス、特に離脱後に交渉が行われるEUとの間の新たな貿易関係の内容や移行期間の有無、家計や企業の反応により見通しは大きく影響を受け得るため、BOEは状況に応じ柔軟に対応する54としている。
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