米高騰 輸入米に依存できない訳

米高騰 輸入米に依存できない訳
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米高騰 輸入米に依存できない訳

2008年にインドやベトナムが米の輸出を制限したのも、同様の理由からである。両国は米の大輸出国なので、フィリピンなどの輸入国では飢餓が生じた。ただし、同じ輸出国でも所得の高いタイは、輸出を制限しなかった。

例えば、食糧の輸出国との関係を強化したり、食糧の輸入先を多角化したり、食糧の輸入条件や規制を適正化したりすることができます。

その後もロシアによるウクライナ侵略の長期化により、制裁の内容は順次拡大されていきました。EU第5弾制裁パッケージ(2022年4月採択)では石炭、EU第6弾制裁パッケージ(同年6月採択)でパイプラインを除く原油の禁輸の方針等が決定されています。また、G7は、「ロシアの石油の輸入のフェーズアウト又は禁止等を通じて、ロシアのエネルギーへの依存状態をフェーズアウトすることをコミットする。我々は、適時にかつ秩序立った形で、また、世界が代替供給を確保するための時間を提供する形で、これを行うことを確保する」ことに合意しました。

次に石炭の輸入物価を見ていきます。石炭についても、国によって高騰の状況は大きく異なっており、いくつかの国では500近い数値にまで高騰していることがわかります。しかし天然ガスと比べると、欧州、アジアといった地域による傾向はあまり見られないことも読み取れます。また原油については、天然ガスや石炭と比べると上昇率が低く、国による違いも小さい状況となっています。

小麦の生産量世界第2位のインドが輸出制限をしたことが大きく報じられた。インドのような途上国が輸出制限するのは、放っておくと穀物が国内から高価格の国際市場に輸出され、国内の供給が減少、価格も国際価格まで上昇し、貧しい国民が穀物を買えなくなるからだ。しかし、インドの小麦生産は1億トンを超えるが、輸出量は93万トンにすぎない。日本の輸入量でさえ500万トンを超える。インドの輸出制限は世界の小麦市場(約2億トン)にまったく影響しない。多くの国が輸出制限を行っていると報じられているが、これらに重要な輸出国はない。

しかし、2008年世界食料危機はG8洞爺湖サミットの主要議題にもなったが、日本で食料を買えないと感じた人はいなかったはずだ。このとき、日本の食料品消費者物価指数は2.6%しか上がっていない。日本の消費者が飲食料品に払っているお金のうち87%が加工・流通・外食への支出である(2015年の数値、農林水産省調べ)。輸入農水産物に払っているお金は、2%にすぎない。その一部の輸入穀物価格が3倍になっても、全体の支出にはほとんど影響しない。このような食料支出の構造は、欧米などの先進諸国に共通している。

また、2022年4月には「エネルギー安全保障戦略10」を発表し、長期的にエネルギー安全保障の強化に向け、多様な国産エネルギー源を増強するための様々な取組方針が示されました。この中で、原子力発電については2030年までに最大8基の原子炉新設を目指す方針となっており、2050年までに現在の3倍超となる最大24GWの出力を整備した上で、電力需要の最大約25%を賄う(現在は約15%)ことを目指し、先進的な原子力技術開発も加速させるために、1億2,000万ポンドの政府基金も設立されています。また、このエネルギー安全保障戦略では、石油やガスについても方針が挙げられています。ロシア産エネルギーからの脱却に加え、英国内でガスを生産することは、海外から輸入する場合に比べて温室効果ガスの排出量が少ないこともあり、新規の北海石油・ガスプロジェクトの認可プロセスを開始する予定となっています。

石炭価格(豪州一般炭)に関しても同様に価格の高騰が顕著になっています。ロシア産石炭の輸入を段階的に禁止した影響に加えて、天然ガスの価格が高騰したことで欧州を中心に火力発電用の燃料としての石炭需要が増加したことも、価格高騰の要因の1つです。さらに、主要な石炭輸出国である豪州においては、2022年2〜3月や7月に大雨により石炭生産・輸送に障害が発生し、石炭の生産量が落ち込んでおり、このことも石炭価格の高騰につながりました。また、同じく主要な石炭輸出国の1つであるインドネシアにおいても、今回の天然ガス価格の高騰を受けて、国内における発電用燃料として石炭への需要が高まったことで、石炭の輸出を一時停止する等の措置を講じており、世界的な石炭価格高騰の一因となりました。その後、2023年に入って以降は、欧州での暖冬の影響や風力設備の稼働等を踏まえて価格が下落傾向にあります(第121-2-1)。

これと似た事態を日本人は経験している。終戦直後の食料難である。このとき、政府の東京・深川倉庫には、都民の3日分の米しかなかった。朝鮮・台湾からの米の輸入はなくなった。米、麦、イモなど多くの食糧は政府の管理下に置かれ、国民は配給通帳と引き換えに政府(公団)から食糧を買った。配給制度である。

ここまで見てきたように、長期戦の様相を呈している「LNG争奪戦」に対し、LNGを輸入している世界各国では、LNGの安定的な確保に向けて政府が積極的に関与しています。今回、LNGの輸入量を大きく増やした欧州諸国だけでなく、アジアでも中国や韓国は脱炭素社会の実現に向けた取組と並行し、エネルギー安定供給のための国家戦略に基づき、国営企業を中心にLNGの長期契約の交渉・締結を進めています(第121-3-9)。

EUではロシアによるウクライナ侵略を受けて「REPowerEU計画」を発表しました。この中では、省エネの推進に加えて、天然ガス等のエネルギー輸入元の多角化と再エネへの移行によって、エネルギーの安全保障の確保を目指すという方針を示しています。特にロシア産エネルギー依存からの脱却のための方策として、短期的にはガス貯蔵量の確保や需要減少を目的とした省エネ促進、新たなLNG輸入先の確保等の取組が示されています。その他にも、電力価格の規制や需要家である企業への支援等についても記載されています。

国民消費者としては、危機時に備え、より多くの食料を輸入・備蓄できる方がよい。どれだけ費用がかかっても米国製よりも国産の戦闘機を購入すべきだと言う人はいないはずだ。ゴルフ場をイモ畑に転換したとしても600万ヘクタールの農地を創設することは不可能だ。真剣に国民のためを考えるなら、大量の輸入穀物等の備蓄を考えるべきだ。

欧州のLNG輸入状況の内訳を確認していくと、ロシアによるウクライナ侵略が始まる直前から、急激にLNGの輸入量が増えていることがわかります。また、その増加分のLNGを輸出している国が主に米国であることが輸入状況のデータからわかります(第121-3-4)。

次に、米国のLNG輸出状況の内訳を確認していきます(第121-3-5)。前述の欧州のLNG輸入状況のデータとも連動しますが、2022年に入って以降、欧州向けのLNG輸出量が大きく増加していることがわかります。他方で、これまで米国産LNGの主な輸出先となっていたアジアへの輸出量が減っており、それまでアジアのプレイヤーが引き取っていた米国産LNGが、欧州へと売却され、LNGの流れが変わっている状況を見ることができます。

前項で概観したとおり、欧州がロシア産天然ガスの代替エネルギーとしてLNGの輸入量を拡大させたことによる影響は、欧州だけでなく世界全体へと広がっています。

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