メキシコペソや豪ドルなど投資家にとって魅力的な通貨の最新状況について、これまでの動向や注目ポイントについて解説します。
作成日時 :2025年3月14日14時00分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
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執筆:外為どっとコム総合研究所 神田 卓也
豪ドル/円(4時間足)
※レポート内の為替レート・チャートは外為どっとコム「外貨ネクストネオ」を参照
先週の豪ドル/円は7カ月ぶり安値更新後も一進一退
週初10日、トランプ政権の関税政策を巡る不確実性などから米国が景気後退に陥るとの不安がくすぶる中、NYダウ平均が一時1000ドル超下落。リスク回避の豪ドル売り・円買いが強まりました。翌11日の東京市場では91.82円前後まで下落して昨年8月5日以来の安値を更新する場面もありました。ただ、その後はウクライナがロシアとの停戦に関する米国の提案に合意したことなどからリスクセンチメントが改善。この日のうちに93円台を回復して反発しました。12日には米国がすべての国からの鉄鋼・アルミ輸入に対して25%の関税を発動しましたが、市場は織り込み済みで影響は限定的でした。ただ、13日にはトランプ米大統領が欧州連合(EU)産のワインに200%の関税を課す考えを示したことなどから再び反落。朝方に93.95円前後まで上昇していた豪ドル/円はNY市場で92円台半ばへ下落しました。なお、14日の東京市場では米国の政府閉鎖への警戒感が和らいだことで93円台を回復するなど一進一退の展開が続いています。
今週の豪ドル/円の注目ポイントは雇用統計
20日(木)に豪2月雇用統計が発表されます。14日時点で豪金利先物が織り込む4月利下げの確率は10%程度に過ぎず、市場が利下げ見送りをメインシナリオに据えおいていることがわかります。ただ、雇用統計の結果によっては利下げの織り込みが上昇する可能性もあるため要注目です。なお、豪中銀(RBA)は、前回2月会合で約4年ぶりに利下げを決めましたが、同時に追加利下げには慎重な姿勢を示し、市場の追加利下げ期待をけん制しました。労働市場については「最近のデータの中には予想外に強いものもあり、労働市場が従来考えられていたよりも幾分タイトになっている可能性を示唆している」と表明。それだけに、豪2月雇用統計の結果は利下げを巡る市場の見方に大きく影響する可能性があります。その他、豪ドルはトランプ関税を巡る動きやウクライナ停戦に絡む協議など、豪州から見た外部要因に振り回される展開が続きやすいでしょう。
今週の豪ドル/円の見通し
予想レンジ
91.500円~95.000円
基調
方向感模索
今週の注目ポイント
☆3/20 豪2月雇用統計
・主要国株価、国際商品価格

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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来週の豪ドル・円は伸び悩みか
豪ドル/円は2024年7月にかけて110円寸前まで上昇し、2007年に記録したこの間の高値を更新しました。これは米ドル/円が161円まで展開する「歴史的円安」となるなど、円全面安が展開した影響が大きかったでしょう。このため、米ドル/円が8月にかけて一転して暴落すると、豪ドル/円も90円割れ寸前までやはり暴落となりました(図表5参照)。
豪ドル関連に投資する上で、しっかり確認しておきたいリスク要因は、「財政引き締め」「新興国経済の落ち込み」「一段の利下げ懸念」「資源価格の下落」「世界的な天候不安」などが挙げられます。
豪ドル/円の5年MAかい離率は、2024年7月に110円まで上昇した局面で25%程度まで拡大しました。これは、2007年に記録した過去最高にほぼ肩を並べるものでした(図表7参照)。その意味では、5年MAとの関係で見た場合、2024年の豪ドル/円はほとんど過去最高の「上がり過ぎ」という動きだったのでしょう。
豪州は中国との貿易関係が強いことから、豪ドル/米ドルは上海総合指数など中国株との間に一定の相関関係が確認できます(図表3参照)。中国株の長期下落傾向が、小動きが続く中でも豪ドルの下落要因になっていた可能性はあるでしょう。
来週の豪ドル・円は伸び悩みか。米国の関税措置が世界経済に与える影響が引き続き懸念されており、日豪金利差の段階的な縮小観測は後退していないようだ。3月20日に発表される2月失業率が市場予想を上回った場合、リスク回避的な豪ドル売り・円買いがやや強まる可能性がある。
その後の豪ドル/円の下落により、5年MAかい離率も縮小しましたが、なお「上がり過ぎ」圏にあることには変わりなさそうです。その意味では、このような「上がり過ぎ」が是正される中で、2025年は豪ドル/円の下落トレンドが展開する可能性が高いと考えています。
今週の豪ドル・円は強含み。米関税強化を警戒したリスク回避の豪ドル売り・円買いは縮小し、日本銀行による3月追加利上げ観測は大幅に後退したことから、リスク選好的な豪ドル買い・円売りが強まり、豪ドル・円は一時94円台前半まで買われた。取引レンジ:91円82銭-94円11銭。
豪ドルが買われる要因となったのは米国経済の見通しの悪化だ。米国で3日に発表された米サプライマネジメント協会(ISM)の6月の非製造業(サービス業)景況感指数は前月よりも5ポイント低い48.8となった。また、5日に発表された6月雇用統計では失業率が4.1%まで上がり、2年7か月ぶりの高さになっている。CMEグループのデータによると、FRBが9月の連邦公開市場委員会(FOMC)までに利下げすることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間8日正午すぎで約71%。1週間前の55%程度と比べて、利下げ見通しが強まっている形だ。
足元の円安豪ドル円高の背景には、豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)での値上がりがある。8日の豪ドルドル相場の水準は、1週間前の1日と比べて1.3%ほどの豪ドル高。一方、ドル円相場(USD/JPY)もこの間、1ドル=161円台半ばから160円台半ばまで、0.7%程度の円高ドル安が進んでいるが、ドルに対して豪ドルが買われる度合いが、円が買われる度合いよりも大きかったことが、結果として円安豪ドル高につながった。
金利差は、為替相場の変動率(ボラティリティ)に大きく影響することから、大幅な金利差のある米ドル/円やクロス円が歴史的大相場を展開したのに対し、豪ドル/米ドルのような対米ドルでの取引「ドルストレート」は小動きの状況が続いたということでしょう。このような金利差に著変なければ、2025年の豪ドル/米ドルも小動きが続く可能性が高いのではないでしょうか。
豪米2年債利回り差は、足下で0.2%程度の豪ドル劣位です(図表2参照)。その一方で、日米2年債利回り差米ドル優位は3%を大きく上回っています。2022年の歴史的インフレ以降、先進国は軒並みインフレ対策で大幅な利上げに動いたのに対し、当初日本だけは金利上昇を抑制する政策を続けました。その結果、日本と米国など先進国の金利差は円劣位が大幅に拡大した一方で、日本以外の先進国間の金利差拡大は限られました。
52週MAは11月末現在で100円弱ですが、過去の経験を参考にすると、下落トレンドに転換した豪ドル/円は、一時的な上昇局面でも52週MAを大きく上回ることなく一段安に向かう可能性が高いと考えられます。
豪ドル/米ドルは、小動きが続く中でも、最近にかけての金利差変化からかい離する形で下落傾向が続き、年初来の安値更新含みの展開となりました。これには中国経済の不振の影響などがあるのかもしれません。
こうした中で豪ドル/円は52週MAを大きく割り込みました。その後の反発で一時52週MAを回復したものの、最近にかけて再び52週MAを大きく割れるところとなりました(図表6参照)。
2024年の豪ドル/米ドルは、0.63~0.69米ドル程度の小幅のレンジで、2023年に続き方向感のない動きに終始しました(図表1参照)。米ドル/円がここ数年記録的に大きな変動が続いていることと対照的に、豪ドル/米ドルの小動きが長期化している最大の理由は小幅な金利差でしょう。
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