備蓄米販売で利益とらず JA全農
停滞しているコメ流通の回復を目的とした放出は初めて。主要な流通経路を担うJA全農にコメが供給されれば、停滞が解消する可能性がある。コメの年間需要量は670万トンほどで、備蓄米15万トンは約2・2%に相当する。今回全量が落札されれば、1週間余りの需要を補うコメが放出されることとなる。
全国のスーパーでのコメの平均価格は、今月2日までの1週間で5キロあたり税込みで3952円と前の週から13円値上がりしました。値上がりは9週連続で1年前に比べると94%余り上昇しています。農林水産省は全国のスーパーおよそ1000店でのコメの販売価格の平均をまとめ、毎週、発表しています。それによりますと、先月24日から今月2日までの1週間の販売価格の平均は、5キロあたり税込みで3952円でした。前の週から13円上昇し、9週連続の値上がりとなりました。1年前は5キロあたり2000円ほどで、94.6%上昇したことになります。コメの5キロあたりの平均販売価格はことし1月に3600円を、先月には3900円を超えていて、政府の備蓄米の放出が公表されたあとも店頭での値上がりが続いています。
今月10日から行われた備蓄米の入札について、江藤農林水産大臣は、対象となった15万トンのうち9割以上が落札され、落札価格の平均は、消費税抜きで60キロあたり、2万1000円余りだったと発表しました。スーパーなどでの販売価格は、落札した価格に加え、このあとの精米や輸送などにかかるコストを踏まえ、決まっていくことになります。
宇都宮大の小川真如助教(農業経済学)は「備蓄米がスーパーなどにうまく流通すれば、5キロ当たり3400円程度に落ち着くのではないか」と話した。農水省によると、全国のスーパー約千店のコメ販売価格は、2月24日~3月2日が前年同期と比べ94・6%高い3952円だった。
備蓄米の入札は対象となるコメの産地や品種、それに生産年に加えて、1等、2等などの等級や保管倉庫の所在地などをもとに行われます。参加する業者は10日午前10時までに希望するコメの数量と価格を示した上で農林水産省にメールで申し込みます。その内容は農林水産省の担当者によって専用のシステムに登録され、国が決めた最低販売価格を上回る価格を提示した業者のうち、最も高い金額を示した業者から順に落札していきます。入札できる数量はこれまでの取り扱い実績をもとに業者ごとに上限が設けられているということです。10日の入札で落札されなかったコメがあれば、11日、同じ仕組みで再び入札が行われ、希望する業者は午後4時までに農林水産省にメールで申し込むことになります。落札された備蓄米は契約手続きを経て、入金が確認されしだい、落札した業者に引き渡されることになっていて、引き取り期限は来月末となっています。
今回放出される備蓄米は、去年とおととしに収穫されたもので、品種は「コシヒカリ」や「はえぬき」などあわせて41にのぼることから各社とも単一の品種で販売することは難しいとしています。また精米や包装の作業を迅速に進めるためにも、備蓄米を使用しているかを米袋などに記載する予定は今のところないということです。その上で販売価格について、一般的にブレンド米は特定の産地や品種のコメより割安になることが多いため、現在よりもいくぶん安く販売されるのではないかとしています。木徳神糧米穀事業本部の今野稔副本部長は「家庭用も業務用もコメが不足しているという声は取引先から多く聞かれているので、備蓄米に期待している。消費者に早く手に取ってもらえるよう供給していきたい」と話していました。
コメの流通を円滑にするために初めて行われる政府の備蓄米の入札が10日から始まりました。入札にはJA全農など複数の業者が参加していて、市場への放出が価格の安定につながるか焦点です。
農林水産省は10日、政府備蓄米の放出に向けた初回入札を開始した。計15万トンを産地や品種などで分類し、それぞれ高値を付けた参加業者から順に落札する仕組み。全国農業協同組合連合会(JA全農)など大手集荷業者が参加したと表明しており、落札価格や十分な量が引き渡されるかどうかが焦点となる。落札されなかった分は、12日までに再び入札にかける。
入札が行われた政府の備蓄米について、大手牛丼チェーン各社では、商品の安定供給に向けて、備蓄米の活用を検討する意向を示しています。このうち、松屋フーズホールディングスは去年5月から、国産米と外国産米のブレンド米の利用を始め、現在、全国の多くの店舗で提供しています。会社では今後も商品の安定供給を続けるため、備蓄米の活用を検討していきたいとしています。また、吉野家ホールディングスは「備蓄米の放出は歓迎していて、商流次第ではあるが、品質や価格のバランスを見て検討や判断をしたい」としているほか、ゼンショーホールディングスは「選択肢の1つとして検討していて、品質に合う銘柄が出てくれば、採用を検討したい」としています。
政府が放出する備蓄米はどのように販売されるのか。コメの大手卸売各社は家庭向けについて複数の品種を混ぜたブレンド米として販売することにしています。政府が放出する備蓄米は、落札した集荷業者から卸売業者に販売され、今月下旬以降、スーパーの店頭などに並ぶ見通しです。コメをスーパーなどに出荷する大手卸売各社によりますと、家庭向けについては複数の品種のほか、令和6年産と5年産を混ぜるなどしたブレンド米として販売するということです。
コメの価格高騰が続く中、農林水産省はコメの流通を円滑にする目的では初めて備蓄米21万トンを放出することにしています。初回の入札は15万トンが対象となり、10日午前10時に申し込みが締め切られました。入札の対象となったのは去年とおととしに収穫された「青森県産まっしぐら」や「宮城県産ひとめぼれ」などの銘柄で、一定の条件を満たした集荷業者が参加し、最も高い価格を提示した業者から順に落札します。農林水産省は「入札の結果に影響を及ぼす可能性がある」として、入札が終了するまで参加した業者の数や名称、それに落札価格などの情報は公表しないとしています。NHKのこれまでの取材でJA全農やJA福井県、JA熊本経済連など複数の集荷業者が入札に参加したことが分かっています。落札されなかったコメがある場合には11日も入札が行われる予定です。今回落札された備蓄米がスーパーの店頭などに並ぶのは今月下旬以降になる見通しで、市場への放出がコメの価格の安定につながるかが焦点です。
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