備蓄米の入札は はたしてうまくいったと言えるのか
消費者は、産直市場の利用など直接購入ルートを確保する、定期購入などの年間契約で自家消費量を確保する、無酸素包装で賞味期限がやや長いものを購入し保存期間を伸ばすなど、各家庭でできる工夫から始めることが考えられます。また、政府備蓄米放出は短期的な価格調整策に過ぎず、根本的な解決には「生産量150万トン増(現行比+25%)」が必要との試算があります。持続可能な米政策の実現に向け、消費者・生産者・行政の三位一体の改革が急務です。
コメの高騰が続く中、農林水産省は国が備蓄するコメの運用を見直すことに。慎重な姿勢を貫いてきた備蓄米をどう活用するのか、価格高騰の歯止めとなるのか解説します。
毎日の食卓に欠かせないお米。その価格がいま、大きく上昇していることをご存じでしょうか? 2024年の「令和の米騒動」以来、スーパーでは価格は急騰。おにぎりや弁当の値上げも相次ぎ、家計への影響が広がっています。ついに政府は、これまで緊急時しか市場に出されなかった「備蓄米」を放出する決定を下しました。なぜお米の価格はここまで高騰したのか? 備蓄米放出で状況は改善するのか? そして、私たちの食卓はどう変わるのか? あなたの生活にも直結するお米価格の行方について、詳しく解説します。
今回の備蓄米の放出も、農林水産省が自発的に行ったとは思えない。そうなら、同省はJA農協や自民党農林族の反感を買うからだ。
去年夏のコメ品薄以降、備蓄米の放出をめぐる農林水産省の判断は揺れました。農林水産省によりますと、全国のスーパーで販売されたコメの平均価格は、去年5月ごろには5キロあたり2100円程度で推移していましたが、一部のスーパーなどで品薄となった夏ごろから急激に上昇し、8月には2600円を超えました。コメの品薄を受けて備蓄米の活用を求める声も上がりましたが、農林水産省は慎重な姿勢を示しました。当時の坂本農林水産大臣は新米が本格的に出回ればコメの品薄は順次回復し、価格も一定の水準に落ち着いてくるという見通しを示し、備蓄米の放出について「民間流通が基本のコメの需給や価格に影響を与えるおそれがあり、慎重に考えるべきだ」と述べていました。しかし、その農林水産省の見通しは外れます。コメの品薄は解消された一方、価格は新米の流通以降も上がり続け、5キロあたりの平均価格は、9月には3000円を、10月には3400円を超え、年が明けてからも上昇は続きました。直近の1月27日から2月2日までの1週間では5キロあたり3688円となり、前の週より38円、前の年の同じ時期に比べると1665円、率にして82%、高くなっています。こうした中、農林水産省は1月、それまでの姿勢を一転させ、備蓄米の活用を検討していくことを打ち出しました。備蓄米の放出はこれまで深刻な不作や災害時などに限られてきましたが、農林水産省は1月31日、主食用米の円滑な流通に支障が生じた場合でも実施できるよう指針を見直しました。石破総理大臣も2月4日の閣僚懇談会で物価高への対応をめぐって備蓄米を活用してコメの安定供給を図るよう指示しました。備蓄米の放出をめぐる農林水産省の判断は大きく揺れ、対応の遅さを指摘する声も上がっています。これについて江藤農林水産大臣は2月3日の衆議院予算委員会で「農林水産省は国民に安定的に安心な食料を届けることは大きな責務でこれだけ価格が高騰して物価も高い状況の中で家庭が苦労していることは大いに反省はあります」と述べました。コメの流通の円滑化を目的に政府が備蓄米を放出するのは今回が初めてで価格の動向が焦点となります。
日本のコメの年間消費量は約700万~750万トンとされています。備蓄米100万トンは、消費量の約2ヶ月分に相当し、短期間の供給不足に対応できる保存量とされています。政府は、1993年の大冷害(平成の米騒動)を教訓に備蓄米の適正量を決定しました。この年は記録的な冷夏により、作況指数が74(大凶作)まで低下し、コメの供給が大幅に不足しました。当時、日本は約250万トンの米を緊急輸入しましたが、輸入調整や流通の問題で混乱が発生しました。この経験から、1年間の最低限の安定供給を支えるために100万トン程度の備蓄が必要と判断されました。
集荷業者に備蓄米を販売しても、そのコメは卸売業者を通じてスーパー等に販売される。農林水産省が主張する卸売業者悪玉論に従うと、卸売業者が売り惜しみすれば、備蓄米を放出してもコメの供給量が増えることはない。
農林水産省は24年夏の事態は「米穀の生産量の減少」によるものではないから、備蓄米を放出することは食糧法に違反すると説明していた。今回の放出について、「コメの流通不足を理由とした備蓄米の利用は初めてで、こうした方法が可能かどうかを来週31日に開く(食料・農業・農村政策審議会の)食糧部会で議論する予定である」と説明している(TBS CROSS DIG)。現在の状況は、生産量の減少ではなく卸売業者がコメを抱え込んでいることによる流通量の減少だと言っているようだ。しかし、そうなら食糧部会で了承されたとしても法律違反である。
農林水産省が政府備蓄米の入札結果を公表した。早ければ月内にもスーパーなどの店頭に並び始める見通しだ。備蓄米の入札は、はたしてうまくいったと言えるのか。放出により高騰しているコメの価格は下がるのか。
これまで、備蓄米は「大凶作」や「異常な価格高騰」が発生しない限り放出されることはありませんでした。しかし、2025年1月31日、農水省は「大凶作以外でも備蓄米を放出できる新制度」を発表しました。
日本生活協同組合連合会は、政府による備蓄米放出の方針を受けて、積極的に備蓄米を調達し各地の生協の店舗などで販売する意向を示しています。日本生活協同組合連合会は、各地のJAからコメを仕入れ、関東や関西にあるあわせて14の生協が店舗などで販売しています。きょう、政府が備蓄米21万トンを市場に放出する方針を発表したことについて、農畜産部の高杉康彦部長は、「前向きな動きで、備蓄米を積極的に調達したいと思っている。価格が落ち着くかどうかもあるが、まずは量を確保して、ことしの秋につないでいきたい」と述べ、積極的に備蓄米を調達し、各地の生協の店舗などで販売する意向を示しました。この団体がコメを出荷した生協での去年10月からことし1月までの販売価格の平均は前の年に比べて4割以上上がっていて、ことしの新米が流通するまでに在庫がもつかどうかもわからなくなっているということです。このため、さいたま市にある生協の店舗では、去年6月以降、購入点数を1家族あたり1点に制限しているほか、セールをやらないといった対応をとってきたということです。買い物に訪れた88歳の女性は、「コメが足りなくなった去年の夏に備蓄米を出してくれたらよかったと思う。少し価格は安くなるでしょうが、前と同じようにはならないとあきらめています」と話していました。また67歳の男性は、「コメは主食なので、価格や供給に安定感がほしい。極端に安くなる必要はないが、適正な価格になってほしい」と話していました。
日本の食の安全保障の一環として、政府は「備蓄米制度」を運用しています。この制度は、凶作や供給不足が発生した際に備え、一定量の米を備蓄し、価格の急騰を防ぐことを目的としています。そして、日本政府が100万トンの備蓄米を保管している理由は、「10年に1度の不作(作況指数*92)や2年連続の通常不作(作況指数94)が発生しても国民に安定的に供給できる体制」を維持するためです。この数値は過去の大凶作事例を分析した結果導き出され、1993年の平成米騒動を教訓に1995年に制度化されました。
価格の安定につながるのでしょうか。農林水産省が実施した備蓄米の入札で、JA熊本経済連が1000トンを落札したことが分かりました。
農林水産大臣は記者会見で、「生産者の方々にとっては、やはり備蓄米を出すことになれば、せっかく米価が高いところまで上がってきて、生産コストを賄え、将来に明るい兆しができた。そこで、国が在庫を出すことについては、反発もあるかもしれません」と述べている。
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