午前の為替予想は… 日本のインフレや賃金動向に注目
作成日時 :2025年3月21日8時00分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部 中村勉
ドル円予想レンジ
147.800-149.600円
前日の振り返りとドル円予想
昨日のドル/円は小幅高。アジアタイムには148.10円台まで弱含んだが、NY市場に入ると米新規失業保険申請件数や米2月中古住宅販売件数の好結果を受けて148.96円前後まで上昇した。終値は前日比約15銭ドル高・円安の148.77円前後だった。
本日は日本2月全国消費者物価指数(CPI)や春闘の第2回集計結果が発表される。高騰していた生鮮食品価格などがやや落ち着きを取り戻していることもあり、2月の全国CPIは1月の前年比+4.0%から+3.5%へ伸びが鈍化すると市場は予想している。日銀が重視する生鮮食品を除いたコアCPIは前年比+2.9%の予想だ(1月3.2%)。国内のインフレが予想ほど鈍化していなければ現在7月と予想されている追加利上げ時期の前倒し期待につながることになりそうだ。ただ、19日の日米金融政策会合後の会見で植田総裁やパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、米国の貿易政策などの「不確実性」を理由に追加利上げや追加利下げに慎重な姿勢を示していた。なお、トランプ米政権は4月2日にさらなる関税賦課を予定しており、関税の範囲や各国の対応を巡る不透明感は根強い。ドル/円は147円台後半から149円台前半のレンジ内で方向感を模索することになりそうだ。
今朝 最新のドル/円チャート
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外為どっとコム総合研究所 調査部 研究員
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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ドル円午前の為替予想 日本のインフレや賃金動向に注目 2025
【ニューヨーク=南泰葉】米ミシガン大が10日発表した1月の消費者調査(速報値)によると、長期的な物価見通しを示す5年先の予想インフレ率が3.3%と前月から0.3ポイント上昇し、2008年6月以来およそ16年半ぶりの高水準となった。トランプ次期米大統領の関税強化策で米インフレが再燃するリスクが意識されている。
2025年のドル円相場を見通す上で、はじめに日米金融政策の見方を整理します。米国の金融政策について、弊社は米連邦準備制度理事会(FRB)が2025年3月と9月、2026年3月と9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)において、半年毎に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ずつ4回の利下げを行い、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が3.25%~3.50%に達したところで利下げは終了と考えています。
一方、日本では、賃金の増加や企業の旺盛な設備投資意欲、減税を含む経済対策などにより、国内経済は成長軌道をたどる公算が大きく、また、半年に1回程度の日銀の利上げペースが次第に見通せるようになることで、長期金利に緩やかな上昇圧力が生じると考えています。これらの点を踏まえ、日本の10年国債利回りについて、2025年12月末の着地水準は1.4%と予想しています。
●2025年の日米金融政策は、FRBが3月と9月に利下げし、日銀が1月と7月に利上げ実施とみる。●2025年末の10年国債利回りは米国で4.3%、日本で1.4%を予想、利回り格差は縮小方向。●ドル円は2025年末に153円で着地を予想するが、トランプ政策次第で変動幅は拡大の見込み。
次に、これら日米の金融政策の見通しを踏まえ、10年国債利回りの動きについて考えます。米国では、次期トランプ政権が拡張気味の財政政策を行う可能性が高く、タームプレミアム(年限に応じた上乗せ金利)の上昇が長期金利を押し上げる展開も想定されます。利下げが半年に1回程度であれば、米国の10年国債利回りは総じて高止まりしやすい状況になると思われ、2025年12月末の着地水準は4.3%とみています。
6月28日午前7時50分時点のドル/円のオープン・ポジションは、売り持ち「62%」に対して、買い持ちは「38%」。先週末と比較すると、売り持ちが5ポイント増えている。
ユーロ/円の注文状況は、ドル円よりもあからさまで、売りオーダー「18%」に対して買いオーダーは「82%」と、圧倒的に買いサイドが大きい。
トランプ氏の景気刺激的な政策はドル高要因と考えられますが、過度にドル高・円安が進めば、本邦当局による為替介入の可能性が高まるため、160円を超えるドル高・円安の進行は見込み難いように思われます。なお、前回のトランプ政権ではドル安・円高が進み(図表2)、特に米中の関税引き上げ合戦は、FRBの利下げ(不確実性の高まりによる景気への配慮)と一段のドル安・円高進行の要因になったため、これらは留意すべき点です。
バンカース・トラスト(現ドイツ銀行)とスイス銀行コーポレーション(現UBS)、日本興業銀行で通貨オプションの経験を積む。活発な投機取引で知られたバンカースではアジアの取引時間帯のディーリング責任者として、マーケットメーカーとして積極的なディーリングを行う。スイス銀行と興銀では日本の機関投資家や事業法人にオプション関連商品を幅広くセールスし、バークレイズ銀行などをへて現在にいたる。
また、ドル/円の注文状況は、売りオーダー「33%」に対して、買いオーダーは「67%」で、「下がったら買う」という注文が7割近くを占める。買いオーダーが多いのは、売り持ちポジションの利食いが増えていると考えられる。
日本の金融政策について、弊社は日銀が2025年1月と7月、2026年1月の金融政策決定会合において、半年毎に25bpずつ3回の利上げを行うと予想しています。無担保コール翌日物金利の誘導目標は、2026年1月時点で中立金利(景気を熱しも冷ましもしない名目金利)のレンジ(1.00%~2.50%程度、日銀などの資料による推計)下限に達するため、その後の利上げペースは年1回程度となり、次の利上げは2027年1月とみています。
日米長期金利差が縮小していく過程では、一般にドル安・円高が進みやすいとされます。弊社は2025年12月末のドル円の着地水準について、1ドル=153円と予想していますが(図表1)、2025年は次期トランプ政権がどのような政策を前面に打ち出してくるかによって、また、ここに投機的な動きも加わることで、ドル円相場の変動がかなり大きくなることも想定されます。
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