郵便局長の局舎取得 2年で26局
郵便サービスを利用する私たちは、局長会の利得のために、利用料などの負担が重くなっていく事態をこのまま漫然と見過ごすのか。それが許せないとすれば、選択肢は一つしかない。日本郵政と局長会に改善の兆しがない以上、郵便に頼らない生活への移行を加速させ、決別への備えを急がなければならない。
局長個人が局舎を欲しがる動機は、賃料欲しさではなく、自分で局舎を持つ「自営局舎」を郵便局長会が強力に推進していることが大きい。中には欲しくもないのに、渋々取得する局長も珍しくない。
会社の営業拠点となる不動産物件を社員が取得し、勤め先である会社に貸し出して賃料を得る――。それが日本郵便では特殊な例ではなく、全国各地で常態化しているのだ。
現場の社員と郵便の利用者を愚弄(ぐろう)した今回の振る舞いも、そう指南してくれている。
報道陣に対して堂々と言い切ったのは、日本郵便の坂東秀紀執行役員だ。4月26日、オンラインで開いた記者会見の場である。
朝日新聞の調査では、日本郵便が2018~20年に移転した局舎のうち、少なくとも3割の所有者が21年時点の局長名と一致した。これとは別に、元局長や、局長の家族とみられる所有者の物件もある。新築の戸建て局舎に絞れば割合はもっと高い。
ところが、こうした郵便局長協会の”錬金術”について、担当役員の坂東氏は会見で「そんなに大きくない」とまで言ってかばってみせた。なるほど、協会に流れる10億円も彼らにとってははした金なのか。
だが、日本郵便を中核とする日本郵政は、れっきとした東証一部の上場企業だ。今年10月にも政府の保有株が、一般投資家へと売り出されたばかりだ。民営化前の非常識な慣習に目をつぶることは許されるはずがない。
だが、同じ土地で建て替える新局舎ならまだしも、移転したり開局したりする新規の郵便局舎でも、局長になんとか持たせようという動きや構造が根強く残されている。民営化して14年もたつというのに。
局長協会は一般財団法人で、役員や所在地は各地の地方郵便局長会とほぼ同じ。法人格のない地方郵便局長会に代わり、契約を結んだり不動産を保有したりするのに使われる「サイフ」役だ。各地でビルを保有して郵便局を入居させたり、一部では1棟マンション投資にも乗り出したりするなど、資金運用には余念がない。
折しも日本郵便は、郵便や宅配の利用料金を続々と値上げしまくっている時期にある。
内部資料によれば、郵便局長やその家族、元局長らが保有する局舎は2019年4月時点で1万局超。局数ベースで単純計算すれば、400億円規模が郵政社員やOBの懐に流れていることになる。
日本郵便が直営する約2万の郵便局のうち、物件を借りている局舎は約1万5000局あり、賃料総額は600億円近くに上る。
全国に約1万9000ある旧特定郵便局は、お金のない明治政府に代わり、地方の名士が自宅などを無償提供してつくったのが始まりだ。局舎が局長職とともに親から子、さらに孫らへと“世襲”で引き継がれた例も多い。
土地の所有権を調べると、現役局長が保有する局舎用地の5割超が、局舎が移転する前の直近2年以内に取得されたものだった。残りの4割超の土地の多くは、局長が地主から借りているとみられる。
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