
◆豪ドル、RBAの金融政策に注目
◆豪ドル、豪政府はインフレ目標への到達予想を前倒し
◆ZAR、米相互関税が下押しリスクに
予想レンジ
豪ドル円 92.00-97.00円
南ア・ランド円 7.90-8.40円
3月31日週の展望
豪ドルは神経質な動きが予想される。注目は3月31日-4月1日の日程で開催される豪準備銀行(RBA)の金融政策理事会。市場では現行の4.10%で据え置きとの予想が中心で、声明文でインフレ見通しや金融政策に対する見解に変化が見られるかが焦点となりそうだ。
今週に公表された物価関連データはRBAの追加緩和への思惑を高める内容だった。25日には豪政府が物価高対策を含めた予算案を発表。予算案の中でコアインフレ率は今年の7月までにRBAのインフレ目標(2-3%)に到達するとの予測が示され、以前の予測から6カ月ほど目標内への到達時期が前倒しされた。また、2月の豪消費者物価指数・コア指数はいずれも市場予想を下回り、こちらもインフレ鈍化を意識させる結果となった。
もっとも、市場では次回会合でRBAが追加利下げに動くとの予想は少数で、次回の利下げは早くても5月以降の会合になるとの見方が優勢だ。CPIについてはRBAが従来から単月のデータよりも四半期のデータを重要視しており、4月30日に公表が予定されている1-3月期CPIを待つ必要があるだろう。また、インフレ目標への到達についても、ブロックRBA総裁は「再度の利下げを検討する前にインフレ率が目標範囲内に持続的にとどまっている兆候を確認したい」「目標範囲内に復帰するだけでは十分でなく、持続的にそこにいられると思わなければならない」と過去に言及しており、総じてRBAはこれまで追加緩和に対して慎重な姿勢を示してきた経緯がある。
今回の声明文ではこうした中銀の姿勢に変化が生じるかがポイント。RBAの追加利下げ観測が高まると豪ドルにも売り圧力がかかる可能性が高い。その他にも来週は4月2日に米政権の相互関税が発表される予定となっており、豪ドルは重要イベントをにらんで神経質な動きとならざるを得ないだろう。
南アフリカ・ランド(ZAR)は戻りの鈍い動きが予想される。来週は2月貿易収支の発表が控えているが、ZARも基本的には米関税政策に振らされる可能性が高いだろう。市場全般のリスク志向の行方に加えて、国ごとに異なるとされる米相互関税の詳細にも注目しておきたい。もっとも、トランプ米大統領の就任以来、南アに対する米資金拠出の打ち切り、南ア国内の土地政策に関する対立、駐米南ア大使の国外追放と、米国・南ア間の関係は悪化の一途をたどっている。こうした状況下で南アに対する相互関税が穏やかなものになるとは考えにくく、ZARの下押し材料となる可能性が高いだろう。
3月24日週の回顧
豪ドルは対円で強含み。ドル円が151円台まで上値を伸ばしたことに伴い、95円台半ばまで買いが入った。ただ、対ドルでは0.6300ドルを挟んだ水準で方向感を欠いた動きとなった。ZARも対円では8.2円台の限られたレンジ内ではあったが底堅く推移した一方、対ドルでは18ZAR台前半でのもみ合いに終始した。(了)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
見通し 週間為替展望 豪ドル
ボストン連銀のコリンズ総裁はボストンで講演を行い、「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」と、これまでのFOMCメンバーの発言よりも、より関税とインフレとの関係に踏み込んだ発言を行いました。その上でコリンズ氏は「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」と話しています。また、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」と続けていました。これまで多くのメンバーが「不確実性」という言葉を使い、その影響について言及してきましたが、今回コリンズ総裁は「インフレは不可避」といった表現をしています。ドル円がおよそ3週間ぶりに151円台に乗せたことと無関係ではありません。
豪ドル/円の為替相場は引き続き米国の通商政策などの国外要因の影響を受ける場面も予想されるものの、相対的に堅調な経済成長率や高水準の貿易黒字、所得税減税などの景気刺激策の実現により、豪ドルは再評価される可能性があるものと考えられます。オーストラリアでは、実質GDP成長率が2019年2.1%、2020年2.8%、2021年2.8%と、米国や日本と比べても相対的に高い経済成長が予測されており、今後も緩やかな成長が続く見込みです(IMFによる2019年4月公表値)。政策金利は2019年7月に2ヵ月連続となる利下げにより過去最低の1.00%へ引き下げとなりました。市場では2019年末までにあと1回の追加利下げが予想されていますが、現状の豪ドル相場には概ね織り込まれていると考えられます。
むしろ、RBAの利下げ決定によって豪州の金融政策を巡る不透明感が払しょくされ、金融緩和による先行きの景気下支え効果への注目が高まれば、豪ドル相場の見直しに繋がる可能性があると考えられます。
2019年7月2日時点の先物市場が織り込む2019年末の政策金利予想では、もう1回の利下げが実施される確率が38.3%とメインシナリオとして見込まれています。RBAの利下げ決定当日の豪ドル相場の反応は、概ね横ばいでの推移となりました。利下げ決定は大方の市場参加者の予想通りの結果であったことから、実際のRBAの利下げ決定は豪ドル相場にとっての悪材料とは捉えられていない模様です。
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