中東に位置するトルコの通貨リラを取り巻く環境を分析し、トルコリラの今後の値動きを予想した。
執筆:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也 X(Twitter)
米国のトランプ政権が現地時間2日に発表した「相互関税」のトルコに対する税率は基本の10%で、日本の24%や欧州連合(EU)の20%のような上乗せ措置はなかった。トランプ政権は3日付でトルコも含むすべての国に一律25%の「自動車関税」も発動している。
なお、トルコの対米輸出はデータが参照できる2022年のもので約165億ドルと輸出総額の6.5%にとどまる。また、トルコ最大の輸出品である自動車・部品は輸出先として欧州向けが多くを占める。これらを踏まえると、米関税がトルコ経済に及ぼす直接的な影響はそれほど大きくないと考えられる(もっとも、欧州の完成車メーカーによる対米輸出が減少すれば何らかの影響を受けるだろう)。
3日15時時点のトルコリラ/円は前日終値から約1.4%下落しているが、これはドル/円の下落につれた面が強く、対ドルではほぼ横ばいで推移している。
財務省 トルコ基礎データ
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/turkey/data.html
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株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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トルコリラの焦点 トランプ関税発動 トルコへの影響は
直近まで仲が悪かったサウジアラビアに加え、UAE(アラブ首長国連邦)とも外交関係を回復しようとしているのもそのためで、オイルマネーをトルコに集めようとしています。
今週(12月5日~)のトルコリラは、対米ドルで先週(11月28日~)と変わらず、米ドル/トルコリラは18.60リラ前後で推移していますが、対円では7.20円まで下がってから再び7.35円程度まで戻っています。
PPIが低下に転じたことは今後CPIも下がることを意味しています。いずれにせよベース効果でインフレの数字が下がってきますが、トルコの景気減速もインフレ減速をもたらすでしょう。
TUIK(トルコ統計局)は7-9月期のGDP統計を発表しました。第3四半期のGDPは前年同期比で3.9%成長となりましたが、前期比では0.1%低下しました。実に9四半期ぶりのGDPの縮小です。
インフレの勢いが止まりそうなのはトルコリラにとって朗報ですが、10月にトルコの貿易収支が大幅に悪化しました。10月の貿易赤字は前年同月比で421.7%増加し、15.1億ドルから78.8億ドルに大幅に拡大しましたが、これはGDPの統計と同様にユーロ圏の不調による輸出の伸びの鈍化が原因です。
先週(12月5日~)から、ソイル内務大臣を含むトルコの閣僚がUAEを訪問して、経済協力を要請しています。エルドアン大統領は経済危機を選挙まで回避しようと必死です。
今年(2022年)は年初来で合計910億ドルの貿易赤字ですが、記録的な水準です。貿易赤字の拡大は本来、トルコリラの売り圧力を増加させ、対米ドル・対円でトルコリラの下落をもたらすものですが、エルドアン政権はなんとしても選挙まで為替の水準を維持したいとの考えです。
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