旧BIGMOTOR 再建へ社内の苦闘
JWPは、主にガバナンス(企業統治)や内部統制の立て直しを担う。ビッグモーターは、顧客の車体をわざと傷つけ、自動車保険金を水増し請求するという衝撃的な不正で世間の耳目を集め、自動車保険全体の信頼が大きく損なわれた。JWPは地方銀行の融資先企業の再建に関わるなど金融界との関係も深い。金融庁はその手腕に期待しているようだ。
今回のテーマは、「独占!ビッグモーター その後」。 保険金を水増しして不正に請求していただけでなく、除草剤をまいて街路樹を枯らすなど、数々の不祥事が発覚した「ビッグモーター」。赤字が続き、経営危機に陥った会社を買収し、再建に名乗りをあげたのが、大手商社の「伊藤忠商事」だ。果たして伊藤忠は、不正を起こした企業の体質を変えることができるのか…。再建に奔走する商社マンの苦闘に密着した。
この再建計画による契約ではビッグモーターの主要な事業を継承するために新会社を設立するほか、主要な事業を切り出した後の旧会社は残し、訴訟への対応や債務の返済などに専念。今後は2社に分割した体制で進めていくとしています。
伊藤忠商事は3月6日、経営危機にある中古車販売大手ビッグモーター(東京都多摩市)と事業再建に向けた契約を締結したと発表した。様々な企業が再建スポンサーの候補として浮上しては消える中で、火中の栗を拾った。伊藤忠幹部は、「極めて低い評価を受けている現状を、うまく変革できるかどうか。目利きをした結果だ」と語る。
伊藤忠商事の石井敬太社長は、ビッグモーターの買収に名乗りをあげた時点で、自社だけでなく取引先や社員の利益になり、社会課題の解決にも貢献していく、伊藤忠の経営理念「三方よし」を挙げたうえで、「WECARSには、この理念が根付かないと当社のポリシーに反する」と発言しています。WECARSでビッグモーターの企業風土を変えることができるかが再建の鍵を握っているのです。
2024年5月、伊藤忠商事などはビッグモーターの事業を引き継ぎ、「ウィーカーズ」を設立。看板は掛け替えたものの、250の営業拠点や建物は同じ。ただ、ビッグモーターの創業家や旧経営陣は、経営に一切関与せず、舵取りは伊藤忠側から送り込まれた人たちが手がけることに。再建の中心に立っているのが、ウィーカーズの経営企画部長、合六渉さん。ビッグモーター問題が起きた際、伊藤忠の中で買収に動こうと、社内で稟議書を書くなどして、買収に向けて強く動いていてきた人物でもある。合六さんらウィーカーズの新経営陣はまず、ビッグモーターの企業風土を分析。社員の意識改革・コンプライアンス改革に着手することに。ビッグモーターの営業力の強さの源泉の一つが給与水準の高さ。年収3000万円以上稼ぐ社員も珍しくなかった。その裏で、保険金不正請求事件の舞台となった「板金・塗装」の部署では、事故車両1台当たりの修理による収益ノルマが14万円前後と厳しいプレッシャーが・・・。現場ではゴルフボールを当てて、修理箇所を水増しして請求していた事案などが起きていたのだ。営業力の強さを維持しつつ、給与システムを再構築できるのか。企業風土の改革、その舞台裏に迫る!
今回の再建では、新会社がビッグモーターの主要な事業を引き継ぐ「会社分割方式(新設分割)」を採用する。新会社は4月後半に設立する見通しで、ビッグモーターからの社名変更も検討している。会社分割は、経営危機に陥った企業の再建における王道的な手法だ。その最大の効果は、「過去との決別」(伊藤忠)。ビッグモーター創業家は、新会社の経営に関与しないことが決まっている。
伊藤忠商事は21日の取締役会で、自動車保険金の不正請求問題を起こしたビッグモーターの再建を支援する方針を決めた。子会社の伊藤忠エネクス、企業再生ファンドの「ジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)」と連携し、受け皿となる新会社を設立する方向だ。伊藤忠は新会社に最大200億円を出資することを検討する。
深刻な不正や経営危機を招いた経営陣を再建プロセスから遠ざけ、ビジネスに必要な資産や従業員との雇用関係を新たな受け皿に移すことは、企業再生に不可欠な第一歩だ。ビッグモーター関係者は「創業家は当初、会社の売却を渋っていたが、最終的にはこれしかないと納得した」と明かす。
伊藤忠など3社は昨年11月、ビッグモーターとの独占交渉権を得て、再建支援に向けた資産査定を進めていた。3社は、3月中の正式契約を目指し、ビッグモーター側と詰めの交渉を行っており、4月にも新たな体制を発足させる考えだ。
財務体質だけでなく従業員の意識改革も重要視されており、今後は従業員の信頼回復が再建に向かう鍵となります。
2024年5月1日になり、伊藤忠グループ・伊藤忠エネクスとJWPはビッグモーターの事業継承した新会社「WECARS(ウィーカーズ)」を設立しました。ここで体制の一新を実現し、ビッグモーターの事業再生が始まったのです。そこで本章では、ビッグモーターの新しい体制について再建計画の狙いとともに解説します。
伊藤忠商事は、ビッグモーターに対して投資を行うにあたっての詳細な資産査定の独占調査を終えて、事業再建は可能であるので取り組むべきと判断しました。そこで2023年3月6日には、伊藤忠グループの伊藤忠エネクスと企業ファンドのJWPはビッグモーターの事業再建契約に向けた契約を締結。伊藤忠商事グループとJWPは、新会社を設立し、事業再生を行うと発表したのです。
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