執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年4月4日 13時17分
植田総裁や米インフレ指標がリスク回避地合いを落ち着かせるか注視
米ドル/円は145円台前半へ下落
米相互関税が「全ての国を対象とする」との思惑から、週明けはギャップダウンして始まり、米ドル/円は148.702円まで売りが先行しました。その後、米国の相互関税発表直後は想定内との思いから米ドル/円は瞬間的に150.471円まで上値を伸ばしましたが、詳細が明らかになると今度は想定以上に厳しめとの認識から、リスクオフの円買いが優勢に。また、米ISM非製造業の悪化も加わり、米ドル/円は145.161円まで下げ幅を広げました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
米関税上乗せ分、9日に発効
米国は貿易相手国に対し、全ての輸入品に一律10%の基本関税を課した上で、各国の関税や非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せするとしています。ラトニック米商務長官は「トランプ大統領が関税で手加減するのはあり得ない」としており、米国の本気度が窺えます。また、カナダは「USMCAに準拠していない米国からの輸入車すべてに25%の関税を課す」としたほか、中国政府は「断固として対抗措置を講じる」との声明を出すなど、貿易戦争は激化の様相です。9日には相互関税の上乗せ分の賦課が始まりますが、一部の国・地域との貿易協議進展はあっても、多くはそのまま施行されると思われ、成長・インフレに対するリスクは残ったままになりそうで、こうした環境は円の下値を支えると、考えます。
ただし、為替市場で円高が進んだほか、経済成長に対する不確実性から日銀の6月追加利上げ織り込みが2割程度まで下げるなど、早期利上げ観測が後退する中、信託大会で挨拶する植田日銀総裁が追加利上げ期待をさらに後退させることが出来れば、円の上昇幅を抑制する可能性はありそうです。また、米消費者物価指数がスタグフレーションを和らげる内容となるかにも注目したいです。
底打ち感見られず、戻り売り(テクニカル分析)
米ドル/円は日足一目均衡表の雲に迫っていたものの、そこから上値を伸ばしきれずに雲から大きく下放れする格好になっています。下押し幅が広がった分、自律反騰が見られても良いように感じますが、まだ底打ち感は感じられません。145.00円を割り込むようなら、143.00円割れを目指して上値を切り下げそうです。仮に3日安値の145.161円を短期的な下値としても、3月28日の高値151.207円からの下落幅の50%戻しとなる148.18円レベルでは頭を抑えられるのではないかと、考えています。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ(TradingViewチャート)」
予想レンジ:USD/JPY:143.000-148.000
4/7 週のイベント:
一言コメント
関税が上乗せされた国・地域を見ると、中国叩きを感じさせます。であるなら、米国が日本の関税見直しに応じるには、「経済面での中国依存度を低下させるような提案」が必要になるのではないかと、秘かに考えています。
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来週の為替予想 米ドル 円
3/17の93円91銭を安値に中国当局による景気対策への期待感とともに上海株が3ヵ月ぶりの高値を更新。さらに、香港ハンセン指数も3年1ヵ月ぶりの高値を更新したリスク選好とともに95円35銭まで上昇した流れを続け、3/18には豪中銀総裁、副総裁による「一連の利下げは必要なし」との見解を受け95円75銭へ上昇。ただ、3/19の日銀金融政策会合で5月の追加利上げの可能性を示唆したこと、3/19-20のFOMCやスイス中銀/英中銀/スウェーデン中銀が揃って米政権の関税政策による不透明感に懸念を示したこと、3/20の豪2月雇用統計の就業者数の下振れを受けて3/21に93円16銭へ下落し93円63銭で取引を終えました。
3/20の欧州委員会で米国による鉄鋼/アルミへの関税に対する報復関税を4/2から4月中旬への実施に延長するなど米国との協議への期待をのぞかせながらも警戒感や不透明感が残る中、3/24-25発表のドイツやユーロ圏3月製造業/サービス業PMIやドイツ3月IFO景況指数がトランプ政権の関税策に対する警戒を示す結果になるか注目されます。また、3/24にサウジで米露実務者及び米国とウクライナによるウクライナ和平に向けた協議が行われるものの、停戦進展は容易ではないと見られるほか、EUのウクライナ支援についてハンガリーが難色を示すなど一枚岩ではないこと、欧米間で支援に距離があることから依然不透明な情勢を継続。加えて3/25に召集されるドイツ議会で連立政権発足がスムーズに進むか注目されます。そのため、ユーロドルは日足・転換線(1.0876ドル)を上値抵抗線として200日移動平均線や基準線(1.0727ドル/1.0657ドル)を目指す下押し圧力が高まるか、ユーロ円も200日移動平均線や転換線(162円74銭/162円12銭)を高値に雲の上限(160円23銭)を下回る可能性に注意が必要です。
2027年9月のドル円予想。当月始値 160.56、最低 153.40、当月最高 160.56。平均 157.57。月末 155.74。変更 -3.0%。
3/17発表の米2月小売売上高が市場予想を下回り148円31銭へ下落後、米ロ首脳電話会談への期待や3/18の米2月住宅着工件数の堅調を受けて149円93銭へ上昇。ただ、150円00銭を前に伸び悩み、NYダウやナスダックの下げ幅拡大や米露首脳会談で目立った成果もなく149円台前半へ反落。また、現状維持を決めた3/19の日銀政策決定会合後の植田総裁が5月の利上げを明確に否定しなかったことから150円02銭から149円15銭へ反落。しかし、FOMCの結果発表を控え米長期金利の上昇を背景に150円15銭へ反発。FOMCも据え置きを決めたものの、パウエル議長が世界経済の不確実性に言及し、米長期金利の低下とともに148円61銭へ急落した流れを受け3/20に148円18銭へ下落。その後の米新規失業保険申請件数の改善などを好感し148円96銭へ、さらに、3/21のTOPIXが7連騰したリスク選好を好感し149円66銭へ上伸。それでも週末を控えた持ち高調整に押され148円61銭へ反落。一方、トランプ大統領が「相互関税」免除に柔軟性を示したことを好感し149円36銭へ反発し149円31銭で取引を終えました。
本レポートでは、最新のAI技術を活用し、トランプ政権下でのドル円相場の行方を分析する。具体的には、経済指標、金融政策、地政学的リスクなど、様々な要因を考慮しながら、複数のシナリオにもとづきドル円相場を予測する。そしてこの分析を通じて、今後の為替動向に対する新たな知見を得ることを試みる。
2026年4月のドル円見通し。当月始値 137.39、最低 134.95、当月最高 139.06。平均 137.10。月末 137.00。変更 -0.3%。
2025年12月のドル円見通し。当月始値 144.79、最低 140.13、当月最高 144.79。平均 142.99。月末 142.26。変更 -1.7%。
最新のドル円為替レート 146.94円。日の範囲の 144.60 - 146.52円。前日 145.93円。前日比 +0.69%。
2/24の英3月製造業/サービス業PMIのほか、3/26には2月CPIに続き3/28発表の2月小売売上高や10-12月期GDP改定値を受けて市場が見込む年内2回の利下げ観測が修正されるか注目されます。こうした中でポンドドルは3/3以降から続いた日足・転換線(1.2941ドル)を下回ったまま3/21の取引を終えており、この水準を回復し3/20の1.3015ドルを上回る水準へ反発するか、或いは転換線を上値抵抗線として200日移動平均線や基準線(1.2798ドル/1.2780ドル)を目指す展開となるか注目されます。一方、ポンド円は先週3/17に日足・雲の上限(193円00銭)を上抜けたものの、週末にかけて再びこの水準を下回ったまま取引を終えたことから再度、雲の上限を下値支持線として3/18の194円91銭を上抜け、節目の195円台を回復するか、あるいは日足・基準線(191円29銭)を下抜け、雲の下限(190円48銭)を目指して下落基調に転じるか、対ドルでの動向に加え、3/28発表の東京都区部3月CPIや先週の日銀金融政策決定会合の『主な意見』を受けたドル円の反応と合わせて注目されます。
最後に、AIに「基本シナリオ、急激な円高シナリオ、超円安シナリオについて確率を予測してください」と指示したところ、図表4の分析が示された。基本シナリオが65%と最も高い発生確率を示している。急激な円高シナリオの発生確率は20%と算出された。このシナリオでは、地政学的ショックやグローバル金融危機、ドル信認の急激な低下といった要因により、政権移行期に突発的で急激な変動が発生し、その後も円高基調が継続すると予測されている。超円安シナリオの発生確率は15%と算出された。このシナリオでは、日本経済の構造的悪化や国際金融秩序の崩壊、制御不能なパニック売りを背景に極端な円売り圧力が発生し、政権移行期以降も異常な円安が加速する可能性が指摘されている。
2028年11月のドル円予想。当月始値 174.32、最低 174.32、当月最高 181.39。平均 177.19。月末 178.71。変更 2.5%。
通貨取引には、様々な要因が複雑に絡みあっています。各国ごとの数値を比較し、その通貨に影響を与えているとされる、通貨以外の別の要因に目を向ける必要があります。過去30年間のドル対円相場の動きほど、複雑なものはありませ ん。
円安の進行は輸出関連企業の収益改善につながり、特に自動車・電機・機械などの製造業では円換算での売上増加が期待される。一方で、輸入原材料に依存する製造業では、円安によるコスト上昇が収益を圧迫する可能性が高い。
2028年9月のドル円予想。当月始値 172.84、最低 172.84、当月最高 178.15。平均 174.84。月末 175.52。変更 1.6%。
2027年8月のドル円見通し。当月始値 161.81、最低 158.15、当月最高 162.97。平均 160.87。月末 160.56。変更 -0.8%。
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