クロマグロを闇売り 漁師の訴え
国際的な管理の対象となっているクロマグロは、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)が資源評価に基づいて漁獲可能量(TAC)を決定し、各国に配分している。水産庁によると、青森県の今漁期年(2021年4月~22年3月)の漁獲枠は、大型魚(30キロ以上)で合計543トン。このうち大間漁協には、半分近い253トンが割り当てられている。
漁師「生活のために」クロマグロ闇売り 「簡単に言えばご飯を食べるため。マグロで儲けようとしてやったのではない」
「簡単に言えばご飯を食べるため。マグロで儲けようとしてやったのではない」 2024年9月、気仙沼海上保安署に書類送検された宮城県気仙沼市の男性漁師(75)。 書類送検後、自宅で取材に応じた男性は、カメラの前で事件の動機を語った。
クロマグロは資源保護のため国ごとに漁獲枠が定められ、漁業者は国などに漁獲量を報告する義務がある。 男性漁師は未報告分のクロマグロを気仙沼市内の水産会社に販売し、利益を得ていたという。
大間のマグロの場合、初競りのご祝儀相場の印象が強いが、平時の東京・豊洲市場(江東区)の競り値はキロ5000~6000円ほど。150キロものでも1本100万円に遠く及ばない。大間の漁獲枠全体の253トンを換算しても15億円ほどで、卸や漁協の手数料、船の燃料代など経費を差し引けば、漁業者一人当たりの手取りは決して大きくない。しかも、大型マグロが取れるのは冬場の3カ月に限られ、体力勝負でありながら漁師の高齢化も進んでいる。
WCPFCは21年12月、22年度から24年度までの大型クロマグロの漁獲枠を、21年比15%増とすることを決定したばかり。増枠が認められたのは初めてで、資源回復が進んでいると評価されたわけだが、資源管理の枠組みをないがしろにした漁獲隠しは、国際的な批判を免れないだろう。
「マグロをとらなかったら生活ができないくらい、ここ数年で海がどんどん変わってきている」 15歳から漁に出ていたという男性漁師。 今回の事件の背景に「海の環境の変化」があったと明かした。 「北の方に行っていた魚が水温の低下とともに南下していく。温かい水を追いかけて。それが今、全然とれない」 もともと男性はマグロ専門の漁師ではなく「流し網漁」と呼ばれる漁法で、網に絡みついた不特定多数の魚をとってきた。 ところが近年、これまで通り魚がとれなくなり、代わりに“大量のマグロ”が網にかかるようになったという。 「海一面マグロだらけだ。海一面マグロだらけなことによって、今までとれていたものが変わった。要するに海が変わってきている。この土地にこの年まで暮らしていると、海の変化って分かる」
起訴状などによると、男性漁師は2023年8月から24年5月までの間、北海道や青森県、宮城県の沖合で漁獲したクロマグロの量を国に報告しなかった「漁業法違反」の罪に問われていた。 計17回の漁でクロマグロ約9.5トンの漁獲量を国に報告しなかったとされる。
男性漁師は、さらに続けてこう語る。 「国は『マグロが網にかかったら移動しなさい』『また移動して網にかかったらやめなさい』と言う。月に数回しか漁に出られないような時、そんなこと言ったら漁師は何で食っていく?国はもっともっと力を入れてやってもらわないと、沿岸の漁師の人、みんな死ぬぞ。海、まるっきり変わっているんだから」
こうした厳しい現実が漁獲隠しを生んだと考えられるが、さらにコロナ禍で高級クロマグロを扱う料理店などの仕入れ量も激減。それが焦りにつながり、より大胆に不正に手を染めてしまった可能性があるというのだ。
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最高級とされる青森県大間産クロマグロの「漁獲隠し」が発覚した。政府関係者によると2021年11月、10トン以上のマグロが、漁協への報告なしに出荷されていた。しかも、今回判明した無報告分は「氷山の一角ではないか」(政府関係者)という。
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