
本日のロンドン為替市場では、先週末から底堅い動きを見せているポンドドルの動きに注目か。11日に1.30ドルを回復したポンドドルはそのまま1.31ドル台まで上昇し、週明けには1.32ドル台乗せにも成功。昨日は1.32ドル半ばまで上値を伸ばし、本日も上げ幅を広げている。
「4月のポンドドルは堅調」という季節的な(またはアノマリー的な)こともあるのだろうが、11日に発表された英経済指標が強かったこともポンド上昇のきっかけとなった。2月国内総生産(GDP)は前月比+0.5%と予想を0.4ポイント上回り、同月鉱工業生産は前年比+0.1%と予想マイナス2%超から大きく上振れた。
本日は欧州早朝(日本時間15時)に3月英インフレ指標が発表予定。消費者物価指数(CPI)は前年比総合が+2.7%/コアは+3.4%と、どちらも前回から0.1ポイント減速が予想されている。英中銀が注視するサービス部門CPIも前回の前年比+5.0%から下振れる見込みだ。来月の英中銀金融政策委員会(MPC)前では最後の重要インフレ指標であり、2カ月連続の鈍化となれば、次回MPCに対する「0.25%利下げ織り込み度」を更に高めることになるだろう。CPIの内容次第では、年末にかけての利下げペースへの思惑も変わってきそうだ。
英インフレの減速幅が予想の範囲内に留まった場合、ポンドドルの下押しは限定されるか。足もとでは昨年10月以来の1.33ドル台が視野に入った位置におり、上値余地をどの程度まで確かめにいくかを見極めることになる。
ほか、ユーロ圏からも3月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)が発表されるが、こちらは改定値。速報値の前年比総合+2.2%/コア+2.4%に沿った結果が予想されており、こちらの相場インパクトは小さそうだ。
昨日は「米国と欧州連合(EU)の関税を巡る交渉はほとんど進展なし」との報道でユーロ売りが加速した。ただし本日アジア市場で持ち直しているところを見ると、どの国・地域が対象であっても、米国を巡る貿易摩擦の激化はドル安ということか。トランプ関税の関連報道には気を付けながら、そのあたりを見定めたい。
想定レンジ上限
・ポンドドル、2024年10月2日高値1.3305ドルを超えると同月1日高値1.3389ドル
・ユーロドル、14日高値1.1425ドル
想定レンジ下限
・ポンドドル、15日安値1.3164ドル
・ユーロドル、15日安値1.1264ドル
(小針)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
また豪ドルは中国経済の見通し不安が値下がり要因としてくすぶる
また、利下げに慎重なのは、オーストラリア準備銀行(RBA)も同じだ。RBAは2023年11月8日に政策金利を4.35%まで引き上げてから、9会合連続で金融政策を維持。オーストラリアの2024年10月の物価上昇率は、変動率が大きい品目を除外した刈り込み平均で前年同月比3.5%で、英国同様、物価上昇鎮静化が進んでいるとはいえない。しかしこのところは中国経済の見通しへの不安がオーストラリア経済を弱くする要因として意識されてきた。金融市場ではRBAが2025年2月の理事会で利下げする確率が70%程度あるとみられており、短期的には豪ドル安に動きやすい状況といえそうだ。
2024年のFX市場は秋以降にドルの強さが際立つ展開となった。9月末を基準として考えると、ユーロやポンド、豪ドル、円はいずれもドルに対して5-9%下落。アメリカ経済の底堅さがドル高を引き起こしている。こうした中、2025年の見通しをめぐっては、欧州中央銀行(ECB)の利下げ路線が鮮明になっているユーロの下落がみこまれる一方、イギリスの物価上昇の根強さから、ポンドは底堅さが感じられる可能性がありそうだ。また豪ドルは中国経済の見通し不安が値下がり要因としてくすぶる。こうした中、ドル円相場は日本政府の為替介入への警戒もあって膠着することが考えられるが、日本銀行の利上げが近づけば円高が急進する可能性も拭えない。
こうした中、2025年のドル円相場(USD/JPY)は米国経済の底堅さによる円安圧力と日本政府による為替介入への警戒が拮抗する展開が想定される。ただ、日銀が利上げを見据えている円は、ユーロやポンド、豪ドルと比べて強くなる可能性もありそうだ。日銀の植田和男総裁は19日の金融政策決定会合後の記者会見で利上げ姿勢を後退させつつも、経済や物価が見通しに沿って進展すれば利上げするとの姿勢自体は崩していない。
ブルームバーグによると、ユーロ、ポンド、豪ドル、円の4通貨の対ドルレートの9月末から12月25日終値にかけての騰落率は、ユーロドル(EUR/USD)が5.97%のユーロ安、ポンドドル(GBP/USD)が5.46%のポンド安、豪ドルドル(AUD/USD)が9.36%の豪ドル安、円が8.71%の円安となった。このところのFX市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が18日に9月から3回連続の利下げを決めつつ、2025年の利下げ回数を2回に抑えるとの見通しを発表したことが意識されており、今後も主要通貨の中でドルの強さが目立ちそうだ。
ただ、各通貨の値動きの見通しには濃淡も見込まれる。特にECBの利下げ見通しがはっきりしているユーロは、他通貨と比べて安くなりやすい可能性がありそうだ。ECBはFRBに先駆ける形で6月6日に4年9か月ぶりの利下げに踏み切り、その後も3度の利下げを実施。ブルームバーグによると、金融市場ではECBが2025年6月までの4回の理事会すべてで利下げするとみられており、FRBの慎重姿勢とは対照的な動きが見込まれている。ユーロ圏の11月の消費者物価指数(CPI)の伸び率は、総合指数で前年同月比2.2%、食品、エネルギー、酒類、タバコを除いたコア指数で2.7%となっており、ECBは2025年の物価上昇率は2.1%まで鎮静化するとの見通しを示している。
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