日産取締役 仏ルノー会長ら退任へ
ゴーン元会長は日産の現経営陣について「ビジョンもなければ業務効率に向けた知識もない」と批判。日産は、ゴーン氏が同社の社長CEOを退任した2017年当時の時価総額で4兆円程度あったが、直近は一時、1.2兆円台まで減少した。株価低迷について「企業価値の75%は失われたと捉えている」と語った。
みずほ銀行はホンダとの再交渉を求めており、社外取締役は内田氏に対し、ホンダとの経営統合が進まなかった責任や不十分なリストラ策を追及しているようだ。スナール氏もホンダや鴻海との協業が日産の株価を押し上げる好材料と見ており、内田氏の退任に賛同する意向を示している。
「トップも含め、人事が大きく変わる時期に差し掛かっている」と、ある日産関係者は語る。3月6日に予定される指名委員会でトップ候補や人材育成について協議され、3月中旬の取締役会で決定される予定だ。次期トップとしては、ジェレミー・パパン最高財務責任者(CFO)の内部昇格案が浮上している。ホンダが再交渉に応じた場合、パパン氏が交渉を主導する可能性が高い。
[東京 17日 ロイター] - 日産自動車は、仏ルノーのジャンドミニク・スナール会長とピエール・フルーリォ筆頭独立社外取締役が日産の取締役を退任すると発表した。6月に開く定時株主総会後に退く。ルノーの経営陣を兼務する日産の取締役はいなくなるが、新任取締役として株主総会に提案する2人はルノーが指名した。1人は仏自動車部品メーカーのフォルビアで社外取締役を務めるヴァレリー・ランドン氏。もう1人はナティクシス アセット&ウェルスマネジメントでグローバル最高経営責任者(CEO)を務めるティモシー・ライアン氏。 スナール氏は2019年4月に日産の取締役に就任。現在は日産の取締役会副議長を務めている。日産とルノーは3月末、相互出資の最低保有比率を15%から10%に引き下げることで合意した。
日産が27日夕に発表した執行役には、現職の内田社長ら5人のみが名を連ね、グプタCOOの後任とみられるような新たな人名はなかった。
日産の指名委員会は5人の取締役で構成されている。委員長でソニー(現ソニーグループ)出身のアンドリュー・ハウス氏、ENEOSホールディングス名誉顧問の木村康氏、株主である仏ルノー会長のジャンドミニク・スナール氏、元レーシングドライバーの井原慶子氏、みずほ信託銀行出身の永井素夫氏が名を連ねる。
日産の業績不振の原因として、ハイブリッド車(HV)の出遅れを指摘されることが多い。だが、ゴーン元会長は「HV技術ではトヨタ(自動車)やホンダが先を行く。HV技術が足りないのではなく、(電気自動車<EV>技術という)自分たちの強みを生かさず、古い経営体質の企業に戻ったからだ」と批判した。
グプタ氏ら退任の背景には、内部告発文書の存在があると複数の関係者は話す。同文書は、グプタ氏への監視、仏ルノーとの関係にからむ経営陣の対立、ルノーの電気自動車(EV)新会社への知的財産流出懸念に触れている。グプタ氏がアライアンスの見直しに伴う一部の条件に疑問を呈するなど、経営陣の意見が割れていることが浮き彫りになった。
また、指名委自体の責任を問う声もある。日産は2019年に「指名委員会等設置会社」に移行し、ガバナンス強化を図ったが、現在の指名委5人はすべて当時のメンバーでもある。「内田体制」を長く容認し、混乱を長引かせた責任を免れるわけではない。
日産は「社内の情報管理やガバナンスの問題を調査する必要がある。独立した第三者機関を採用し、事実の検証や適切な対応を行っている」(広報)とコメントしている。
日産の取締役12人のうち、ホンダとの協議に反対したのは10人で、賛成は2人にとどまった。ホンダとの経営統合の形を模索するとはいえ、日産の経営陣は短期間で方針を転換することになる。
今後は、いったんは物別れに終わったホンダによる出資受け入れの協議も視野に入る他、台湾の電子機器製造大手・鴻海(ホンハイ)精密工業も出資に関心を示す。「再編第二幕」の波も迫っており、日産の混乱は当面終わりそうにない。
ただ、24年度に入ると、北米市場でハイブリッド車(HV)の車種不足が露呈し急減速。中国でも現地メーカーとの価格競争に苦しむ。25年3月期連結決算は800億円の赤字に転落する見通しで、2カ月足らずで決裂したホンダとの統合協議を巡るかじ取りでも「交渉下手」(日産幹部)と社内から批判が出ていた。
経営の新体制を巡っては、例年であれば3月末までに固まる取締役人事案の公表が5月12日にずれ込んだ。グプタ氏の退任について、本人は取材に応じていないが、日産側は「任期満了」に伴う取締役退任とし、退社は「新たなキャリアを追求するため」としている。
内田氏はホンダとの経営統合協議の破談を発表した会見で、「指名委、取締役会、株主が最終的に判断することだが、日産の業績低迷に歯止めをかけ、混乱を収束させることが私の責務だ」と述べ、指名委の判断に委ねる姿勢を示していた。
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