相続税お金持ちは古い土地高騰
「うちには大した財産はない」「きょうだいの仲がいい」――そういって相続対策は必要ないと考えている人がよくいます。ところが、こうした場合でも、相続には大きなリスクが存在します。ベテラン税理士の内藤克さんが、相続でよくある落とし穴を明らかにし、その対策を解説します。書籍『残念な相続<令和新版>』(内藤克著/日経プレミアシリーズ)から抜粋。
相続税負担が大きくなりそうな家族には、生前贈与で将来の遺産を圧縮する選択肢もあるが、その場合は「相続時精算課税制度」が大きな節税につながる可能性がある。
大した財産かどうかは感じ方に個人差があるので一概には言えませんが、冒頭のような発言をする人は、要するに「相続税はお金持ちの税金であって、我々庶民には関係ない」と考えているのでしょう。
他にも、一時払いの死亡保険などに加入しておくと、保険金は基礎控除とは別に「500万円×法定相続人の数」までの額が非課税になるなど、使える特例・制度は数多くある。
富裕層の相続対策としては、不動産や生前贈与の検討が効果的です。 これらの対策を成功させるには、早めの相談がカギとなります。 たとえば、不動産は賃貸することや小規模宅地等の特例を適用することで、節税効果をさらに高めることができるとお伝えしました。 しかし、賃貸によって節税効果が得られるのは、相続の時に、その物件を実際に賃貸している相手がいなければなりません。 よって、賃貸経営をしっかりと行う必要があります。 また、賃貸物件の敷地として小規模宅地等の特例を使う場合、「貸付事業用宅地等」としてその評価額を50%減額できますが、相続開始前3年以内に賃貸を始めたケースでは、原則、この適用ができません。
長生きは喜ばしいことですが、その分、老後資金の確保や認知症対策などの相続前対策を考える必要があることを肝に銘じておかなければなりません。
税理士業界の専門誌において「不動産と相続のエキスパート税理士」として特集されるなど、その専門性の高さと実績を注目されている税理士です。
不動産の場合、おおむね割合で相続税の課税対象を圧縮する効果があるため、富裕層にとっては、保険よりも高い節税効果を期待できます。 また、不動産は、評価額を計算する際のしくみを活用した節税対策ですので、市場での取引価格が実際に減少したかどうかに関わらず節税効果が得られます。 この点において、株式よりも確実性の高い対策といえるでしょう。 以上から、3つの財産を比較したとき、富裕層の相続対策には不動産がベストです。
富裕層の相続対策として、お持ちの現金で別の資産を購入する方法があります。 現金の場合、相続税の課税対象になるのは、その額面どおりの金額ですので、たとえば現金1億円をお持ちの方が亡くなれば、1億円が相続税の課税対象になります。 これに対し、金融資産や不動産などの財産は、一定の方法で計算した「相続税評価額」が、相続税の課税対象になり、財産によっては、この「相続税評価額」の方が市場での取引価格よりも低くなることがあります。
さらに、相続財産が自宅だけの場合、場所によっては相続税はかからないかもしれませんが、法定相続分(法律で定められた各相続人が遺産を分ける割合)に基づいた分割は難しくなります。遺産分割の材料である預金など流動資産が少なく、分割財産の選択肢が乏しくなってしまうからです。
これまでは、こうしたケースでは、第三者による「成年後見制度」を利用してきました。しかし、この制度は第三者が資産を守る事を基本としている為、相続税対策を行なったり、老人ホームに入る為に資産を売却したりするといった事は出来ません。
その場合は裁判所によって「法定後見人」が選任され、後見人は本人の利益を考えながら法律行為の代理を務めることになります。本人がたとえ遺言を書いていてもそれに従ってお金を動かせるのは相続開始(親の死亡など)してからの話で、生きている間の財産処分は自由にできなくなります。
不動産の相続税評価額については、土地は購入価額のおおむね8割、建物は5~6割ほどが目安とされています。 特に取引価格が高くなりやすい都心の土地などであれば、評価額と実勢価格(実際の取引価格)の乖離がより大きくなる傾向にあり、高い節税効果を得やすくなります。 また、購入した不動産を人に賃貸したり、小規模宅地等の特例を適用したりすれば、最終的に購入価額の4割ほどに評価額を圧縮することができます。 不動産を人に賃貸したり、小規模宅地等の特例を適用する方法は、新たに購入した不動産だけでなく、今お持ちの不動産に対しても効果のある相続対策になります。
不動産による相続対策は、不動産を賃貸することによって、より高い節税効果を得られます。 しかし、賃貸経営にはリスクも伴いますし、その不動産を承継するお子さんなどが喜ぶとも限りません。 そうした場合は、生前贈与による相続対策も検討しましょう。
このように、資産の継承は複雑性が増してきましたが、やりくりがとても大切になっています。税理士だけでなく、不動産は不動産会社に相談し、家族信託は行政書士に相談する等、専門家に相談しながら、財産の活用と相続を考えて行きましょう。
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