
昨日の海外市場でドル円は、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長解任の可能性などを巡ってドルの信認問題が浮上する中、24日に行われる日米財務相会談での円安是正議論への思惑などから日本時間夕刻に一時140.48円と昨年9月以来の安値を付けた。ユーロドルは、日本時間夕刻に一時1.1573ドルと2021年11月以来の高値を記録した。
本日の東京時間でドル円は、引き続きドル売り・円買い圧力が継続されそうだ。本日から先週末18日よりイースター休場だった多くの市場が再開する。それら参加者は、この数日間のドル下落の流れに乗れていない可能性があり、ドルの反発局面では売り方にまわることが予想され、上値が抑えられるだろう。ただ、昨日の米株・米債の売りにもかかわらず、ドル売りが日本時間夕刻以後はやや弱まっており、若干の巻き戻しが入る場面もありそうだ。
調整の買い戻しが入った場合でも、ドル売り・円買い要因は依然として複数あることで、ドル円の下落トレンドが急変することは考えにくい。特に、昨日日本時間の早朝にトランプ米大統領が更新したSNSでは、「非関税措置の不正行為(8項目)」のうちの最初の項目に「為替操作」をあげていることも重しになる。
G7各国に関して言えば積極的にドル買いを促しているわけではないが、トランプ大統領は日本が低金利により円安・ドル高になっていることも、為替操作という認識を持っている。日銀が今後利上げを繰り返すことが難しいなかで、円安・ドル高に歯止めをかけるためには、両国間による一定の為替政策の合意が必要になる。
前述した「非関税措置の不正行為」では、第2項目に「関税および輸出補助金として機能する付加価値税」、第4項目に「輸出補助金およびその他の政府補助金」が記されていた。輸出税の還付金についてもトランプ大統領が言及している。
日本の2023年度の輸出還付金は、大手輸出企業に対して前年比で約3000億円増加し、消費税2.2兆円を還付している。米国ではこのような制度がなく、トランプ大統領が非難をしているが、参議院選挙を控えている中で石破政権はこの還付金の撤廃をする方針は現時点ではない。その代わりに目に見えるかたちの合意(ドル高修正の合意)などへの予想が高まっていることもドル売り圧力になる。
今週24日に行われる予定の日米財務相会談ですぐに合意が発表されるのは難しいかもしれないが、トランプ政権の意向をくむ流れになるか。なお、石破政権は昨日に関税対策として省庁をまたぎ、新たに10人の関税対策専従メンバーを加え「オールジャパン」で対応を取ると発表。もっとも、米政権が日本のあまりにも悠長な対応にこのまま放置するとは思えず、日米間の時間軸の違いが懸念されている。
他にも、米連邦準備理事会(FRB)の独立性が危機に直面する可能性があることも、ドル売り要因として大きい。株価の下落に対して、昨日もトランプ大統領は自身の関税対策が導いたものとの認識よりも、バイデン前大統領とパウエルFRB議長の責任としたSNSを投稿している。FRBの独立性が少しでも低下した場合には、インフレ見通しがさらに上振れ、トリプル安が継続されるだろう。米国売りに歯止めが効かない状況下でも、トランプ大統領は自身の関税政策を撤回できない。責任回避のスケープゴートとして、今後もパウエル議長およびFRBへの圧力増大が見込まれ、それが米国売り要因として重くのしかかりそうだ。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通し米トリプル安継続か 為替操作言及やFRBの独立性懸念が重し
■注目ポイント ・米・3月景気先行指数:前月比-0.7%(予想:-0.5%、2月:-0.2%←-0.3%) ・国際通貨基金(IMF)・世界銀行の春季会合(26日まで) ・欧・香港・株式市場は祝日のため休場(イースターマンデー) ・グールズビー米シカゴ連銀総裁「全てが選択肢に」「関税によるマクロ経済への影響が緩やかにとどまる可能性も」「市場ベースの長期期待インフレ予想は上昇していない」「FRBの独立性は不可欠」「金利は今後、12-18カ月に低下すると予想」 ・加藤財務相、米財務長官と24日に会談へ ・NECハセット委員長「トランプ大統領、そのチームがパウエル議長解任を巡る選択肢を検討」
なお、商品先物取引委員会(CFTC)いわゆるシカゴIMM筋が先週発表した主要な円先物のポジション状況では、円ロングが再び拡大した。一部の市場関係者からは、積みあがった円ロング解消を期待している声がこの数カ月出ていたが、むしろポジションが増え、しかも持ち値レートが有利になっている。
本日の東京時間でのドル円も、様々なドル売り・円買い要因が多いことで上値は抑えられるだろう。早朝のオセアニア市場で、すでにドル円は先週末の安値を割り込み、ユーロドルも高値を上抜けた。ただ、日米を除いた多くの市場がイースターマンデーで引き続き休場のため、流動性が悪いことが想定される。もしドルの買い戻しが入った場合、値幅を伴うリスクはありそうだ。
先週末の海外市場でドル円は一時142.12円まで売られた。もっとも聖金曜日の祝日(グッドフライデー)で欧州やカナダが休場、米国も株式・債券・商品市場が休場だったことから商いは低調だった。ユーロドルは、1.1398ドルまで上昇した。
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ドル売り要因としては、依然としてトランプ関税が米国のリセッション懸念を高め、トリプル安を再び引き起こす可能性。先週はパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁が関税による米景気停滞懸念を表明した。20日にも今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権を有するグールズビー米シカゴ連銀総裁が、現時点は企業や消費者が関税導入前の価格で高額商品を「先取り購入(買いだめ)している」ことが、今夏の経済活動の落ち込みにつながる可能性を示唆している。
逆に、巻き戻しを期待してドル売り・円買いの流れに乗れていない一部投資家や、147円台の想定為替レート(3月の日銀短観で2025年度の「全規模・全産業は上期147.17円、下期146.95円、通期147.06円」、大企業製造業は「上期147.43円、下期147.28円、通期は147.35円」)から離れてしまった本邦企業もドル売りのチャンスを逃したままだ。仮にシカゴIMMの買い戻しが入った場合でも、利食いのためで慌てる様相はなく、むしろ売り遅れている本邦勢のドル売りが頭を抑えることにもなりそうだ。
21日のNY外為市場では米国資産市場がトリプル安で、警戒感が広がった。
中銀の独立性は経済にとり不可欠。利下げの必要性を主張するトランプ大統領が議長解任を検討していたことが報じられたが、財務長官や次期議長職を提示された元FRB理事のウォルシュ氏が議長の解任は市場の混乱につながりかねないと説得したと報じられていたが、不安は払しょくしない。
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