
本日の欧州時間のユーロドルも、引き続き方向感がなく激しく振幅することになりそうだ。すでにNY引け後のトランプ米大統領の発言以後、ユーロドル相場は100Pips以上の上下を繰り返している。
本日の相場の中心になるのは、引き続きトランプ政権の動向になる。トランプ米大統領は中国との関税合戦の回避を目指し、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の解任を企てていることを否定した。ただ、この発言を真に受けている人は少ない。
対中赤字解消や、米国への製造業回帰を目論んでいるトランプ氏にとって、対中政策を弱腰姿勢で臨むことは考えにくい。仮に、対中政策で甘い対応を取った場合には、他国との交渉にも影響を与えることで、今回の発言はあくまでも大幅に売られた米株や米債に対しての焦りからの、口先で歯止めをかけようとしたに過ぎないだろう。
また、米国の景気低迷のスケープゴートとしてトランプ政権がFRB(特にパウエル議長)の責任にすることは変わらないと思われる。これまでもトランプ大統領は対立軸を作ることで、支持率を獲得する方法を繰り返してきている。バイデン政権という対立軸への批判が賞味期限切れとなりつつある中で、中国・FRBという対立軸を失うことは難しい。ドルが買い戻されたこの2点について再びトランプ氏が批判し、相場が戻ってしまうリスクには備えておきたい。
欧州からの経済指標では、本日は各国の製造業やサービス業の購買担当者景気指数(PMI)が発表される。仏・独・ユーロ圏のそれぞれの予想は、いずれの業種も、前回値よりも低下する見込みになっている。関税の影響でPMIが予想を下回る結果になった場合にはユーロの重しになるだろう。
いずれにしても、この数日間で流動性が悪化していることで、トランプ政権要人の些細な発言や報道でユーロドルは大きく動意づきそうなので注意をしておきたい。
・想定レンジ上限
ユーロドル:トランプ発言が伝わる前の水準1.1430ドル近辺を明確に抜けたら、昨日のアジア時間安値1.1484ドル近辺。
・想定レンジ下限
ユーロドル:これまでの本日安値1.1308ドル。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
こうした中 金融市場では日銀の利上げ時期の見通しが後退した
こうした中、金融市場では日銀の利上げ時期の見通しが後退した。ブルームバーグによると、日銀が7月の金融政策決定会合で利上げを決めることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間18日午後1時段階で27%程度。トランプ氏が2日に相互関税の内容を発表する前には80%近い確率が見込まれていたが、利上げ期待は大きく縮小したといえる。
ただし、ここに来て米景気に急減速の兆しが出てきたことで、日米金利差米ドル優位が一段と縮小する見通しとなってきた。それに加えトランプ政権の円安是正要求が公然化したことで、HFなどの投機筋は円買い「行き過ぎ」を修正しながら、買い越しの最高更新に向かう可能性もあるのではないか。
一方、FRBは24年9月以降、3回連続で利下げしたが、12月に公表した25年の政策金利見通しでは、利下げが従来の4回から2回に半減した。
一方、トランプ氏の動向は日銀が見据える利上げにとっては逆風といえる。トランプ氏の高関税政策は、4月3日に発動した自動車関税を含め、日本経済や世界経済を混乱させる要因。トランプ氏は9日には相互関税を一部停止しつつも、中国との対決姿勢はエスカレートさせている。日銀はこれまで物価上昇と賃上げの好循環の実現が見通しに沿って進んでいるとして利上げしてきたが、経済状況を再点検する必要性が高まっている。
このため世界経済の混乱が日米両方の経済を冷やした場合、FX市場では円がドルよりも買われやすくなる可能性がある。ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、円高圧力が根強く残る展開も考えられそうだ。
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