
本日のロンドン為替市場では、序盤に発表の3月英小売売上高に暫くポンドは上下させられるか。総合/除く自動車ともに前月比がマイナス予想であり、こちらの結果が注視される。低下幅をもし広げるようであれば、昨日ベイリー英中銀(BOE)総裁は否定していたものの、「英経済のリセッション」が再び意識され始めるだろう。
今週のポンドドルは買い先行も、昨年9月下旬に頭を抑えられた1.34ドル前半で伸び悩むと一時1.32ドル前半まで失速する場面があった。昨日はユーロポンドのポンド高推移を受けて反発したものの、本日の東京時間は再び上値を切り下げている。
ポンドドルが今月前半に売り込まれた1.27ドル手前から、切り返した今週高値までのレンジの半値は1.3060ドル台とまだ距離はある。しかしながら、トランプ米大統領の政策に対する過度な警戒感の後退から「ドル売りが一服」のなか、英国発の材料が弱いとなればポンド安ドル高に傾きやすくなるもしれない。
ほか、南ア・ランドの動きに本日は注目。ゴドンワナ南ア財務相は昨日、これまで実施するとしてきた「付加価値税(VAT)の引き上げ」を撤回した。同財務相の判断は、ラマポーザ大統領率いる第1党アフリカ民族会議(ANC)の譲歩ということでもある。これにより、VAT増税に強く反対していた第2党・民主同盟(DA)の国民統一政府(GNU)離脱は回避できるもよう。連立政権の崩壊は防がれ、目先の政治安定には繋がるかもしれない。
しかしながら、750億ランドの予算不足という現実問題から南ア政府は逃げることはできない。財政危機への対応策(VATを0.5%引き上げて15.5%に)を講じないとなれば、海外投資家の南アフリカに対する不信感が高まってしまいそうだ。予算不足を補う新たな対策が打ち出されなければ、通貨ランドの印象は悪くなってしまうだろう。
想定レンジ上限
・ポンドドル、22日高値1.3424ドル
・ランド円、23・24日高値7.70円
想定レンジ下限
・ポンドドル、23日安値1.3234ドル
・ランド円、21・22日安値7.49円
(小針)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
見通し ロンドン為替見通しポンド 英小売指標に左右させられるか
また、ポンド円相場の値動きをめぐっては、このところのFX市場で円が安全資産として買われやすくなっていることも、ポンド安の見通しを強めている。ブルームバーグによると、中国の人工知能(AI)開発企業の「DeepSeek(ディープシーク)」のAIが米国企業の優位性を脅かすとの見方が金融市場でのリスク回避姿勢を強めた1月27日には、ドル円相場(USD/JPY)で前週末比0.96%の円高が進行。これに対してポンドの対ドル相場(GBP/USD)でのポンド高は0.12%に留まり、結果としてポンド円相場は0.86%のポンド安となった。ポンド円相場が直近のポンド安水準(1ポンド=189.95円)をつけた2月3日も、ドナルド・トランプ大統領の高関税政策をめぐる混乱が円高要因となっていた。
こうしたポンド安の今後の見通しは、BOEの理事会後の情報発信で左右されそうだ。BOEが事前予想通りに利下げを決めたうえで、英国経済の見通しについて弱気な見方を示せば、BOEの追加利下げ見通しが強まる可能性がある。この場合、ポンド円相場では、ポンド安圧力が強まることも考えられる。ブルームバーグのデータでは、金融市場ではBOEの年内利下げ回数は2月を含めて3回になるとの見方が優勢だ。
このため、今後のFX市場では、米国経済の見通しの悪さが強まれば円高方向、弱まれば円安方向への値動きが起こることが想定される。この場合はポンド円相場にもポンド安圧力やポンド高圧力として作用することも考えられ、世界の金融市場を揺るがすトランプ氏の動向はポンド円相場にとっても不確定要素といえそうだ。
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