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外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。
主要ポイント
日米財務省会合に関する分析
会合の結果
– 4月25日金曜日、日米財務省会合が終了
– 結論:日米財務省は為替目標について議論せず、緊密な連携のみ確認
– ベッセント財務長官は事前に「特定の通貨目標を求める考えはない」と発言
– この発表後、市場の反応は控えめだった
為替市場の動向
– 会合結果発表時点でドル円は143円付近、その後50銭程度上昇
– 翌日の東京市場では実需の売りに押されて下落
– 現在は142円60銭付近で推移
市場の期待と反応
– 会合前には「マー・ア・ラゴ合意」などの為替協調介入の期待があった
– シティバンクなどは「日米中で1ドル=120円前後を目標」と予測
-「プラザ合意2.0」のような大幅円高への期待も一部あった
– 期待が否定された後も想定されたショートカバーの急上昇は起きず
最近の円高トレンドの背景
– トランプ大統領の相互関税発表後、ドル円は150円から140円未満まで10円下落
– 通貨合意期待以外にも複数の要因が存在
1. トランプ政権の政策運営の不透明感
2. 対中国との関税引き上げの応酬(「チキンゲーム」)
3. アメリカが投資先として安全ではないという投資家の認識
4. ドルに対する根強い不信感
ユーロ/ドルの上昇
– 年初は1.00付近で取引されていたが、現在は1.15まで上昇
– ドイツの財政拡張路線の明確化が上昇につながった
– 昨年の高値を突破し、過去のダウントレンドも抜けている
– トランプ政権への不信感が継続的なドル下落予想につながっている
G7合意と介入問題
– ベッセント長官はG7合意を尊重するよう言及
– G7声明のポイント:
1. 為替レートは市場で決定されるべき
2. 各国の財政金融政策は国内目的のため
3. 競争力を目的とした為替レート目標設定は行わない
4. 通貨の競争的切り下げを回避すべき
5. 為替レートの過度な変動や無秩序な動きは経済・金融安定に悪影響
– 日本は過去の介入を「無秩序な動き」への対応と主張
– 米国は日本の金融緩和政策を「競争的な通貨切り下げ」と批判
今後の展望
– IMM通貨ポジションでは円のショートポジションが蓄積
– 合意がないことが確認されたため、ある程度のショートカバーは予想される
– 将来的に「競争的な通貨切り下げ」の議論が再燃する可能性あり
– トランプ政権の政策不透明性によるドル安傾向は継続する見込み
– FRBがトランプ大統領の攻撃を受け、金融緩和策に踏み切る可能性も
結論
今回の日米財務省会合では為替目標について具体的な合意はなく、市場の反応も限定的でした。短期的には円ショートポジションのカバーからの円安圧力はあるものの、トランプ政権の政策不透明性によるドル安傾向は続く見込みです。長期的にはドル円は144円付近が重要な分水嶺となり、アメリカの金融政策とトランプ政権の動向、および「競争的通貨切り下げ」に関する議論の再燃可能性が今後の為替相場を左右すると考えられます。
最新のマーケット情報
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外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。

志摩力男 氏
慶應義塾経済学部卒。1988年ー1995年ゴールドマン・サックス、2006-2008年ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダーを歴任、その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。独立した後も、世界各地の有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。
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ドル円予想日米財務省会合を終え 144円が分水嶺に今後の火種は 2025
今後、ドル円相場の焦点は、関税をめぐる日米の交渉(2回目は日本時間5月1日か)や、米中の交渉の進展に移り、関税引き下げの方向に向かえばドル高・円安、交渉難航、決裂ならドル安・円高の動きが予想されます。また、日銀金融政策決定会合(4月30日、5月1日)や米連邦公開市場委員会(FOMC、5月6日、7日)において、どのような政策スタンスが示されるかについても、ドル円の方向性に影響を与え得るため、注目されます。
来週の円相場は上昇しそうだ。日米財務相会合の開催が見込まれ、円安是正が話し合われるリスクに警戒感が再燃する。トランプ米大統領の発言に加え、国際通貨基金(IMF)会合や主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議での政策当局者の発言も注目で、相場は上下に振れやすい。
1つめは、「為替については日米財務相の間で緊密な連携を図り、議論を継続する」などの発言にとどまるケースです。日米関税交渉も始まったばかりの段階であることを踏まえると、具体的な為替レートへの言及には踏み込まず、今回はこのケースとなる可能性が高いと考えましたが、おおむね想定内の結果になったと思われます。3つめと4つめのケースは、実現のハードルが高いと判断しましたが、前述の通り、米国側から話はありませんでした。
旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。
注目された日米財務相会談でしたが、市場が懸念していたような、米国が日本に対し円安是正を強く求める展開にはなりませんでした。今回の会談については、4月21日付レポート 『日米財務相会談の注目点【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』 で、為替レートに関して想定され得る米国の対応を4つのケースにまとめ、それぞれに対する為替市場の反応をまとめました。それを再掲したものが図表ですが、今回の会談の結果と照らし合わせて考えてみます。1つめは、「為替については日米財務相の間で緊密な連携を図り、議論を継続する」などの発言にとどまるケースです。日米関税交渉も始まったばかりの段階であることを踏まえると、具体的な為替レートへの言及には踏み込まず、今回はこのケースとなる可能性が高いと考えましたが、おおむね想定内の結果になったと思われます。3つめと4つめのケースは、実現のハードルが高いと判断しましたが、前述の通り、米国側から話はありませんでした。
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