【市場概況】東京為替見通し=米中関税交渉進展なくドルの上値は重いか、豪中経済指標も注目

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【市場概況】東京為替見通し=米中関税交渉進展なくドルの上値は重いか、豪中経済指標も注目

昨日の海外市場でドル円は、21時前に一時142.76円と日通し高値を更新したが、この日発表の米経済指標が軒並み予想を下回ると円買い・ドル売りが優勢になり141.97円まで値を下げた。米10年債利回りが4.16%台まで低下したことも相場の重し。ユーロドルは、ドル売りが進むと1.1419ドル付近まで持ち直したが、1.1376ドル付近まで押し戻された。

 本日の東京時間でドル円は、引き続き米国の関税の進捗状況を見極めての取引となりそうだ。ただ、米中間の関税交渉が進まない恐れがあることはドルの上値を抑えることになるだろう。また、本日から始まる日銀政策決定会合の観測報道や豪中の経済指標の結果にも注目したい。

 米国のトリプル安(債券安・株安・米ドル安)に対処するために、トランプ政権が対中関税圧力の緩和姿勢を見せ、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の解任を打ち消したことでトリプル安の流れが一時休止となっている。昨日もベッセント米財務長官やラトニック米商務長官が、関税交渉が進展していることを述べたことで、米株主要3指数は上昇し、米債も買われるなど過度のリスク回避の動きは弱まっている。ただし、トランプ大統領の支持率が就任100日間の期間としては70年以上ぶりの低水準となる中、トランプ政権が関税交渉に弱気の姿勢を見せ始めていることで、関税対象国が敢えて交渉合意を急がない可能性もあるだろう。

 ドルの上値を抑える要因としては、米中間の関税交渉が進まない可能性があることが一因。今週に入りベッセント財務長官が「貿易摩擦の緩和は中国次第だ」と発言した一方で、昨日BRICS会議で演説した中国の王毅外相は「譲歩や後退はいじめる側をますます増長させるだけだ」と述べた。また、王毅外相はBRICS諸国に米国の関税脅威に断固として対抗するよう促し、屈服すれば米国を勢いづかせるだけだと警告した。

 過去のようにBRICSはブラジル、ロシア、インド、南アと中国の5カ国だけではなく、昨年までにイラン、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピア、インドネシアが加盟、今年に入りタイ、マレーシア、ウズベキスタン、カザフスタン、ベラルーシ、ウガンダ、ボリビア、キューバ、ナイジェリアの計9カ国がパートナー国として加わるなど、米国よりも巨大な経済圏を形成している。更に中国は親米だった欧州連合(EU)とも通商関係で交渉を進めるなど、中国の方が関税交渉で優位なことで強気姿勢を崩すことはないだろう。トランプ政権が中国に対する関税圧力を更に緩和をしない限りは、2大経済大国の貿易戦争がドルの重しとなりそうだ。

 また、本日から始まる日銀政策決定会合の観測報道などには警戒したい。ベッセント氏は28日に「欧州中央銀行(ECB)は、ユーロを下落させるために利下げを行うだろう」と発言している。ECBをはじめG7各国で金融政策を通貨政策に結び付けようとしている国はないと思われているが、トランプ政権は米国以外の国の低金利政策は、自国通貨安・ドル高に結び付けているとの認識を持っているようだ。この件に関しては低金利政策を長期間続けている日本に対しても当てはまる。

 今回の日銀政策決定会合では据え置き予想が多数を占めているが、先週の訪米時に植田日銀総裁や政府要人に、日本の低金利政策に対して米国が圧力をかけた可能性もある。表面上は「強いドル政策を堅持している」とするトランプ政権だが、前述のECBへの発言を含めドル高を危惧していることは確実なことも、ドルの重しになるだろう。

 なお、本日は複数の国から注目経済指標が発表される。その中では豪州からの1-3月期消費者物価指数(CPI)、中国の4月購買担当者景気指数(PMI)は市場が動意づく可能性が高そうだ。市場予想は豪CPIが前年比で2.4%から2.3%への低下、中国のPMIは景気判断の分岐点とされる50を割り込むと見られている。ここ最近は相互関税の影響を見極めたいことで経済指標への反応は鈍いが、警戒を怠らないようにしておきたい。

(松井)

・提供 DZHフィナンシャルリサーチ

[紹介元] 外為どっとコム マネ育チャンネル 【市場概況】東京為替見通し=米中関税交渉進展なくドルの上値は重いか、豪中経済指標も注目

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今後のドル円は、米中通商協議の行方を注視しながら緩やかなドル高基調が続くと予想します。米中通商協議に関して、トランプ大統領は「協議に大きな進展があった」として、3月1日に予定されていた対中制裁関税引き上げの延期を表明。その後も、「米中首脳会談の開催を検討中」「米中通商合意が近い」といった協議の進展を仄めかす報道が相次いでいます。今後こうした協議の進展期待を高める報道が続けば、市場のリスクセンチメントが改善する中で緩やかなドル高・円安基調が継続するとみています。ただし、依然として米中合意に向けた明確な道筋は示されず、また、中国による知的財産権の侵害に関する交渉は難航するとの見方もあります。報道などから米中協議の難航ぶりが意識された場合には、協議進展期待によるドル高・円安の反動もあり、一時的に急激なドル安・円高が進行する可能性があります。また、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策スタンスにも注意が必要です。1月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、FRBはハト派(利上げに消極的なスタンス)へ転じました。3月19~20日に開催されるFOMCでは今後の金利見通しが発表される予定であり、内容次第でドル円が大きく動く可能性があります。

ただ、足下では米中の通商協議にも進展が見られます。また、シリコンサイクルの先行指標である、世界の半導体関連企業の株価が反転していることは良い兆候といえるでしょう。世界の半導体企業が加盟する業界団体によれば、今年の半導体需要は米中摩擦への警戒から、前年比2.6%に止まるとの予想ですが、株価はそれを遥かに下回るような需要減までいったん織り込んだ上で好転しています(図)。これは株式市場が米中の融和や世界貿易の再拡大を想定し始めたことの表れです。米中協議が進めば、世界貿易の重石は外れ、半導体の需要見通しも上方修正されるでしょう。シリコンサイクルはスーパーサイクルに近付くと共に、世界経済も持ち直していくのではないでしょうか。

世界経済の成長が鈍化しています。その主因は、第一に世界の半導体需要を表すシリコンサイクルが下降局面にあること、第二に米中通商摩擦による世界貿易の萎縮、第三に米国の金融政策正常化による市場心理の悪化にあると思われます。これが中国の景気悪化や資源価格の下落、世界的な株価の調整、そして企業マインドの悪化や設備投資の先送りなどに波及しています。こうした状況下、世界経済好転のカギは、①米中関係の改善、②FRBのハト派化、③中国の景気対策の効果発現、並びに④シリコンサイクルの反転にあると思われます。

ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン証券などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。2016年8月より現職。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBCなどにレギュラー出演し、金融市場の解説を行っている。著書に『為替がわかればビジネスが変わる(2014年日経BP社)』、『富裕層に学ぶ外貨投資術(2015年日経新聞出版社)』、『〈新版〉本当にわかる為替相場(2016年日本実業出版社)』などがある。

1974年日本銀行に入行後、秘書室兼政策委員会調査役、ロンドン事務所次長、調査統計局経済統計課長・同参事などの役職を歴任。日本経済研究センター主任研究員(日本銀行より出向)を経て、1999年JPモルガン証券入社、チーフエコノミスト・経済調査部長・マネジングディレクターとして日本の金融経済分析・予測を担当。2017年4月より現職。総務省「統計審議会」委員、財務省「関税・外国為替等審議会」専門委員、内閣府「経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会、金融・資本市場ワーキンググループ」メンバー、内閣官房「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」メンバー、厚生労働省「年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班」専門委員などを歴任。日本経済新聞「十字路」「経済教室」、日経QUICK「QUICKエコノミスト情報」、東洋経済「経済を見る眼」「論点」、NTT出版「危機の日本経済」など執筆多数。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」レギュラーコメンテーター。1974年東京大学経済学部卒、1979年シカゴ大学大学院経済学修士号取得。

2014年4月、日本マスタートラスト信託銀行に入行し、市場管理部にて外国有価証券の管理業務に従事。2015年10月にソニー生命保険に入社し、財務部にて変額保険勘定(特別勘定)の管理・運用を行う。2016年8月、ソニーフィナンシャルホールディングスへ出向し、金融市場調査部の立ち上げに参画。2017年4月より現職にて外国為替市場の調査・分析業務を担当。

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