日銀総裁 米関税 不確実性高い
次の利上げのタイミングについて「基調的物価が2%に到達する時期はやや後ずれということだが、その上で、利上げの時期が同じように後ずれするかというと必ずしもそうではない」と述べました。また、経済や物価の先行きの不確実性が高まるなかでも利上げの方向性を維持した理由については「見通し期間の後半では基調的物価が2%に到達するという見通しが維持されているということがある」と述べました。
日銀は展望レポートの中で今後の経済の見通しについて、アメリカのトランプ政権の関税措置を念頭に「各国の通商政策の影響で海外経済が減速し、国内でも経済の成長ペースが鈍化すると考えられる」としています。そのうえで、海外経済が減速することで輸出、生産が弱めの動きになり、企業の収益も高い水準ながら減少するとみられるとしています。企業の設備投資も海外経済の減速の影響で伸びの鈍化が見込まれると指摘しています。また物価面については、経済成長のペースが鈍化する影響などを受けて基調的な消費者物価の上昇率は伸び悩み、その後は人手不足感が強まることなどで徐々に高まっていくと予想しています。さらに、こうした経済の見通しや物価の見通しはいずれも下振れするリスクが大きいと指摘しています。とりわけ経済の見通しのリスクについては「最近打ち出された各国の通商政策はさまざまな経路を介して内外経済を下押しする方向に作用する。広範な関税の導入はグローバルな貿易活動に影響を及ぼすとみられるほか、関税を含む政策の不確実性の高まりが、各国の企業や家計のコンフィデンス(=将来見通し)や国際金融資本市場に大きな影響を及ぼす」としています。物価の見通しのリスクについても「企業の賃金・価格設定行動は従来よりも積極化しており、こうした傾向は維持されると想定している。もっとも今後の各国の通商政策などをめぐり不透明感が高い状況が続くことがあれば、コスト削減に注力する傾向が強まる可能性がある。こうしたもと、物価上昇を賃金に反映する動きが弱まることも考えられる」と指摘しています。そのうえで、こうした動きに加えて外国為替市場の変動や国際的な商品市況を含む輸入物価の動向、それが国内での価格に波及することに注意が必要だとしています。
アメリカのトランプ政権による関税政策の影響を見極められる時期について「(相互関税の)猶予措置の期間としている90日間がポイントの1つになるとは思う。ただ、その手前でも例えば現在の日米の交渉のように順次行われている交渉もあるし、90日たっても、まだの部分も残ると思うので、そこは何とも言えないと思う。関税政策がいったん、これでいくとセットされても多少の不確実性は残り、断定しにくい状態が続くのではないか」述べました。
日銀は経済・物価の情勢をみながら、さらなる利上げを検討する方針を示してきましたが、今回、先行きの見通しが慎重になった形で、植田総裁がこのあとの会見で今後の金融政策の方向性をどのように説明するかが焦点となります。
1日の東京株式市場、日銀の金融政策決定会合の結果を受けて、外国為替市場で円安ドル高が進んだことから、午後の取り引きでは輸出関連の銘柄などに買い注文が入り、日経平均株価は、値上がりしました。▽日経平均株価、1日の終値は30日と比べて406円92銭高い、3万6452円30銭。▽東証株価指数、トピックスは12.15上がって、2679.44。▽1日の出来高は18億6514万株でした。市場関係者は「日銀の会合の結果を受けて、外国為替市場で円安ドル高が進んだことから、業績への好影響が期待できるとして、輸出関連の銘柄などに買い注文が入り、午後の取り引きでは、株価の上昇幅は拡大した。2日に向けてはアメリカの関税措置をめぐる2回目の日米交渉の結果が注目される」と話していました。
日銀は5月1日、2日目の金融政策決定会合を開き、いまの政策を維持することを決めました。政策金利を据え置き、短期の市場金利を0.5%程度で推移するよう促します。アメリカのトランプ政権が関税措置を発動し、金融市場でも不安定な動きが続くなか、今回は金融政策を変更せずに経済や物価への影響を慎重に見極めるべきだと判断したとみられます。また、日銀が1日に公表した経済と物価の最新の見通しでは、9人の政策委員の見通しの中央値で▽今年度のGDP=国内総生産の実質の伸び率はプラス0.5%と、ことし1月に示した前回見通しのプラス1.1%から大幅に引き下げたほか▽来年度もプラス0.7%と前回見通しのプラス1.0%から引き下げました。さらに生鮮食品を除いた消費者物価の上昇率は▽今年度はプラス2.2%で前回見通しのプラス2.4%から引き下げ▽来年度もプラス1.7%と前回見通しのプラス2.0%から引き下げました。関税措置によって輸出の減少や企業の投資が慎重になるリスクなどを反映していることがうかがえます。
日銀は「展望レポート」の中で、目標としている2%の物価安定を達成する時期について「2027年度までの見通し期間後半には物価安定の目標とおおむね整合的な水準となる」とする見通しを示しました。これまでは今年度=2025年度の後半から2026年度中としていました。そのうえで経済・物価の見通しが実現していけば、経済・物価情勢の改善に応じて引き続き利上げをしていくとする方針を示しました。
1日の東京外国為替市場、日銀の金融政策決定会合の結果などから追加利上げの実施時期が予想よりも遅れるのではないかという見方が出て、円を売る動きが強まり、円相場は一時1ドル=144円台後半まで値下がりしました。日銀は、1日まで開いた金融政策決定会合で政策金利を据え置いたほか、同時に公表した展望レポートで経済成長率や物価上昇率の見通しを前回・1月時点より引き下げました。このため、1日の東京外国為替市場では日銀の追加利上げの実施時期が予想よりも遅れるのではないかという見方が出て、円を売る動きが強まりました。日銀の植田総裁による記者会見が続いていた午後4時すぎには、円相場は、1ドル=144円70銭台まで値下がりしました。市場関係者は「植田総裁の会見を受けて、早期の利上げは難しいという見方が強まり、円を売る動きが加速した。ただ、関税措置をめぐる日米交渉で、アメリカが円安ドル高の是正を求めてくるのではないかという警戒感もあって、円を買い戻す動きも出ている」と話していました。
日銀の植田総裁は基調的な物価上昇率が伸び悩んだ際に、利上げをするのか問われたのに対して「無理に利上げすることは考えていない。ただ、足元で物価が伸び悩んでいても、その先にいろいろな条件が重なり、物価が上がり出して(物価目標に)到達する可能性がすごい高くなったと判断した場合には利上げをするということだ」と述べました。
日銀の植田総裁は会見で、トランプ米政権の関税強化策について「不確定なところは非常に大きい」と述べた。米政権が相互関税の導入を予定する4月上旬に先行きが一定程度見通せる可能性があるとの認識を示した。
日本銀行の植田和男総裁は1日の金融政策決定会合の終了後、記者会見を開いた。米国の高関税政策を念頭に「各国の通商政策の展開や影響を巡る不確実性が極めて高く、金融・為替市場や国内経済・物価への影響について十分注視する必要がある」と指摘した。
植田総裁、物価情勢は「足元はオントラック」…トランプ関税は「不確実性が極めて高く影響を十分注視」
日銀は1日の決定会合で、政策金利である短期金利の誘導目標を0・5%程度に据え置くことを決めた。
Takahiko Wada[東京 9日 ロイター] -日銀の植田和男総裁は9日、衆議院財務金融委員会で、トランプ米政権の関税政策について「今後どうなるかという点も含めて残っている不確実性はある」と述べた。動向を丁寧に見極めながら「経済・物価情勢あるいは市場動向を確認し、見通しをしっかりと持ち、それに応じて適切に政策判断する」と話した。政府と緊密に連携しつつ、引き続き市場動向やその経済・物価への影響を十分注視していきたいとも述べた。
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