午前の為替予想は… 米中通商協議待ちで方向感出ず 協議の行方に注目集まる
作成日時 :2025年6月10日7時30分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部 中村勉
ドル円予想レンジ
143.600-145.600円
前日の振り返りとドル円予想
昨日のドル/円相場は終値ベースで約0.2%下落。前週末のドル買いに対するポジション調整が持ち込まれ、143.97円前後まで下落する場面も見られた。ただ、米中通商協議の行方を見極めたいとの思惑から円高・ドル安の流れは続かず、NY時間には144円台後半まで買い戻された。
米中通商協議は本日も継続される。中国からのレアアース、米国からの半導体など双方の輸出規制が改善の方向に向かえば、ドル/円は日足一目均衡表の雲上限(145.59円前後)の上値抜けを試す展開となりそうだ。一方で協議が物別れに終われば、米中貿易摩擦への懸念からドルの上値は抑えられやすくなるだろう。
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外為どっとコム総合研究所 調査部 研究員
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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ドル円午前の為替予想 米中通商協議待ちで方向感出ず 協議の行方に注目集まる
19年後半に入り、再び米中間の緊張は増大した。7月30日、31日に開催された米中閣僚級協議において大きな進展が見られなかったことを受け、8月1日、トランプ大統領が、中国からの輸入品3,000億ドル相当に対し、9月1日より10%の追加関税措置(第4弾)を実施する旨を表明した。
IMFでは、19年10月に公表された世界経済見通しにおいて、米中間の追加関税措置が世界の実質GDPに与える影響について、モデル28を用いた試算結果を示している(第1-1-12図)。同試算では、世界の実質GDPの水準の押下げ効果を直接的な関税引上げの効果と間接的な効果に分けた上で、直接的な効果については、(1)18年に実施された米中間の追加関税措置(第1弾、第2弾、第3弾(追加関税率は10%))、(2)19年5月に実施された米中間の追加関税措置(第3弾(追加関税率を10%から25%へ引上げ))、(3)19年8月に公表された追加関税措置(第4弾(追加関税率10%)及び第1弾~第3弾(追加関税率を10%から25%へ引上げ))の3つに分けて示している。また、間接的な効果については、(4)企業マインドの悪化が設備投資を下押しした場合の影響(信頼感効果)、(5)企業収益の悪化予想により、企業の調達金利が上昇した場合の影響(金融市場効果)、(6)国内資源の再配分による生産への影響(生産性効果)の3つに分けて示している。
その後、8月23日、中国国務院関税税則委員会が、アメリカの第4弾実施の発表に対する対抗措置として、石油や農産物など約750億ドル相当4のアメリカからの輸入品に対し5%または10%の追加関税を9月1日及び12月15日から賦課することを発表した。併せて、18年12月の米中首脳会談を受けて停止されていた、自動車及び同部品への追加関税賦課(5%または25%)についても、19年12月15日から復活させることも発表された。これを受けて、USTRは同日、第1弾から第3弾(25%)及び第4弾(10%)の追加関税率をそれぞれ5%引き上げることを公表した5。
アジア諸国・地域では、中国経済の減速に伴い、18年末以降、中国向けを中心に輸出が低調となった(第1-1-31図)。特に、中国の輸出品に使用される中間財として半導体や電子部品を中国向けに多く輸出している韓国や台湾等で対中国輸出の減少が顕著に表れていることから、背景には、米中貿易摩擦による中国の輸出の減少があると考えられる。実際、中国の輸出入を品目別にみると、18年7月及び8月からアメリカが追加関税を賦課した品目が含まれる電気機器・一般機械の輸出の寄与が18年10~12月期以降急速に低下するとともに、その生産に必要とされる半導体や電子部品等が含まれる同品目の輸入も減少に転じ、その後も輸出入ともに弱い動きが続いている(後掲第2-2-20図)。
議論を受けて最後に工藤は、「日本はルールベースの秩序を擁護するために何をすべきか、今後も考え続けていく。米中対立をめぐっては事態の変化が激しいために機を見てまたこのテーマを取り上げる」とし、今後も議論を継続していく方針を示し、議論を締めくくりました。
河合氏は、「トランプ氏がWTOの原則を破る形で、国内法に基づいて関税引き上げをしているのは、深刻な問題だ。しかし、中国がWTOに加盟した時の約束の実行、知的財産権の保護も不十分で、産業補助金もある。さらに、国有企業で競争を疎外しているなどの問題がWTOの中で十分に取り入れられていないのは問題だ」と指摘。米中でこうした問題で合意できれば、合意されたものに基づいて、仮にWTOの改革を進めることができれば、今回の通商紛争もWTO改革に向けた一つの重要なテコになる可能性はある。だからこそ、米中の交渉だけにまかせないで、日本やEUも米中の協議に基づいて、それをWTOの改革に反映させる形で動かしていくことが大事だ、と日本やEUへの期待を寄せました。
19年9月に入り、追加関税措置第4弾のうち9月1日に実施されることとなっていた衣類、テレビ等(1,200億ドル相当)に対する追加関税措置については予定どおり実施されたものの、9月下旬に米中次官級協議が、また10月上旬に米中閣僚級協議が予定される中、9月11日、トランプ大統領は、10月1日に予定されていた第1弾から第3弾の追加関税率の引上げを10月15日に延期する旨を表明した16。その後、10月10日、11日に開催された閣僚級協議において米中間で第1段階(phase one)17の合意がなされたとして、トランプ大統領は、10月15日に予定されていた第1弾から第3弾の追加関税率の5%引上げを見送る旨を表明した。第1段階の合意について、トランプ大統領は、中国が400~500億ドル分のアメリカ農産物の購入の他、知的財産権の保護、為替の透明性の向上、金融サービス市場の開放等に合意したと述べたが、合意に関して書面での公表はされず、合意の文書化及び署名に向けた協議がその後も継続された。
台湾及びベトナムで、アメリカ向け輸出で増加している品目をみると、台湾では、特に情報通信機器(コンピュータや通信設備等)、ベトナムでは機械・設備や電話機、木材・木製品といった品目が増加している(第1-1-32図)。国連貿易開発会議(UNCTAD)の分析41によると、アメリカの中国に対する追加関税措置により、台湾が最も貿易代替効果の恩恵を受けているとされ、第2位としてメキシコ、第3位にEU、第4位にベトナムが挙げられている。19年1~6月期に、アメリカの中国からの輸入が35億ドル減少し、そのうち21億ドル(63%)が他国からの輸入によって代替され、うち台湾が4.2億ドル、ベトナムが2.6億ドル分であったとしている。品目としては、台湾はオフィス機器、ベトナムは通信機器及び家具の代替が大きいとしており、統計上の分類は異なるものの、前述のアメリカ向け輸出が増加している品目と類似した品目となっている。このほか、これらの国よりも代替効果は小さいながらも、アジアでは、韓国、インド、その他東南アジア諸国でも代替効果が生じていると指摘されている。ただし、ベトナムについては、先に見たように、アメリカの中国に対する追加関税措置後に中国からの輸出が増加していることから(前掲第1-1-25図)、迂回輸出が増加している可能性にも留意が必要である。
第4弾については、8月13日、アメリカ通商代表部(USTR:United States Trade Representative)が、意見公募や意見聴取2の結果を踏まえ、特定の対象項目(携帯電話、ノートパソコン、玩具等)(約1,600億ドル相当)への追加関税措置を12月15日まで延期することを決定した3。延期の理由についてトランプ大統領は、クリスマス商戦に際し、追加関税がアメリカの消費者に影響を及ぼすことがないようにするためである旨を述べている。実際、後述の通り、追加関税が延期された項目は消費財を多く含んでいるとともに、対中国輸入依存度が高いものが対象とされている。
工藤は、率直に尋ねました。「習近平氏は、構造改革しようとしているのか」。丸川氏は、「習近平氏ら主流派が改革推進勢力かどうか、疑問符がつく」と簡潔に答えます。その理由として、「国内の国有企業という膨大な勢力は改革の障害になっているし、ネットワークのセキュリティ会社が安全保障への配慮から国有化される、という逆の流れも出てきている。習近平氏に過度の期待を持つことはできない」と語る丸川氏。米中交渉役の劉鶴副首相については、「国家計画委員会の出身で、国有企業や産業政策のマイナス面を経験しているので、改革推進の方にいると思うが、押し切る政治力はないのでは」との見方を示しました。
安井氏は、米中どちらか一方のみを選択することはできないため、日本の対米姿勢としては「米国一国で対抗するよりも、国際協調の枠組みで対応した方が中国の行動を変えられる可能性が高い」というロジックで説得すべきだとしました。
18年以降、米中間を始めとしてアメリカと多くの国・地域との間で貿易制限措置が採られている。米中両国のGDPは合算して世界のGDPの約4割を占めており、既に見たように、米中貿易摩擦は世界の貿易量の伸びを鈍化させ、製造業を中心に景況感や生産を低下させるなど、米中のみならずユーロ圏を含む世界経済全体にマイナスの影響を与えている。19年12月に第1段階合意に達し、20年1月には文書への署名も行われるなど、緊張は緩和される方向にあるものの、引き続き追加関税措置の大部分が残されたことから、第2段階の合意に向けた協議の進捗状況については、注視が必要である。また、アメリカは、大手航空機メーカーへの補助金等を理由とした欧州諸国に対する追加関税措置の実施や、デジタルサービス課税を理由とした欧州諸国に対する追加関税措置の検討を表明しているほか、通貨安を理由としたブラジル、アルゼンチンへの追加関税措置の可能性も示唆するなど、米中間以外の通商問題の動向についても留意が必要である58。
「慎重だけれど、楽観的に見ている」と言うのは安井氏で、「関税とは別のところにある技術の面は難しいので解決されないにせよ、貿易不均衡とか関税の面では、関税引き上げは避けられるのではないか」と今後の見方を示しました。しかし、これは、「交渉継続にすぎないのであって、経済の観点から見ると、不透明さが残る。米国からすれば、中国の誰と交渉するのがいいのか、事務方と協議しても本国に持って帰ったら、それは通らなかったということは、米国でも中国でもあることで、結局、首脳がやるしかないのではないか」と話しました。さらに、「首脳会談の結果にマーケットは好感するだろうが、先は見通せないのでは」と語り、逆の視点で、「最悪の事態は避けられるだろうと、あまりにシナリオが大丈夫、と見えすぎているのがちょっと気になる」と苦笑する安井氏でした。
アメリカでは、米中貿易摩擦を背景に、製造業を中心として、企業のマインドが悪化し、生産、設備投資、雇用にも影響が及んでいる。
18年後半以降、米中貿易摩擦や中国経済の減速により世界の財貿易の伸びは鈍化している。本項では、世界全体や各地域の財貿易の状況を概観し、過去の局面との比較を通じて今般の局面の特徴を考察する。
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