地政学的リスクとFOMC後の市場動向【外為マーケットビュー】
動画配信期間:公開日から2週間
外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。
動画の内容まとめ
地政学的リスクの一時的後退
昨日のマーケットはアメリカが休日で大きな動きはありませんでしたが、近日中の米国によるイラン攻撃の思惑からドル円は145円76銭まで上昇しました。しかし、レビット報道官が午前3時頃に会見を開き、トランプ大統領が2週間待つ決定を発表したため、原油価格は急落し、ドル円も円高方向に戻しました。
日本のインフレ率高止まりと関税の影響
今朝発表された日本のCPIは3.5%でしたが、生鮮食品を除く数字が3.7%、コアコア(生鮮食品・エネルギー除く)も3.3%と高い数値となりました。特に注目すべきは、米価が前年同月比101.7%とほぼ2倍になったことで、これが消費者物価上昇の大きな要因となっています。このインフレ率では本来利上げが必要な局面といえます。
ドル円の三角持ち合い形成
ドル円相場は膠着状態が続いており、年初高値158円からのトレンドラインが145.50円付近、下値は142.50円付近で硬く、三角持ち合いを形成しています。どちらかの水準を抜けた方向に動く可能性がありますが、膠着状態が長引く可能性もあります。
トランプ政権の政策不透明感
膠着状態の背景には、アメリカの関税政策の詳細が不明であることと、中東情勢へのアメリカの関与度合いが不透明であることがあります。トランプ大統領がイラン攻撃を検討したのは、ロシア・ウクライナ和平やガザ地区安定化、関税交渉など他の政策で大きな成果が出ていない中で、軍事行動による政治的得点を狙ったものと考えられます。
支持基盤からの強い反発
しかし、スティーブ・バノンやタッカー・カールソンなど従来からの支持層から「アメリカファースト」方針と矛盾するとの強烈な反発を受けました。トランプ大統領は大統領選でイラク侵攻を批判し、平和をもたらす大統領として米国民の税金を海外軍事目的に使わないと公約していたためです。この支持層の離反を考慮すると、2週間以内であってもイラン攻撃実行は困難と予想されます。
FOMCの二極化とパウエル議長の警戒姿勢
FOMCのドットチャートを見ると、3月時点では2回利下げ予想に多くが集まっていましたが、今回は2回利下げと政策変更なしの2つのグループに分かれました。これはトランプ政権の関税政策が不透明なため、様子見せざるを得ない状況を反映しています。
パウエル議長は関税引き上げを物価上昇要因と捉えており、成長見通しが1.7%から1.4%に下方修正され失業率上昇とインフレ率上昇が予想される中、関税によるインフレ率上昇への警戒が強く、比較的タカ派的なスタンスを示しました。
他国中央銀行の動向
スイス中銀は予想通り利下げを実施し政策金利は0%となりましたが、市場では更なる利下げ織り込みもありました。次回会合では0.25%利下げされ、-0.25%着地が予想されます。
イギリスは政策変更なしでしたが、決定が6対3で3名が利下げを主張するややハト派的な内容となり、8月には利下げ開始の可能性があります。
今後の見通し
ドル円は膠着状態のレンジがしばらく続く見込みです。ユーロドルはイラン攻撃懸念で一時崩れましたが、上昇トレンドは継続しており、再び高値挑戦の可能性があります。イランの参戦がなければ、ドル安傾向が続くと予想されます。
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志摩力男 氏
慶應義塾経済学部卒。1988年ー1995年ゴールドマン・サックス、2006-2008年ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダーを歴任、その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。独立した後も、世界各地の有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。
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ドル円は膠着状態のレンジがしばらく続く見込みです
ドル円相場は膠着状態が続いており、年初高値158円からのトレンドラインが145.50円付近、下値は142.50円付近で硬く、三角持ち合いを形成しています。どちらかの水準を抜けた方向に動く可能性がありますが、膠着状態が長引く可能性もあります。
昨日のマーケットはアメリカが休日で大きな動きはありませんでしたが、近日中の米国によるイラン攻撃の思惑からドル円は145円76銭まで上昇しました。しかし、レビット報道官が午前3時頃に会見を開き、トランプ大統領が2週間待つ決定を発表したため、原油価格は急落し、ドル円も円高方向に戻しました。
ドル円は膠着状態のレンジがしばらく続く見込みです。ユーロドルはイラン攻撃懸念で一時崩れましたが、上昇トレンドは継続しており、再び高値挑戦の可能性があります。イランの参戦がなければ、ドル安傾向が続くと予想されます。
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