週間ドル円分析:地政学的リスク後退とFRB内ハト派転換でドル売り加速【外為マーケットビュー】
動画配信期間:公開日から2週間
外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。
動画の内容まとめ
地政学的リスクの急激な変化とドル動向
今週は非常に忙しい1週間となりました。週初めにアメリカがイランの核施設を攻撃するという驚愕のニュースでスタートし、ギャップを伴ってオープンしました。アメリカも含めた大規模戦闘への発展懸念が高まり、有事のドル買いで原油価格も80ドル近くまで上昇しました。
しかし、イラン側からの反撃が非常に限定的だったため、収束期待から一気に反対方向の動きとなりました。その後、トランプ大統領がイランとイスラエルの停戦を発表したことで、さらにドル売りが加速し、一気にポジション調整が進みました。
FRB内部のハト派転換とボウマン副議長の方針変化
戦闘終了後、市場の焦点は関税政策と金融政策に移ると予想されましたが、驚くべき展開が待っていました。タカ派で有名なボウマン副議長が、昨年9月のFOMCで0.5%利下げに反対するほどタカ派姿勢を貫いてきたにも関わらず、突然7月利下げに前向きな発言を行いました。
副議長就任時にパウエル議長と何らかの約束があったのか、ハト派方向へのシフトを示唆する内容でした。ボウマン副議長は関税政策がアメリカのインフレ率押し上げに与える影響は最小限にとどまるとし、その場合7月利下げも可能との見解を示しました。
FRB理事のハト派転換と早期利下げ観測
ボウマン副議長とウォラー理事がハト派路線に転じたため、7月という早期利下げ観測が一気に高まり、市場ではドル売り競争が展開されています。
ドットプロットに見るFRB内の二極化
最新のドットプロットでは、2025年末の金利について利下げしないグループと2回利下げするグループに真っ二つに分かれています。パウエル議長は利下げしない側に、ウォラー理事やボウマン副議長は2回または3回利下げ側にいると推測されます。次期議長のハト派姿勢が明確になれば、パウエル議長もハト派方向に引きずられる可能性があります。
市場の利下げ織り込み状況
CMEウォッチでは、従来の2回利下げ予想から変化が見られ、最初の利下げが9月から7月に前倒しされる可能性も浮上しています。市場は既にアメリカの利下げを織り込み始めており、株価上昇と半導体株の強さが目立っています。
半導体関連とアジア通貨の強さ
AI関連の成長期待でNVIDIAがマイクロソフトを大きく引き離して時価総額1位となりました。半導体業界の好調さを背景に、TSMCなどの株価も好調で、台湾ドル、人民元、韓国ウォンなどアジア通貨が軒並み強くなっています。
ドル円分析と今後の見通し
これらの動きを受けてドル円も頭を押さえられ、ドルの下値模索となっています。昨日の安値143.75円から既に1円程度リバウンドしているため、この辺りから戻り売りが入りやすい状況です。
ユーロドルは堅調な上昇トレンドを維持しており、1.25が次のターゲットとなりそうです。ポンドドルも長期トレンドラインを上にブレイクしており、1.4375や1.42台が試される可能性があります。
月末リバランスとドル売り圧力
月末のリバランスではアメリカ株の強さを背景にドル売りが予想されますが、最近は月末リバランスの明確な動きが見られなくなっています。各企業が海外利益をドルに戻す動きを控えている可能性があり、ドルの構造的弱さが浸透していることが影響していると考えられます。
来週の注目材料と米雇用統計
来週は独立記念日の関係で雇用統計が木曜日に発表されます。先月は13.9万人と予想より強い結果でしたが、失業率は4.2%と4.3%に近い水準で、必ずしも良好とは言えませんでした。7月第1週は多くのアメリカ経済指標が発表されるため、これらの結果次第でドル売りがさらに進む可能性があります。
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志摩力男 氏
慶應義塾経済学部卒。1988年ー1995年ゴールドマン・サックス、2006-2008年ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダーを歴任、その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。独立した後も、世界各地の有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。
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ドル円は下値模索へドル売りが更に進行する可能性は 2025 6
――130円ですか。ちなみに今の日本経済を榊原さんが俯瞰(ふかん)して、理想のドル・円相場の水準はどの程度だと思われますか?
――今年のドル・円相場は、年始から急激に円安に振れて1ドル=160円前後で推移した後、一気に同140円台まで反転しました。為替相場についてどうご覧になっていますか。
結論から言えば、現時点で入手可能な情報に基づく限り、需給環境は2024年対比で「横ばいないし改善」を見込んでおきたい。
――今年4月から5月にかけて、そして7月にも行われたドル売り・円買い介入についてどう見られましたか。
貿易収支の仕上がりに最も大きな影響を与える変数はやはり資源価格、象徴的には原油価格である。これに関し、近年の原油価格(1バレルあたり)について通年平均を見ると、2022年に100ドル程度、2023年と2024年は80ドル程度だった。
主要通貨ペア(ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円、ポンド/円)について前営業日の値動きをわかりやすく解説し、今後の見通しをお届けします。
僕はいずれもう少し円高、1ドル=130円くらいになると思っているんですけどね。それほど遠くない、2025年頃にでもあり得ます。米国と日本それぞれの経済動向にもよりますが、米国経済がやや弱くなっていくと見ています。
――となると、一時の160円水準は、円安過ぎる?
160円台まで円安が進んだのは、日本経済を長期的に悲観した「日本売り」ではなく、日米の経済の相対的なポジション、金利差の拡大という理由があります。ならばここからは米国経済が弱くなりますから、金利差も縮まって、方向は円高でしょう。
僕は97年から99年まで財務官をやって、その間にドル売り・円買い介入もやりましたが、介入というのはサプライズでやると効くというのがやはり鉄則ですよね。予想されていない時期に、一気に大量にやるのが大切で、僕は自分の時はそれを心がけていました。自分で言うのはおかしいけれど、それでそこそこうまくいったんじゃないかとは思っています。
30日のドル/円相場は0.1%未満の小幅安。取引レンジは143.44~144.46円前後だった。世界的な貿易戦争を巡る懸念が上値を抑えた一方、月末に絡んだドル需要が下値を支える形で方向感が出ず、144.04円前後で5月の取引を終えた。なお、米国のトランプ大統領は取引終了後に鉄鋼・アルミ関税を6月4日から50%へ引き上げると表明。これを受けて本日のドル/円は143円台後半へとやや水準を下げて取引が始まっている。もっとも、トランプ氏は30日に「合意を完全に破った」と非難した中国については、習近平主席と会談する意向を示し対話に前向きな姿勢を強調。ハセット米国家経済会議(NEC)委員長は1日、今週中にも米中首脳電話会談が行われるとの見通しを示した。トランプ米政権の関税政策は硬軟織り交ぜながら遂行中と見られ、一方的なドル売り材料になりにくいと考えられる。本日のドル/円は143円台前半では底堅い一方で、144円台半ばでは上値が重くなりそうだ。材料面ではNYタイムに発表される米5月ISM製造業景況指数(予想49.5)に注目したい。そのほか、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がイベントに出席し開会のあいさつを行う予定となっている。
フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。
日米金利差がやや縮小し、円買いドル売り要因となった。


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