突然の診療休止発表 患者ら困惑
A医師(昭和59年医師免許取得)は、T大学医学部助手として、同大学医学部内科学四教室に所属していた。出向を終えた平成3年4月1日付けで、T大学附属病院での勤務を再開し、既に主治医であったN医師、G医師とともに、患者V(昭和8年生まれの男性・多発性骨髄腫の末期状態で以前より入院中)を担当することとなった。
日本病院会によると、日本の病院の約7割が赤字となっていて非常に厳しい経営を強いられています。病院の統廃合も進んでいて、兵庫・伊丹市の「近畿中央病院」も2年後の統合がすでに決まり準備が行われていますが、5月に「来年3月で診療を休止する」と発表されました。なぜ突然診療休止になったのか?困惑する患者たちの声を取材しました。
他方、A医師に有利な観点から酌量すべき事情として、A医師が勤務していた病院において、「末期患者やその家族に対するいわゆるケアのための体制は十分整えられていなかった」こと、「治療体制であるチーム医療に間隙が生じて十分機能せず一人の担当医に重荷が負わされるような事情が存した」点や、A医師が「本件行為に出るについては家族の懇願と強い要請があったのであり、・・・家族の意思が・・・末期医療の現場において大きな影響をもつ現実を考慮すると、それが医師の行為に適法性を付与するまでに至らない場合であっても、医師の行為の動機等として情状として考慮されてよい」との指摘、A医師は「末期医療殊に末期患者や家族へのケアについての十分な知識と経験があったわけではなく、治療行為の中止や早く息を引き取らせてくれとの要求に初めて出会って戸惑い、その心情を酌み取ろうとして迷い苦悩は深まり、家族の要請を拒み切れない心境になって本件行為に及んだ」ことなどを指摘しました。
さらに、A医師が「本件を原因に大学を懲戒解雇となり、以後自らも医師として活動することを慎んで本件について熟思し、被告人としての立場に相当期間置かれるなど相当な社会的制裁を受けているといえること、患者の家族においてもA医師に何ら悪感情を抱くことなく、刑事処分も望まない意思を有していることなど」を酌むべき事情として挙げ、懲役3年の求刑に対して、懲役2年、執行猶予2年の量刑としました。
患者に付き添っていた長男は、その後もVが荒い苦しそうな呼吸をしているため、苦しみをなくして静かに眠るように死亡させてやりたいと考えた。そして、午後5時30分頃、長男はエアウェイを外すようA医師に頼み、A医師はエアウェイを外すと呼吸ができなくなるおそれがあると説明したが、なおも長男が頼んだため、A医師は午後5時45分頃Vからエアウェイを外した。
「来年3月で診療休止」突然の発表に心臓の病気ある患者ら困惑「残してほしいと言ったけどできひんと」赤字続く中…統合が『2度延期』病院が苦渋の選択「これ以上続けるのは難しい」
「本件で起訴の対象となっているような医師による末期患者に対する致死行為が積極的安楽死として許容されるための要件をまとめてみると、1:患者が耐え難い肉体的苦痛に苦しんでいること、2:患者は死が避けられず、その死期が迫っていること、3:患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし他に代替手段がないこと、4:生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること、ということになる」と判示しました。
コメント