上昇基調の世界株 今後の展開は
●米国の景気指標には軟調なものが見られますが、①雇用情勢の安定、②物価上昇率の下げ渋り、③トランプ政権の関税引き上げに関する不透明感、などの要因を踏まえFRBは当面様子見を続ける見込みです。25年12月、26年6月の利下げ予想を維持します。●ユーロ圏経済の回復が緩やかにとどまり下振れ懸念も残るため、ECBは25年3月に0.25%の利下げを実施しましたが、今後も四半期に1回のペースで利下げを実施すると予想します。25年9月に政策金利を2.00%へ引き下げた後、様子見に転じるという見通しを維持しています。●日銀は基調的インフレ率を重視していると見られ、中立レンジの下限とされる1.00%まで、25年7月と26年1月に利上げすると予想します。
日米の株価指数は「ベアマーケット」寸前から脱「調整局面」まで回復しましたが、さらなる株価上昇のシナリオとしては、関税の撤廃や減税の進展、FRB(米連邦準備理事会)による利下げの実施、そして米国の景気や企業業績が無傷であることへの期待が挙げられます。ただし、これらが同時に実現する可能性は低いでしょう。加えて、4月上旬に安値で売りを仕掛けた先物勢が高値で買いを仕掛ける展開も考えられますが、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)とバリュエーション(投資尺度)を踏まえれば、先物勢主導の相場は長続きしにくいと予想されます。
2024年にリニューアルした新NISAにより、2024年のNISA枠での有価証券買付額は前年の約3.3倍もの急増となった。また、銀行なども含む全金融機関で開設されたNISA口座は436万口座の増加(計2,560万口座)と、年間の増加数としては過去最大となった(図表1)。これは、長らく続いたデフレによる低金利や公的年金に対する不安などを背景に、個人による資産運用の必要性が高まっている中で、賃金の上昇や市況の好転とNISA制度の改正がマッチした結果といえよう。
●米国株式市場は、AI関連銘柄などハイテク銘柄を中心に優良銘柄の業績が拡大しています。一方で、ハイテク株を中心にS&P500種のバリュエーションは歴史的に見ても高く、関税引き上げに伴う貿易相手国との対立の激化などの悪材料に大きな影響を受けやすい状態です。ただし、最近の株価の下落で、悪材料はある程度織り込まれたと見られるため、今後は業績の拡大に合わせて徐々に下値を切り上げる展開を予想します。●日本株式市場は、日銀の金融政策、為替レート、トランプ政権の政策に関する不透明感が強く、神経質な展開が続く見込みです。日本の景気回復や株主還元の強化などガバナンスの改善に市場参加者の関心が向かえば、日本株の上昇につながるでしょう。ただし、4月は、例年、自社株買いが少なくなることには注意が必要です。夏の参院選に向け各党による支持率向上を意図した経済政策や賃上げの動向がより重要性を増すでしょう。
なお、MAG7などのハイテク株は、高い人気を背景に、近年の米国株のけん引役となってきました。ただ、投資マネーが極端に集中した結果、MAG7の時価総額は11月末時点でS&P500指数の時価総額の32%近くに達しています(図表2)。そのため、何らかのきっかけ(例えば予期せぬ米長期金利の上昇など)でMAG7の株価が調整すれば、S&P500指数や米国株式市場全体に影響が及ぶ恐れがあり、この点には注意が必要です。
3月の主要な株式市場では、米国、日本など先進国市場は下落しました。米国株式市場ではS&P500種指数の直近の高値からの下落率が、一時、調整局面入りの目安である10%を超え、日経平均は直近高値から10%以上下落しました。米国、日本ともに半導体、情報テクノロジー株が下落し、中国でも情報技術セクターは調整しました。日米ともに、①景気悪化リスクが高まる中で緊縮財政政策がとられ、②物価上昇率の高止まりから金融緩和も期待できないため、トランプ政権が新たな関税政策を発動するたびにリスクオフ状態となり、株価は下落しました。他の地域も、財政出動あるいは金融緩和が行われているものの、トランプ関税に対する懸念から株価指数はほぼ横ばいあるいは小幅に下落しました。例外的に、インド株は海外資金の流入により上昇しました。
●グローバルリート市場(米ドルベース)は、トランプ政権による関税の引き上げや景気悪化リスクが警戒され、構成ウェイトが大きい米国リートが下落した影響を受けました。欧州の下落は、長期金利上昇の影響と見られます。S&Pグローバルリート指数のリターンは前月末比▲3.1%となりました。また、円ドルレートが若干円高となったため円ベースのリターンは同▲3.8%となりました。●シンガポール市場では金利が高止まりしているため、リート市場の回復期待が縮小したようで、パフォーマンスは低調でした。日本では長期金利が上昇しましたが、悪材料出尽くし感と分配金利回りの高さが評価され、リート市場は反発しました。リートによる物件の売買が活発化しており、優良物件購入のために、保有物件を売却する例が増えているようです。香港では、香港経済回復に対する期待から、リート市場の回復が続いています。
●米国の25年の実質GDP成長率見通しは2.0%、26年は2.2%とし、25年の見通しを0.4%、26年を0.2%下方修正しました。トランプ政権による関税引き上げの影響や26年の減税規模が限定的になる公算が大きくなったことを考慮しました。企業の収益性が高く、雇用情勢が安定しているため、景気腰折れは回避できる見通しです。今後、政策の不透明感が低下すれば、景気は回復に向かう見込みです。●欧州では、25年の成長率見通しを0.1%、26年を0.3%引き上げました。トランプ関税の影響が懸念されますが、エネルギー価格が低位安定していることと欧州連合(EU)およびドイツの財政支出拡大のプラス効果が期待できます。防衛支出拡大の寄与は、26年から本格化する見通しです。●日本では、24年度0.7%、25年度1.0%、26年度0.9%の経済成長を予想します。24年度を0.1%、25年度を0.3%下方修正しました。足元の個人消費関連統計がやや軟調であることや物価上昇率が高止まりしているため、25年前半を中心に成長率を下方修正しました。●中国では、25年4.4%、26年4.0%の成長を予想しています。①買い替え補助などの恩恵で携帯電話端末販売が回復、②データセンター向けの投資の拡大、などハイテク関連が従来想定以上に好調なため、25年の成長率を0.4%上方修正しました。●豪州は、中国景気の低迷により商品市況の下落が懸念されますが、雇用環境は良好な状態を保っており、2月にはオーストラリア準備銀行(RBA)が利下げを行いました。個人消費など内需が底堅く推移することで景気は徐々に回復するとの予想を継続します。
●グローバルリート市場は、長期金利動向に左右される不安定な展開が想定されます。欧州では長期金利が高止まりしているため、域内の経済情勢が改善しても、不動産評価額の回復が後ろ倒しになりそうです。●米国リート市場では、データセンターとヘルスケアセクターのシニアハウジングの高成長が続く一方で、景気悪化リスクが以前より増しており、様子見姿勢が強まりそうです。アジア・オセアニアでは、シンガポールでの緩やかな業績改善がプラス要因です。豪州では不動産価格が底打ちしましたが、リートは割高と意識されていることが懸念材料です。日本は割安感や良好なファンダメンタルズが追い風ですが、日銀の利上げ観測や買い手不足が重しとなっています。投資家の目はリートより不動産株に向いているようです。自己投資口取得などの自助努力で、中長期的には上昇すると予想します。
約3カ月間で日経平均は9000円ほど上昇しており、急速な株価回復に慎重な見方も出てきている。BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストは「市場全体では利益予想の下方修正が続いており、さらなる上昇には実際に業績が上向いていることを確認する必要がある」と指摘する。
米国の10年国債利回り(長期金利)は、月間ではほぼ横ばいでした。月初は低下しましたが、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、パウエル議長が「政策調整を急ぐ必要はない」とコメントすると長期金利は反転しました。欧州中央銀行(ECB)は追加利下げを行いましたが、ドイツの財政拡張政策転換を受け、長期金利は上昇しました。日本の長期金利は、米などの食品やエネルギー価格の上昇を受け、1.5%を上回って推移しました。
2024年の米国株は堅調に推移し、ナスダック総合株価指数は33.4%、S&P500種株価指数は26.6%、ダウ工業株30種平均は14.9%、それぞれ上昇しました(昨年末から12月24日まで)。特に、米エヌビディアなど、時価総額の大きいハイテク7銘柄「マグニフィセント・セブン(壮大な7銘柄、MAG7)」は好調で、マイクロソフトを除く6銘柄が、ナスダック総合指数の上昇率を上回りました。
27日の東京株式市場は、プライム市場の上場銘柄は7割超が上昇し、日経平均株価は終値として約半年ぶりに4万円台を回復、2日間での上昇幅は1200円を超えた。アメリカの主な株価指数S&P500も上昇ピッチを強め、27日には、2月につけた最高値を上回ったほか、ハイテク銘柄が多いナスダック総合株価指数も約半年ぶりに最高値を更新した。
●円の対米ドルレートは、①米国の景気減速懸念から米国長期金利が低下したこと、②日銀の追加利上げ観測の浮上、などから3月10日に146円台まで円高が進みました。米長期金利の反転とともに150円台まで円安となりましたが、月末はリスクオフの雰囲気となり再び円高傾向になりました。月間での変動は0.4%の円高と1円未満の変動となりました。●ドイツが財政政策を拡張方向に方針転換し、ドイツの長期金利が日本の長期金利より大きく上昇したことが、ユーロ高の要因となった模様です。●円の対豪ドルレートは、円安方向に動きました。RBAは、豪州の消費と労働市場が堅調なことなどを背景に、さらなる政策金利引き下げについては慎重姿勢を見せています。日銀の再利上げ観測が浮上しましたが、3月は円安方向で推移しました。
●米国では、トランプ政権の経済政策が市場参加者に金利上昇リスクを意識させるため、当面長期金利は足元の水準に高止まりすると予想します。●欧州では、ドイツが財政拡張へ政策転換した影響は織り込み済みで、インフレ率低下を背景に今後長期金利は緩やかに低下すると予想します。●日本の長期金利は、日銀の国債買い入れ減額が行われる一方で、利上げが進むとの予想から国債の投資家需要は弱く、上昇し易い状態にあります。


コメント