コメ急騰 米菓店主はコンビニ夜勤
昨夏は南海トラフ地震臨時情報などを受け、コメを買いだめしようとする消費者が急増した。しかし新米が出回った後も、下がると思われていた米価は上昇を続けた。
主食用米を使っている光央さんは「いくらかコメ全体の値段が下がった。皆喜んでいるから良いのではないか」と評価する。
コメ政策を考えるポイントは何か。三井住友信託銀の貞清さんは「何かショックがあっても足りるぐらい、供給量を増やしていく必要があるのではないか」と指摘し、「コメの安定供給という視点に立ちつつ、どのような仕組みで急な価格変動も抑えることができるか。政策議論を深めてほしい」と呼びかける。
石破首相がコメ増産表明 「生産者の所得確保」「新たな政策に転換」
食卓に並ぶコメの価格は昨年夏から今年春にかけてほぼ右肩上がりになった。全国のスーパーでの販売価格(5キロあたり)は、昨年夏ごろまで2000円台前半で推移していた。しかし、今年6月上旬までに前年比で2倍近い4000円台で推移するようになった。この間、他の食料品価格も上がり、家計の圧迫に拍車をかけた。
気になるのは、コメの値段が今後どうなっていくのかだ。規史さんは「もし上がったら、販売価格も上げるしかない」と話す。経営を譲った光央さんも「価格を上げないと利益が少ないまま。ここは自分の家だから固定資産税を払うだけだけど、賃貸だったらやっていけない」とつぶやく。
「もし(またコメの値段が)上がったら、販売価格も上げるしかない」
参院選ではコメ政策の行方に注目が集まっている。「令和のコメ騒動」は食卓だけでなく、日本伝統の米菓作りにも影響を及ぼしており、原料となるコメの仕入れ値は上昇傾向が続く。埼玉県草加市の老舗せんべい店は、客離れの不安から値上げに踏み切れず、4代目の岩立規史(いわたて のりふみ)さん(51)が週5日、コンビニエンスストアの夜勤に入って生活費を稼いでいる。
主食用米を巡っては、品薄感を背景に価格が上昇している。農協(JA)などのコメ集荷業者が卸売業者に販売した相対取引価格(農林水産省発表、玄米60キロあたり税込み)は、2024年産米だと出回り後から今年5月までの平均が2万4686円。23年産米の平均と比べ1・6倍に跳ね上がった。
一方、加工用米で酒や米菓などを作る業界団体も安定供給に気をもんでいる。全国米菓工業組合など7団体は1日、小泉農相に対して業界向けの備蓄米放出などを要望した。
参院選ではコメ政策の行方に注目が集まっている。「令和のコメ騒動」は食卓だけでなく、日本伝統の米菓作りにも影響を及ぼしており、原料となるコメの仕入れ値は上昇傾向が続く。埼玉県草加市の老舗せんべい店は、客離れの不安から値上げに踏み切れず、4代目の岩立規史(いわたてのりふみ)さん(51)が週5日、コンビニエンスストアの夜勤に入って生活費を稼いでいる。
コメ騒動に揺れる伝統の食文化 週5でコンビニ夜勤に入る老舗せんべい店主…米価また上がったら「値上げしかない」
コメ政策を巡っては、与野党ともに参院選の公約に改革案を掲げている。与党は、安定的な経営ができる水田政策の見直しや、農地の集約・大規模化で所得向上を目指す方針などを示す。野党は、コメ価格の安定化に向けて農業者に交付金を支給する制度や、事実上の減反政策の転換を求める政策などを掲げる。
今回のコメ騒動は、コメを含めた日本の農業が抱える根本問題でもある、生産者の減少や供給不安を浮き彫りにした。主に農業で生計を立てる基幹的農業従事者は過去20年で半減した。平均年齢は70歳近く、引退による農家の激減は目に見えている。作付面積もこの10年で1割強減少した。意欲のある担い手への農地継承などを加速させなければ、農産物の生産・供給体制の先細りは避けられない。
店ではこだわりのコメで作った生地の一部を市内の別のせんべい店などにも売るが、その卸値は段階的に値上げに踏み切った。一方、店頭の小売りでは、昨秋のコメ高騰後に枚数を減らしたものの、価格は据え置く。「天日干し炭火手焼(堅焼)7枚入り」の値段は864円のままだ。
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