日鉄がいかに誠実なパートナーシップを築けるかが 今後の鍵となる
■日鉄、米大統領ら提訴(1月7日・日経)=日鉄と日鉄米子会社、USスチールの3社が、「対米外国投資委員会(CFIUS)」とバイデン氏、CFIUS議長のイエレン財務長官、ガーランド司法長官の4者を相手取り、米連邦控訴裁判所に、買収を巡り不当な政府介入があったとして6日付で提訴した。さらにクリーブランド・クリフス、同社のゴンカルベスCEO、USWのマッコール会長を相手取りペンシルベニア州西部地区連邦地方裁判所にも提訴した。
*日鉄はUSスチール買収に不退転の覚悟で臨む。米国は先進国では例外的に人口増加が続く。製造業の米国回帰も進むなか、今後も堅調な鋼材需要が期待できる。
■バイデン氏、USスチール買収阻止へ(9月5日・夕・日経)=日本製鉄によるUSスチールの買収計画にバイデン米大統領が中止命令を出す方向で最終調整に入ったFTはCFIUSが日鉄に安全保障上の懸念があると伝えたとし、バイデン氏が、数日内に決断する見通しだと報じた。
*日鉄、証拠集めへ2方面作戦(1月7日・日経)=行政訴訟と民事訴訟の2方面作戦には「大統領と労組会長らの結託」の証拠を集める狙いがある。クリフスは米鉄鋼2位の大手で23年7月にはUSスチール買収に名乗りを上げたが日鉄に競り負けた。日鉄は、クリフスが日鉄に対する組織的な中傷や虚偽の発信を繰り返すなど「反競争的かつ組織的な違法活動を行った」としている。ただ、長期間の裁判になりそうだとの意見が専門家の間では多い。大型の裁判では、本格的な審理が始まるまで1年以上かかるケースもある。
■トランプ氏、日鉄のUSスチール買収「阻止」(12月4日・日経)=トランプ次期米大統領は2日、USスチール買収計画に「「私は買収計画を阻止する。買収者は注意することだ」とSNSに投稿した。
その一方で、製鉄所新設による地域経済の活性化や新規雇用の創出は、地方自治体や一部議員にとっては“選挙戦略”にも結びつく好材料だ。日鉄がいかに誠実なパートナーシップを築けるかが、今後の鍵となる。
日本製鉄は、買収に成功した米USスチールを通じ、米国に新しい製鉄所を設ける。朝日新聞のインタビューに応じた日鉄の橋本英二会長は、日米連携のもとでUSスチールを米国のトップメーカーに復帰させる意欲を示し、「先端技術で中国の追随を許さない」と話した。
*日鉄、高級鋼市場に的 4兆円投資回収に自信(5月25日)=巨額投資の勝算は米国市場の有望さにある。「米国は世界最大の高級鋼市場」(日鉄)であり、性能の高い自動車などの最終製品が求められ、日鉄の技術力を生かして利幅を確保しやすい。日鉄の資料によると、米国の年間の鉄鋼消費量は9500万トンだが自給率は69%の6600万トンにとどまる。日鉄が高効率な最新設備を設ければ、市場開拓の伸びしろは大きい。市場開拓には投資金額の使い道がカギとなる。一つは自動車用鋼板だ。ボディーなどに使う「ハイテン(高張力鋼板)」や電動車のモーター用の電磁鋼板を生産する可能性がある。もう一つは電炉設備だ。米国は電炉の原料となる鉄スクラップの蓄積量が多く日本よりも電炉が普及している。電炉先進国の米国で知見を蓄え、日本や海外でも相乗効果を得られる可能性がある。
焦点は、日鉄の提示した「140億ドル超の投資」が、政権中枢にとってどれほど説得力を持つかにかかっている。ホワイトハウスのコメントは得られていないが、関係者によれば「投資額の増額は政権側からの示唆でもあった」との情報もあり、今回の提案は“米政権との対話結果”とも解釈できる。
また、トランプ政権による「米国製優遇」方針への適応も見逃せないポイントである。日鉄の今回の提案には、新政権が求めている「雇用創出」「インフラ投資」といった要素が強調されており、単なる買収ではなく「米国に根を張る投資」としての側面が強調されている。
■日鉄、USスチール買収計画を再申請(9月24日・夕・日経)=日鉄は9月23日までに米鉄鋼大手USスチール買収計画の審査について対米外国投資委員会(CFIUS)へ再申請した。従来の審査期間は23日までだったが、再申請により審査期間は90日間延びる。
*日鉄、5000億円借り入れ(6月20日)=買収資金の2兆円は金融機関から調達したブリッジローン(つなぎ融資)で払い込んだ。有利子負債は足元の日本製鉄分とUSスチール(25年3月末で6000億円)を合わせると全体で約5兆円に膨らむ。投資家の視点は財務戦略に移る。買収資金の借り換え・返済や、製鉄所新設などのための資金確保が欠かせない。負債圧縮やUSスチールの利益成長など対応すべき課題は多い。日鉄は19日にかけ、特殊な方式による5000億円の借り入れ策を示したほか、増資も視野に入れていると述べた。
「米国で本格的に事業を展開したい当社と、製造業復活を目指す米国政府の目的が合致した」。日鉄の橋本英二会長は19日の記者会見でこう述べ、今回の買収は日鉄とUSスチール、米政権にとって互いに有益なものだと強調した。
買収という言葉には、いつだって力がある。それは金で解決するということ、あるいは持たざる者が持つ者になるという意思表示だ。だが今回の日鉄の提案は、単なる“企業の強化”ではない。むしろ、時代が動く音がする――そんな予感を抱かせる。
■日鉄のUSスチール買収、トランプ氏「認めず」(8月30日・夕・日経)=トランプ前大統領は29日、11月の大統領選で再選すれば、日本製鉄によるUSスチール買収阻止を明言した。


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