若者酒離れに風穴 サントリー戦略
北米市場: 北米(特に米国)はRTDの新フロンティアであり、高成長が期待される市場です。米国では2019年頃からハードセルツァー(糖類発酵の低糖スパークリングアルコール)がブームとなりRTD市場全体が急拡大しました。その後成長はやや落ち着いたものの、プレミックスカクテルやスピリッツベースRTDが引き続き2桁成長しています。サントリーは米国RTD市場参入に積極的で、2024年に「-196」を21州で展開すると発表しましたsuntory.co.jp。米国市場の魅力は人口規模の大きさと、お酒の多様化ニーズです。ROIの面では、現地生産または提携によって物流コストを下げれば十分高利益が見込めます。価格帯も日本より高めに設定できる余地があり(輸入プレミアム感)、一旦ヒットブランドを確立できれば国内以上の収益源となるでしょう。ただし競合も激しく、米大手(ABインベブ傘下のボストンビール社など)もRTDに注力しているため、過剰なプロモーション費用が必要になる可能性もあります。総じて北米は攻め甲斐のある市場で、中長期で各社のROI向上に大きく寄与しうる地域です。
こんにちは、戦略分析ラボです。サントリーは、日本を代表する飲料・食品メーカーとして、アルコール飲料から清涼飲料、健康食品まで幅広い事業を展開しています。国内市場の成熟化が進む中、グローバル市場での成長や、健康志向の高まりを背景とした新たな製品開発が重要な戦略テーマとなっています。
平野さん:入社4年目の若手社員ですが、とてもしっかりしていて本当に助けてもらっています。彼女自身が20代なので、若者の流行やリアルな感覚を教えてもらったりして、とても刺激を受けています。
低アルコール(ライト系)RTD: アルコール度数3~5%程度のRTD(例:サントリー「ほろよい」、各社カクテル系)は、若者やお酒に強くない層に支持されるカテゴリです。売価はストロング系よりやや低めに設定されることが多いものの、原材料コスト自体は大差なく、また容量・包装も同じです。そのため単価あたりの利益率はストロング系より低めになります。ただしライト系は差別化要素(可愛らしいデザイン、季節限定フレーバー等)で付加価値を付けやすく、上手くヒットすれば安定した売上を稼げます。実際「ほろよい」は発売以来ロングセラーとなり、マーケティングコストを抑えて高いROIを実現しています。一方でライト系市場全体の成長性は近年やや鈍化傾向にあります。背景には若年人口の減少や、甘味系飲料ブームの落ち着きがありますjp.reuters.com。将来予測として、低アルコールRTDの市場規模は緩やかな縮小か横ばいを想定します。ライトユーザー自体がノンアル飲料へ移行するケースや、ビール系飲料に回帰する動きも考えられるためです。ただしゼロカロリー・機能性付与など新たな付加価値次第では再成長もあり得るため、各社が商品開発でテコ入れすればROIは一定水準を保てるでしょう。
成長期(1990年代~2000年代): 1990年代には缶チューハイの市場規模が拡大し、多様なフレーバーの商品が登場しました。2000年代に入るとRTD市場は飛躍的に成長を遂げます。特に2001年にキリンビールが発売した「キリン氷結」はフレッシュな果汁感と手軽さで大ヒットし、以降長年トップブランドとして市場を牽引しましたjp.reuters.comjp.reuters.com。各社は競って新製品を投入し、RTD市場は9年連続で二桁成長(2007~2016年)するなど顕著な拡大を続けましたjp.reuters.com。この間、商品のトレンドも**「低アルコール・甘い系」から「高アルコール・甘くない系」へ**とシフトしていますjp.reuters.comjp.reuters.com。たとえばアルコール度数3%前後の甘味系チューハイの人気が一巡する一方、2010年前後からアルコール7~9%の「ストロング系チューハイ」が急伸し、2011年からの5年間で高アルコールRTD市場は2倍以上に拡大しましたjp.reuters.com。背景には「食事に合うお酒」としてビールから流れてきた消費者の需要取り込みがありますjp.reuters.com。実際、「‐196℃ストロングゼロ」(サントリー)は“食中酒”を前面に打ち出し市場を拡大させましたjp.reuters.comjp.reuters.com。さらにリーマンショック以降の景気停滞期には、「安価で手軽に酔える」高アルコールRTDの人気が高まる傾向も指摘されていますjp.reuters.com。
日本酒・焼酎・ワインとの関係: これら伝統酒類はRTDとは用途・シーンが異なる部分も多いですが、広義にはアルコール嗜好品として代替関係にあります。ワインは食中酒としてビールよりRTDと競合しにくいものの、若者がお洒落な宅飲みでスパークリングワインや缶チューハイを選ぶ場面ではシェア競争が起きています。日本酒・焼酎はRTDに流出した飲客を取り戻そうと、低アルコール日本酒や炭酸割り専用焼酎など新商品を模索しています。将来的には、たとえば地酒メーカーが自社の果実酒を使ったRTD缶を発売するなどコラボもあり得ます。つまり既存酒カテゴリーもRTD的な手軽さを取り入れる方向に進化する可能性があり、境界線は薄れていくでしょう。これにより消費者はますます横断的に酒類を楽しむようになると予想されます。RTDメーカーにとっては、他カテゴリと争うだけでなく協業(梅酒RTD化、日本茶サワー開発など)によって新市場創造するチャンスもあると言えます。
アジア・オセアニア市場: アジアでは、日本発のチューハイ文化が徐々に浸透しつつあります。特に東アジア(中国・韓国・台湾)では日本食ブームに乗り、日本式レモンサワーへの関心が高まっています。サントリーは2016年に韓国へ「ほろよい」を輸出開始jp.reuters.com、2023年には中国本土で「-196℃」販売を開始しましたsuntory.co.jp。中国市場はポテンシャルが非常に大きく、成功すればROIは飛躍的に高まります。もっとも中国では清涼飲料系RTD(例えばコーラ味チューハイ等)の方が受ける可能性もあり、各社試行錯誤が必要です。オセアニアでは、オーストラリアが注目市場です。豪州は1人あたりのアルコール消費量が多く、RTD(現地ではプレミックスと呼ぶ)の人気も高い土壌があります。サントリーはBeam Suntory傘下のネットワークを活用し、2018年から豪州において「-196℃」を現地主力のウイスキー系RTDに続く新ジャンルとして投入、成功を収めましたsuntory.co.jp。豪州での実績を見るに、適切にローカライズすればROIは非常に良好です。実際サントリーは豪州を足掛かりに欧州・東南アジアにも展開を広げ始めておりsuntory.co.jpsuntory.co.jp、グローバル売上目標(2030年に30億米ドルsuntory.co.jp)に照らしてもアジア・オセアニアでの貢献度は大きいでしょう。東南アジア諸国でも、タイやベトナムなど親日国を中心にチューハイ輸出が始まっています。ただアジア諸国は嗜好の違いが大きく、甘味や香りの調整が必要なこと、所得水準の関係で高価格品は限られることから、短期的な爆発成長は読みづらいです。とはいえ中長期では人口増と経済発展に伴い市場拡大が見込まれるため、ROI改善に寄与する重要地域となるでしょう。
短期(今後1~3年): サントリーはRTD市場で独走態勢にありますが、慢心せず短期でも攻め続けることが重要です。まず短期的には、既存トップブランドの維持と市場伸長の牽引に焦点を当てます。具体的には、「-196℃ストロングゼロ」について昨今高まる健康批判に対応すべく、マーケティングメッセージを調整します。度数9%の訴求を過度に強調せず、「食事に合う旨さ」「糖類ゼロの爽快さ」を前面に出し、適正飲酒と旨さの両立をPRします。同時に、既に開始したストロングゼロのブランドリニューアル(名称を「-196」に簡素化するなどgenspark.aigenspark.ai)を消費者に浸透させ、新鮮なイメージを与え続けます。「ほろよい」に関しては、引き続きZ世代の支持を盤石にするため、SNS映えするコラボ企画(人気キャラクターやトレンドスイーツ味とのコラボ)や期間限定フレーバーを矢継ぎ早に展開します。ただし味のクオリティは落とさず、「全部美味しい」という信頼感を損なわないよう品質管理を徹底します。短期においてサントリーは最強ブランドを多数抱える強みがあるため、競合の出方に応じた迅速な防御も意識すべきです。例えばアサヒのGINONが伸びてきたら、即座に対抗する無糖ジンベース商品を自社から投入するなど、後手に回らないようにします。営業面では、昨今チューハイ需要増に応じて生産・物流体制の逼迫が報じられました。短期的には不足リスクを避けるため生産ラインの増強と在庫適正化に努めます。実際サントリーは2023年に既にRTDの増産体制強化を発表しておりienomistyle.com、これを確実に実行し旺盛な需要に応えます。短期の数値目標としては、国内RTDシェア首位を盤石にし(シェア30%以上キープ)、営業利益も前年超過を維持することです。
代替商品の台頭: アルコール市場全体で見れば、ビール・ワイン・清酒・焼酎など伝統的酒類もRTDの競合です。景気や気温などで消費者の嗜好は流動的で、「やっぱりビール回帰」「ハイボールブーム再燃」などトレンド変化でRTD人気が相対的に陰る可能性もあります。またノンアルコール飲料の進化も無視できません。最近では「ノンアルコールチューハイ」や「モクテル(ノンアルカクテル)」が充実してきており、休肝日用やソフトドリンク代替として市場を広げています。サントリー「のんある気分」やアサヒ「スタイルバランス」などが人気を博し、アルコールを摂取しない選択肢が定着すればRTDの成長にブレーキがかかるでしょう。また長期的には若者の嗜好変化(「お酒より他の娯楽」志向)や健康志向による低アル商品・機能性飲料へのシフトが進むと、RTD需要そのものが頭打ちになるリスクがあります。
これまでの分析(SWOT分析、3C分析、STP分析、4P分析)を通じて、サントリーの強みや課題、競争環境、マーケティング戦略を明らかにしてきました。本記事では、それらの分析を総括し、今後の成長戦略を考察します。特に、「グローバル市場でのブランド強化」「健康志向の製品開発」「デジタルマーケティングの進化」の3つの施策を中心に、サントリーが持続的成長を遂げるための方向性を示します。
サントリー(Suntory)のRTD事業: サントリーは現在、国内RTD市場で最大のシェアを握るリーディングカンパニーです。その成功の鍵は、幅広い商品ポートフォリオと革新的な技術にあります。まず若年層・ライト層向けの**「ほろよい」はアルコール3%前後のカクテル風味飲料で、「カワイイ」パッケージと季節ごとの多彩なフレーバー展開により新規ユーザーを大量に取り込みました。対照的に「-196℃ストロングゼロ」はアルコール9%のキレ味するどいサワーで、“食事に合う糖質ゼロチューハイ”を掲げビール愛飲層まで取り込んでいますjp.reuters.com。この高低アルコール二極の両輪戦略がサントリーRTDの最大の強みで、気分やシーンに合わせてブランドを使い分ける提案が奏功しました。技術面でも、果実を-196℃で瞬間凍結・粉砕して浸漬する独自製法suntory.co.jpを開発し、ストロングゼロで果実まるごとの風味を再現した点は革新的でした。さらにウイスキー事業の伝統を活かし、「角ハイボール缶」「ジムビームハイボール缶」などウイスキーベースRTDも手掛け、市場全体を開拓しています。2020年代に入るとサントリーはRTD国内首位の座に満足せず、「RTD世界No.1」を目標に掲げグローバル展開を加速しましたasahi.com。海外ではオーストラリアで「-196℃」を現地仕様にローカライズして成功させたほかsuntory.co.jpsuntory.co.jp、2023年には中国市場にも参入し好調な滑り出しを見せていますsuntory.co.jp。こうした攻勢に支えられ、サントリーのRTD事業売上は年々拡大し、2023年のビール・RTD合算売上ではビール各社中トップとなりました(ビール類とRTD合計で前年比109%)ienomistyle.com。ブランドポジショニングでは、「ストロングゼロ」で高アルコール市場の圧倒的王者として君臨しつつ、「ほろよい」で新規層を囲い込み、「こだわり酒場のレモンサワー」など居酒屋系レシピの商品も展開して幅広い層にリーチ**しています。サントリーの弱みを挙げるとすれば、ストロング系に偏った売上構成から来る健康リスク批判への対処ですが、同社も無糖・中アルコール新商品(例えば5%の「サントリー芳醇レモンサワー」等)を開発し、バランスを取る戦略を取り始めています。総合的に見て、サントリーはRTD市場で商品・マーケティング・国際展開のすべてにおいて一歩先を行っており、他社に対する競争優位を維持しています。
さらに、期間限定商品が若者にブレーク。「ほろよい〈フルーツレインボー〉」は23年に発売した新商品の平均比約120%という売れ行きを記録した。近年、レモンサワーや同社の「バー・ポームム」など、新ジャンルのRTD(レディー・トゥー・ドリンク)が人気を獲得する中、“元祖”若者向けのお酒ともいえる同商品は、いかにして若者の心を捉え続けているのか。
成熟期(2010年代後半~2020年代): 2010年代後半になると、RTD市場は国内酒類市場における主要な成長分野として確立され、ビール各社が「主戦場」と位置付けるまでになりましたjp.reuters.comjp.reuters.com。サントリーの「-196℃ストロングゼロ」や「ほろよい」、キリンの「氷結」シリーズ、アサヒの「もぎたて」(2016年発売)などがヒットし、新商品も次々投入される熾烈な競争市場が形成されていますjp.reuters.com。2019年時点では、アルコール度数7%以上のRTD出荷量が2009年比で約4.6倍(2,286万ケース→1億0612万ケース見込み)に増加したとの調査もありますzeiri4.com。2020年代に入ってもRTD市場は拡大傾向を維持しており、2021年には14年連続で市場規模が過去最大を更新しましたjmrlsi.co.jp。もっとも2022年はコロナ特需の反動や外食復調により一時的に前年比99%と微減しましたが、2023年に市場は再び持ち直し、2024年も堅調な推移が見込まれていますjmrlsi.co.jp。
一方ブランド別の人気では、キリン「氷結」とサントリー「ほろよい」が常に上位争いを演じています。JMR生活総合研究所の消費者調査(2025年版)によれば、直近でも「氷結」は認知度・購入経験・リピート意向など全項目で首位、2位に「ほろよい」が付け、3位グループをアサヒ「贅沢搾り」やコカ・コーラ「檸檬堂」が競る状況でしたjmrlsi.co.jp。特に若年層に人気の低アルコール甘味系「ほろよい」と、定番フルーツチューハイの「氷結」は拮抗しており、今後も市場シェアをめぐる競争が続くとみられますjmrlsi.co.jp。
まとめ: 地域別に見ると、日本国内は大きな投資なく着実な利益を生む「キャッシュカウ」市場、北米・中国など海外新興市場は「将来の成長ドライバー」で一時的な投資負担はあるが高ROIが見込める市場と位置付けられます。各社とも国内収益で得た資金を海外成長市場に投下し、グローバルでの収益拡大を図る戦略を取っています。実際、サントリーHDやアサヒGHDは売上の半分以上を海外で稼ぐようになっておりnna.jp、RTD事業も例外ではありません。特にサントリーは**「2023年時点でRTD世界シェア3位、これを1位に引き上げる」**目標を掲げておりasahi.com、世界展開による売上・利益成長に自信を示しています。グローバル市場全体で見ればRTDは年10%超の成長が続く見通しでasahi.com、2030年には市場規模が2020年比約1.4倍になるとの予測もありますasahi.com。したがって各社RTD事業のROIも、グローバル展開次第では今後大きく向上し、酒類事業の稼ぎ頭に成長する可能性があります。


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