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トランプ政権の特別職員とテスラ(Tesla)の経営者というイーロン・マスク氏の「二刀流」が始まってから初めての決算となった2025年第1四半期(1Q)決算は、売上、利益ともに減少し、これまで順調だったテスラ(Tesla)の成長に、一服感が生まれ、市場の懸念を裏付けるような内容となりました。
果たしてこの厳しい状況は今後も続くのでしょうか?その試金石となるのが、間もなく発表される2025年第2四半期(2Q)の決算です。この4月から6月までの業績はどうだったのか。今回はテスラ(Tesla)が事前に示した2Qの見通し、自動車担当の米証券アナリストなどの予測も踏まえながら、テスラ(Tesla)が打つ次の一手はどのようなものなのか。2Q業績予想の数字に隠された意味を探ってみましょう。
(1)テスラ(Tesla)直近の決算内容と2Qの業績予想
まずテスラ(Tesla)が発表している四半期ベースの損益計算書で2023年3Qから2025年1Qまでの結果と2025年2Qの予想を見てみましょう。


上述した図表からも分かる通り、同社は2025年(FY25)2Qの業績について、かなり厳しい内容を予想しています。そこには複数の根深い要因が存在します。
1)EV需要の減速と競争の激化
世界的にEV市場の成長が鈍化しています。特に中国や欧州では現地メーカー(BYDなど)との競争が激化。さらに各国の補助金縮小も重なり、消費者の購買意欲が低下しています。テスラの主要市場である自動車部門の売上は、前年同期比で6%〜20%の減少が見込まれます。
2)経営環境の逆風
高金利が続いており、自動車ローンの需要は減少、インフレによる消費者心理の冷え込みも、高価格のEV販売の逆風となっています。
3)生産と販売のギャップ
自動車業界を担当する米国内の証券アナリストは、2025年2Qも生産台数が販売台数を上回ると予測しています。これは「生産台数よりも販売台数が少ない」ことを意味しています。売れ残り在庫の増加は将来的な値下げ圧力や収益性悪化につながるという懸念が多くの専門家から指摘されています。
4)揺らぐブランドイメージ
イーロン・マスク氏の政治的動向もリスク要因となっています。トランプ政権の特別職員として一時的ですが政府の役職につき、その後辞任した一連の行動は、テスラブランドに「政治色」を付けました。これにより”アンチテスラ”の消費者が増加、購買行動に大きな影響を与えている可能性があります。
5)トランプ関税の影響
上記の4要因に加えて、現在の業績予想に最も重くのしかかっているのが、最大の不確定要素とも言えるトランプ政権の新たな関税政策です。これによりテスラ(Tesla)の事業に「生産コストの上昇」と「海外市場での販売機会の損失」という2つのリスクが発生しています。
米国が中国製部品に高関税を課すと、米国内工場で最終的に生産されるテスラ車の製造コストが押し上げられます。それと同時に中国が報復措置として米国製EVに高関税をかければ、高価格帯モデル(Model S/Xなど)の中国輸出が極めて困難になり、大きな収益源を失う可能性があります。
トランプ関税によるコスト増はテスラ(Tesla)の利益率を直撃、一部の試算では、18%前後だった利益率は約15%に低下、年間約2,000百万ドルの粗利益が失われる可能性が指摘されています。このような大幅な利益減少はテスラ(Tesla)にとって、FSD(完全自動運転)や次世代の低価格EV開発など、今後の成長を支える重要な技術や製品の研究・開発投資に影響を及ぼしかねません。
その結果、テスラ(Tesla)は価格戦略の抜本的な見直し、関税の影響を受けにくいサプライチェーンの再構築など、長期的な競争力に影響を及ぼす難しい経営判断を迫られることになります。
(2)売上高の成長鈍化
テスラ(Tesla)の事業規模の拡大を示す「売上高」の推移を通期ベースで見ていきます。これまで驚異的な成長を誇ったテスラ(Tesla)ですが、その勢いが急減速していることがわかります。


2020年(FY20)から2022年(FY22)にかけて、テスラ(Tesla)の売上高は毎年50%以上も増加して爆発的に成長しました。しかし、2023年(FY23)の成長率は18.8%に鈍化、2024年(FY24)の売上高は前年比+0.9%と、ほぼ横ばいとなりました。急成長に終わりを告げ、大きな節目を迎えたことが分かります。この「成長鈍化」の傾向は、四半期ベースの最新データを見るとさらに鮮明です。

2025年1Q(1月~3月)の売上高は19,335百万ドルでした。これは、前年同期(FY24 1Q)の21,301百万ドルと比較すると9.2%の減少です。
つまり、テスラ(Tesla)の売上トレンドは、「急成長」→「成長鈍化」→「2025年(FY25)1Qの前年割れの減少」という新たなフェーズに入ったことを示しています。この背景には、世界的なEV市場の需要調整や、中国メーカーとの価格競争の激化などが影響していると考えられます。
(3)営業利益が激減
売上高の動向以上に、現在のテスラ(Tesla)の課題を浮き彫りにしているのが「営業利益」と「営業利益率」です。営業利益とは、本業で稼いだ利益のことで、営業利益率は、売上に対してどれだけ効率的に利益を出せているかを示す、企業の「収益力」を測る重要な指標です。

1)営業利益率の急降下
四半期データを見ると、テスラ(Tesla)の営業利益率は大幅に悪化していることがわかります。2023年(FY23)後半には7〜8%台を維持していましたが、2025年(FY25)1Qには、営業利益がわずか399百万ドル、営業利益率は過去最低水準の2.1%にまで落ち込みました。
2.1%という数字は、「100ドルの商品を売っても、手元に残る本業の利益はわずか2.1ドル」ということです。日本の大手自動車メーカーの利益率が5%〜10%であることを考えると、これは極めて低い水準です。売上の大半はコストに消えて、利益の余裕(バッファー)がほとんどないため、非常に脆弱な状態と言えます。
2)2Qの予想が示す厳しい現実
さらに深刻なのは、この状況が「底を打った」とはまだ言えない点でしょう。2025年(FY25)2Qは、営業利益率はさらに低下して1.8%の予想です。売上高が前期比から回復するにもかかわらず、利益はほとんど増えないことを示唆しています。
これは値下げ競争の継続、新型モデル(Cybertruckなど)の生産開始にともなうコスト増で売上増加分がほぼ相殺されてしまうため、「依然として厳しい台所事情が続く」と市場が予測しているのです。これらのデータは、現在のテスラが直面している課題が、単なる「成長鈍化」ではなく、「収益性悪化」であることを明確に物語っています。
(4)純利益の大幅減少
営業利益の悪化は、最終的な会社の利益である「純利益」にさらに大きな影響を及ぼしています。純利益とは、本業の利益(営業利益)から支払利息や税金などを差し引いた、いわば会社の「最終的な手取り」です。

純利益の四半期データを見ると、まず2023年(FY23)4Qの7,928百万ドルが突出していますが、これは税制上の優遇措置などが含まれる一時的な特殊ケースです。この例外を除いてトレンドを見ると、純利益は営業利益同様に厳しい状況にあることがわかります。
特に2025年(FY25)1Qの純利益はわずか409百万ドル。これは、前年同期(FY24 1Q)と比較して、マイナス70.6%の大幅な減少であり、収益性という課題が最終利益を直撃しています。
2025年(FY25)2Qの純利益は約4億ドルと予想されています。これは2025年(FY25)1Qと同水準です。これはもし仮に売上高が前期比で回復しても、
・値下げ競争による利益率の圧迫
・FSD(完全自動運転)や次世代車への先行投資コスト
などが重くのしかかり、最終的な手取り利益は依然として圧迫されたままであることを示唆しています。

純利益が低迷しているのは、現在のテスラ(Tesla)が、「成長するベンチャー企業」から、厳しいコスト管理と将来への投資のバランスを常に問われる、「成熟した巨大企業」への「過渡期」にあるからだと考えられます。
(5)EPS と投資家評価(PER/PBR)の推移
さて、ここまでは企業業績を見てきましたが、ここからはその業績を投資家(株式市場)がどのように評価しているかを見ていきます。会社の「実力」と市場からの「期待」のギャップや一致点がここから読み取れます。
1)EPS(1株当たり利益)
EPSは企業が稼いだ最終的な利益(当期利益)を、株式1株あたりに換算したものです。株主にとっては、自分の持っている1株がどれだけの利益を生み出したかを示す重要な指標のひとつです。
テスラ(Tesla)のEPSは、当期利益の動向と完全に連動しています。2023年(FY23)の4.30ドルがピークで、2024年(FY24)は利益減少を受けて2.04ドルへと反落しています。

2)PER(株価収益率)
PERは現在の株価が1株当たり利益(EPS)の何倍かを示す指標です。数値が高いほど市場がその会社の将来の成長に大きな期待を寄せている(株価が割高である)ことを意味します。いわば 市場の「期待度」を測る温度計の役割です。
テスラ(Tesla)のPERは、この5年間で大きく変動しました。

最も興味深いのは2024年(FY24)のPERです。利益が半減しても、PERが再び急上昇したのは、株価が利益ほど下がらなかったことを意味しています。市場が「2024年の不振は一時的で、将来的に利益は回復するはずだ」と強く信じていたからです。
3)PBR(株価純資産倍率)
PBRは、株価が1株あたり純資産(会社の解散価値)の何倍かを示す指標です。特にテスラ(Tesla)のような企業では、帳簿に載らないブランド価値や技術力といった無形の資産が、高いPBRとして評価に反映されます。
PBRもPERと同様に2022年(FY22)に大きく低下しましたが、その後は回復基調です。これは株価の回復だけでなく、会社が利益を蓄積して純資産(分母)そのものを増やしてきたことも要因です。会社の土台となる資産価値がしっかりしてきたことで、市場の評価も安定感を取り戻していると言えるでしょう。
(6)貸借対照表で財務の安定性を計る
続いて貸借対照表のデータから分析してみます。会社がどれくらいの財産(資産)を持ち、どれくらいの借金(負債)を抱え、最終的にどれだけの純資産を持っているか、そのバランスから財務の安定性が見えてきます。


1)資産・負債・純資産の動向
通期ベースで確認します。資産は2020年(FY20)の52,148百万ドルが2024年(FY24)には122,070百万ドルへと4年で2.3倍以上に拡大しています。これはギガファクトリー建設や新型モデル開発など、極めて積極的な事業投資を続けてきた結果です。
続いて負債ですが、資産の増加にともない負債も増加しています。ただ、資産ほど増加していません。2020年(FY20)の28,469百万ドルから2024年(FY24)には約48,390百万ドルへと約1.7倍にとどまりました。
純資産は資産の伸びが負債の伸びを上回った結果、会社の返済不要の自己資本である純資産は、2020年(FY20)の23,679百万ドルから2024年(FY24)は73,680百万ドルへと、実に3倍以上に増加しました。これは、稼いだ利益を着実に内部に蓄積し、会社の体力が飛躍的に強くなっていることを示しています。
2)流動比率
流動比率(短期的な支払い能力)は1年以内に現金化できる資産が、1年以内に支払うべき負債をどれだけ上回っているかを示す指標です。100%以上が目安になっています。2021年(FY21)に一時低下したものの、その後は上昇し続けて、2024年(FY24)には202.5%という健全な水準に達しました。短期的な安全性に懸念がないことがわかります。
3)自己資本比率
総資産のうち、返済不要の純資産がどれくらいあるのか、その割合を示す重要な指標で、長期的な安定性を示しています。この比率は2020年(FY20)の45.4%から2024年(FY24)には60.4%へと上昇しています。借金依存度は年々下がり、事業の安定性が向上していることが、この数字から明確に読み取れます。
(7)キャッシュフロー計算書で「事業の健全性」を判断
最後にキャッシュフロー計算書を確認します。 利益が出ていても現金がなければ企業は立ち行かなくなります。事業が本当に健全かどうかを判断する上で、「お金の出入り」は非常に重要です。


1)営業キャッシュフロー
本業で現金を稼ぐ力を示す営業CFは、2020年(FY20)の5,943百万ドルから2024年(FY24)の14,923百万ドルと、5年で約2.5倍の増加です。2023年(FY23)に一時的に落ち込みましたが、一貫してプラスで巨額のキャッシュを維持しています。これはテスラ(Tesla)の主力事業であるEVの製造・販売が、会計上だけの利益ではなく、「リアルキャッシュ」を生み出す非常に強力なエンジンであることを示しています。
2)投資キャッシュフロー
将来への投資を示す投資CFは、一貫してマイナス幅が拡大しています。2020年(FY20)のマイナス3,132百万ドルから、2024年(FY24)はマイナス18,787百万ドルと、投資額は5年間で6倍に膨れ上がりました。これは世界各地でギガファクトリー建設、新型モデル(Cybertruckなど)や次世代EVの開発、AIやロボティクス投資など、テスラ(Tesla)が「未来の覇権」を握るために、本業で稼いだ現金を、それを上回るほど凄まじい勢いで再投資していることを物語っています。成長するベンチャー企業にとって、積極的なマイナス投資CFは未来への自信の表れです。
3)財務キャッシュフロー
資金のやりくりを示す財務CFの動きは、テスラ(Tesla)の成長ステージの変化を巧みに表しています。2020年(FY20)は9,973百万ドルでした。株価急騰のタイミングで株式を発行することで大規模な資金調達を行いました。
2021年(FY21)から2022年(FY22)の財務CFはマイナスになりました。 稼いだ利益で借入金の返済などを進め、財務体質を強化したのが原因です
そして、2023年(FY23)から2024年(FY24)の財務CFはプラスに転じました。私が最も注目しているのはここです。営業CFで巨額の現金を稼いでいるにもかかわらず、財務CFがプラスに転じています。これは、営業CFだけでは足りないほど、さらに大規模な投資(投資CFのマイナス18,787百万ドル)を行うために、再び外部から資金を調達していることを意味します。
営業、投資、財務という3つのキャッシュフローの動きから「本業で莫大な現金を稼ぎ、さらに外部から資金調達して、常識を超える規模の投資を未来のために続ける」というのが、現在のテスラ(Tesla)の財務戦略と言えるでしょう。
(8)2025年2Q決算の予想
最後に2025年2Qの業績予想から、テスラ(Tesla)が目指す「次の一手」を考えてみました。
売上高は2025年(FY25)1Qの「底」を脱し、回復基調に「乗る」ことが期待されています。これは値下げ圧力の中でも一定の需要を維持している証拠です。一方で、営業利益率は依然として厳しい水準が予測されており、新型モデルの生産を開始するためのコストや、EV市場の競争激化が重くのしかかっている様子が伺えます。
この業績予想は、テスラ(Tesla)が今、成長鈍化という現実と向き合い、コスト構造の見直しと次世代製品への投資という、困難なバランス調整に挑んでいる姿を映し出しています。2025年(FY25)2Qの決算発表は、市場がCEOとしてのイーロン・マスク氏のリーダーシップに対する評価を再び問う場になるでしょう。そして、テスラ(Tesla)にとって、これまで以上に重要な意味を持つことは間違いありません。
(本文ここまで)
岩田仙吉(いわたせんきち)氏株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
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図表でわかる財務分析 テスラ TESLA
テスラが10月2日に発表した7-9月期の販売台数は前年同期比6.4%増の46万2890台だったが、市場予想は下回った。値引き戦略の影響次第では、7-9月期の自動車事業の収入が3四半期連続のマイナスとなる可能性もある。LSEGのまとめでは7-9月期の自動車事業の収入は3.0%増の202.14億ドルとみられており、この水準をクリアできるかが焦点となりそうだ。
テスラの将来を予測する上で、過去の財務実績の動向を正確に把握することは不可欠です。本セクションでは、2022年から2024年までの3会計年度における連結財務三表と、それらから導出される主要な財務指標を提示し、その背景にある事業動向を分析します。データは主に、テスラが米国証券取引委員会に提出した年次報告書(Form 10-K)に基づいています。
前述の通り、保有しているテスラ株を高くで売って安く買い戻すという意見もあるでしょうが、売却するとその度に税金を払わなければなりませんのでその点にも留意が必要です。
四半期データを見ると、テスラ(Tesla)の営業利益率は大幅に悪化していることがわかります。2023年(FY23)後半には7〜8%台を維持していましたが、2025年(FY25)1Qには、営業利益がわずか399百万ドル、営業利益率は過去最低水準の2.1%にまで落ち込みました。 2.1%という数字は、「100ドルの商品を売っても、手元に残る本業の利益はわずか2.1ドル」ということです。日本の大手自動車メーカーの利益率が5%〜10%であることを考えると、これは極めて低い水準です。売上の大半はコストに消えて、利益の余裕(バッファー)がほとんどないため、非常に脆弱な状態と言えます。
これらの観察から、より深い洞察を導き出すことができます。2024年の財務状況は、テスラのビジネスモデルが、構造的に変化したことを示しています。かつての「革新的な製品を、競合のいない市場で、高い利益率で販売する」というフェーズは終わりを告げました。現在は、「成熟しつつある市場で、多数の競合と価格で戦いながら、いかに市場シェアを維持し、コストを削減して利益を捻出するか」という、より伝統的な製造業に近い「消耗戦」のフェーズに突入したのです。
株式を長期的に保有するのであれば、その企業の長期的な可能性を信じられるかが大切です。先ほどテスラは単なるEVメーカーではないと説明しました。では、テスラの可能性とは何でしょうか。
脅威:トヨタが持つ世界的な生産・販売網とブランド力、そして全固体電池という破壊的技術のポテンシャルは、長期的にテスラの技術的優位性を脅かす最大の要因の一つです。
最後に2025年2Qの業績予想から、テスラ(Tesla)が目指す「次の一手」を考えてみました。 売上高は2025年(FY25)1Qの「底」を脱し、回復基調に「乗る」ことが期待されています。これは値下げ圧力の中でも一定の需要を維持している証拠です。一方で、営業利益率は依然として厳しい水準が予測されており、新型モデルの生産を開始するためのコストや、EV市場の競争激化が重くのしかかっている様子が伺えます。 この業績予想は、テスラ(Tesla)が今、成長鈍化という現実と向き合い、コスト構造の見直しと次世代製品への投資という、困難なバランス調整に挑んでいる姿を映し出しています。2025年(FY25)2Qの決算発表は、市場がCEOとしてのイーロン・マスク氏のリーダーシップに対する評価を再び問う場になるでしょう。そして、テスラ(Tesla)にとって、これまで以上に重要な意味を持つことは間違いありません。
世界のEV市場は、各国政府の環境政策に後押しされ拡大を続ける一方、競争環境はかつてないほど激化しています。テスラの将来を占う上で、この外部環境の正確な理解は不可欠です。
テスラは既に2023年以降、「セミ」と呼ばれるトレーラーヘッドのEVトラックや、「サイバートラック」と呼ばれるEVピックアップトラックなど未来のEVトラックを生産することを発表しています。
今回は私の分析アプローチを知っていただく為の『モデルケース』として、テスラ社を徹底的に分析し、今後の事業を予測してみました。
ここからはテスラが置かれている環境をより深く理解する為、3C分析と、 5F(ファイブフォース)を用いて整理致します。
さらに深刻なのは、この状況が「底を打った」とはまだ言えない点でしょう。2025年(FY25)2Qは、営業利益率はさらに低下して1.8%の予想です。売上高が前期比から回復するにもかかわらず、利益はほとんど増えないことを示唆しています。 これは値下げ競争の継続、新型モデル(Cybertruckなど)の生産開始にともなうコスト増で売上増加分がほぼ相殺されてしまうため、「依然として厳しい台所事情が続く」と市場が予測しているのです。これらのデータは、現在のテスラが直面している課題が、単なる「成長鈍化」ではなく、「収益性悪化」であることを明確に物語っています。
売上高の動向以上に、現在のテスラ(Tesla)の課題を浮き彫りにしているのが「営業利益」と「営業利益率」です。営業利益とは、本業で稼いだ利益のことで、営業利益率は、売上に対してどれだけ効率的に利益を出せているかを示す、企業の「収益力」を測る重要な指標です。
こうした中、テスラは前向きな情報発信に懸命だ。10月10日夕方には人工知能(AI)を活用した無人タクシーの試作車「サイバーキャブ」を公開し、2026年に生産を始めると表明した。しかし翌11日の株価は8.78%安となり、投資家の反応は冷ややかだった。テスラの株価の値動きからは投資家が未来予想図ではなく、足元の成長や利益に直結する施策を求めていることが感じられ、23日の発表内容次第で改めて今後の株価の見通しが暗くなることも考えられそうだ。


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