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間もなく発表されるアルファベット(Alphabet)の2025年第2四半期(2Q)の決算に市場の注目が集まっています。アルファベット(Alphabet)というよりも、グーグル(Google)と言ったほうがわかりやすいかもしれません。同社の公式決算発表に先立ち、通期ベースや四半期ベースで過去の業績トレンドを分析し、市場動向などから算出した2025年(FY25)2Qの業績予想を提示して、「成長性」「収益性」「安全性」の3つの視点から、アルファベット(Alphabet)社、すなわちグーグル(Google)の今と未来を読み解いてみたいと思います。
(1)直近の決算内容とGoogleの2025年 2Q業績予想
まず、四半期ベースの損益計算書から見ていきます。期間は2023年(FY23)3Qからすでに発表されている2025年(FY25)1Qまでと、今回発表される2Q予想値です。


直近の業績トレンドは、グーグル(Google)のビジネスがいかに強固であるかを明確に示しています。売上高は前年同期比で常に二桁成長を続けています。特に営業利益率が30%を超える非常に高水準で安定的に推移している点は驚異的と言えます。
ハイテク・ネット業界担当の米証券アナリストも、2025年(FY25)2Qの業績について力強いトレンドが続くと予想しています。期待される点は、売上高が四半期ベースで101,500百万ドルとなり、初めて1,000億ドルの大台に乗る見込みであること。そしてクラウド事業とYouTube広告が引き続き全体の成長を牽引することです。
他方、課題としてはAI開発競争の激化にともなう巨額の設備投資が、今後も利益を圧迫する可能性があること、世界各国での独占禁止法などの規制を受けるリスクがあることでしょう。
(2)通期ベースの損益計算書で「成長と収益性」の変遷を確認


1)売上高の動向

2020年(FY20)から2024年(FY24)の通期ベースで売上高を見てみます。
この5年間で売上高は約2倍に成長しました。特にパンデミック後の2021年(FY21)は、デジタル化の波に乗りプラス41.2%という驚異的な成長を記録。その後、成長率は鈍化しますが、2024年(FY24)もプラス16.2%の二ケタ成長です。巨大企業でありながら成長し続ける力強さをみせています。

四半期ベースで売上高を見ると、2025年(FY25)1Qが98,700百万ドル、2Q予想は101,500百万ドルで、これを合わせると、半年だけで200,200百万ドル(2,002億ドル)です。これは前年通期(FY24)の357,300百万ドルの約56%にあたります。2025年(FY25)も通年での成長継続が強く期待されます。
2)営業利益の動向
営業利益を見てみましょう。まずは通期ベースです。

2022年(FY22)は、景気後退懸念による広告市場の減速と、AIなどへの投資増で一時的に足踏みしました。しかし、2024年(FY24)には105,700百万ドルの大台を突破、過去最高益を記録しました。営業利益率も2024年(FY24)には29.6%と再び30%に迫る高い水準を回復しています。

また、2025年上半期(1Q決算と2Q予想)も33%を超える高い利益率での推移が見込まれており、広告事業という収益基盤に揺らぎはないようです。上半期だけで営業利益は66,900百万ドルに達する見込みで、前年通期(FY24)の105,700百万ドルの約63%となり、2025年通期(FY25)の大幅な利益増が期待されます。
(3)当期純利益の動向
最終的な利益である当期利益も、営業利益とほぼ同様の軌跡を辿っています。2022年(FY22)に一時的に減少しましたが、2024年(FY24)には過去最高となる84,300百万ドルを達成しました。


また、四半期ベースで見ると、2025年上半期(1Q決算・2Q予想)で、58,400百万ドルの純利益が見込まれています。これは過去最高を記録した前年通期(FY24)の84,300百万ドルの約69%に達するという驚異的なペースです。これは本業の強さに加えて、効率的な経営が行われている証拠です。
(4)株主価値指標の動き
それでは株主の視点から会社の価値を示す指標を見ていきましょう。まずはEPS (1株当たり利益)です。
1)EPS
EPSは会社が1株あたりどれだけの利益を稼いだかを示す指標です。つまり、株主にとって最も直接的な「価値の源泉」と言えます。グーグル(Google)のEPSは、当期利益の増加に伴い、2024年には過去最高の8.04ドルを記録しました。

2)PER
PERは「現在の株価がEPSの何倍まで買われているか」を示す指標です。市場の期待度(人気度)を表しています。2022年(FY22)に市場全体が冷え込んだ際、PERは一時的に低下しましたが、その後は安定して推移しています。現在のPER(約27〜30倍)超巨大企業としては依然として高水準で、グーグル(Google)の安定した収益力とAIなどがもたらす将来の成長性を市場が高く評価していることを示しています。
3)PBR
最後にPBR (株価純資産倍率)です。これは現在の株価が、会社の1株あたり純資産(解散価値)の何倍かを示す指標です。ブランド価値や技術力など、帳簿に載らない無形の価値も評価に反映されます。このPBRもPER同様に2022年に市場全体が冷え込んだ際に一時的に低下しました。しかし、その後は安定的に推移しています。現在、PBRは7〜8倍で推移しており、こちらもグーグル(Google)の安定した収益力と、AIなどがもたらす将来の成長性に対する高評価が反映された数値となっています。
(5)貸借対照表で見る「財務の安定性」
貸借対照表は企業の「財産(資産)」「借金(負債)」「返済不要の自分のお金(純資産)」のバランスを示す「健康診断書」と言えます。


1)資産・負債・純資産の動向
資産合計は、AI関連の設備投資などを背景に増加を続けています。一方で、負債の伸びは緩やかです。その結果、会社の「真の財産」である純資産は、2020年(FY20)の214,883百万ドルから2025年(FY25)1Qには296,440百万ドルへと、着実に積み上がっています。これは、稼いだ利益で会社の体力が強化され続けていることを意味します。
2)流動性比率の動向
流動比率(短期的な支払い能力)は、常に200%を超える非常に高い水準を維持しており、短期的な安全性は万全です。自己資本比率(長期的な安定性)も70%を超える極めて高い水準で、グーグル(Google)が借金にほとんど頼らない、世界で最も財務的に安定した企業のひとつであることを証明しています。
(6)キャッシュフロー計算書から見る「事業の健全性」
最後に企業のお金の「流れ」を示すキャッシュフローを確認します。


キャッシュフロー計算書は、いわば会社の「家計簿」です。
・営業CF: 「本業の稼ぎ」(給料)
・投資CF: 「将来のための支出」(自己投資や資産運用)
・財務CF: 「資金のやりくり」(借金や返済)
1)営業キャッシュフロー(営業CF)の動向
本業で稼ぐ現金である営業CFは、2020年(FY20)の65,124百万ドルが、2024年(FY24)には110,900百万ドルと、一貫して増加しています。2025年1Qも35,618百万ドルと非常に好調です。グーグル(Google)のビジネスが巨大な「キャッシュ創出マシーン」であることを示しています。
2)投資キャッシュフロー(投資CF)の動向
投資CFは常に大きなマイナスです。これは稼いだ現金をAIやデータセンターなどの未来の成長分野へ積極的に再投資している健全な証拠です。
3)財務キャッシュフロー(財務CF)の動向
財務CFも常に大きなマイナスですが、これは借金返済に加え、巨額の自己株式取得(株主還元)を行っているためです。本業で稼いだ潤沢な資金を、株主へ大規模に還元していることを示しています。
(7)売上と利益で驚異の二ケタ成長を続けるアルファベット(Alphabet)
今回はグーグル(Google)の親会社であるアルファベット(Alphabet)の2020年(FY20)から2024年(FY24)までの通期決算と2025年(FY25)1Q決算、さらに2025年(FY25)2Qの業績予想をもとに、同社の損益状況、財務安定性、キャッシュフローの観点から分析を行いました。
その結果、この5年間を通じて同社は高い利益率を維持しながら、安定的に巨額の営業キャッシュフローを生み出す事業構造を確立してきたことが確認できました。
その上で2025年(FY25)2Qの業績予想を見ると、売上と利益の二ケタ成長が続くという見通しは、本業で得た潤沢な現金を原資に、将来への投資と株主還元を両立させるという、近年の財務パターンが継続することを示唆しています。AI関連の設備投資によるコスト増という課題はありますが、この業績予想は、「コスト増を十分に吸収できる高い収益性と安定した財務基盤が、今後も維持されるだろう」という株式市場の基本的な見方を裏付ける内容となっています。
(本文ここまで)
岩田仙吉(いわたせんきち)氏株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
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図表でわかる財務分析 Alphabet Google
従来とは異なるサーバー仮想化の技術として注目を集めています。従来のハイパーバイザー型仮想化では、ホストOSの上にゲストOSを重ねることによって、アプリケーションの実行環境を複数構築します。しかし、コンテナ技術では、一つのOSの上に複数のアプリケーション実行環境を構築します(図表4)。OSが一つであるため、従来の仮想サーバーに比べて高速で起動や停止ができ、仮想化に伴う性能の劣化が少ないことにメリットがあると言われています。この技術はコンテナ管理ソフトウェアによって可能になり、「Docker」(未上場のDocker社が開発した)と呼ばれるオープンソースソフトウェアが業界標準となっています。「Windows Server 2016」が「Docker」に対応したことから利用が広がっています。
中でも、IoTプラットフォームのターゲット領域は、コンシューマ向けIoTプラットフォームと比して、企業向けプラットフォームの占める割合は極めて大きいことが分かる。その中でも製造業が最も多く、IoTプラットフォーム事業者の約50%が、製造/工業用途にフォーカスしている。製造業の次に多いのが、エネルギー(34%)とモビリティ(32%)、スマートシティ(31%)となっている(図表1-4-2-19)。
“MindSphere”は、幅広いデバイス及び企業向けシステムの接続、業務アプリケーション、高度な分析等が利用できるほか、Siemensのオープンなプラットフォームサービス(PaaS)機能と、AWS、Microsoft Azure、Alibabaのパブリッククラウドサービスへのアクセスの両方を提供することで、ユーザ自らのサービス・アプリケーションの開発環境を提供している。
Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftといった米国の大手インターネット企業は、ICT産業のみならず世界の株式市場で圧倒的な存在感を誇っている。このうち、Google、Amazon、Facebook、Apple の4社で頭文字をとって「GAFA」、またMicrosoftも加えた5社で「GAFAM」などと呼ばれている。また、近年台頭している中国のインターネット大手のBaidu、Alibaba、Tencentも、3社で「BAT」等と呼ばれている。
Siemensは、現在こうしたBtoB・産業分野に焦点を当てたソリューションを提供し、製品・生産・運用等のいわゆる「デジタルツイン」を推進しており、その一環で、製品、工場、システム、設備等を接続し、高度な分析機能を備えたクラウドベースのIoTプラットフォーム“MindSphere”を展開している(図表1-4-2-21)。
企業におけるIoTソリューションの導入理由としては、業務の自動化・最適化が大きな理由となっているが、近年は、収益向上や顧客接点の向上といった理由も増加している(図表1-4-2-15)。
図表2-6は、(2)の図表2-5にも例示したスマートフォンの実際の製品として、米国Apple社が2019年9月に販売を開始したスマートフォン端末iPhone 11 Pro Maxを取上げ、その内蔵部品の単価をそれぞれ調査して機能別にリスト化39し、それぞれの単価の製造企業の国籍別の付加価値シェアを計算した結果をまとめている。同製品の部品単価(Direct Material Cost)を合計すると353.5ドル、組立加工費用(Conversion Costs)は、中国本土の人件費をベースに10.1ドルと推計されている。米国Apple社ホームページで示されている同端末の販売価格(1,099ドル)を用いて計算すると、流通マージン等が735.4ドルと高く、同社が上流における高い付加価値を獲得している可能性が示唆される。なお機能別の部品単価は、ディスプレイが全体の28.4%、カメラが全体の12.0%と大きな割合を占めている。
こうしたプラットフォーマー等インターネット大手の規模は成長を続けている。これら各社の売上高の推移をみてみると、いずれの企業も類似する高い成長率で売上高が引き続き拡大していることが分かる(図表1-4-2-9)。これら7社の中で、売上高ベースではAppleが最も規模が大きかったが、2019年にはAmazonの売上が逆転し首位となった。また、Microsoftも、一時期はGAFAにおされるように伸び悩んでいたところ、直近では企業買収等の事業構造改革を経て、再び拡大基調となっている。
最後に、基地局と半導体素子の関係を観察すると(図表2-8右下)、韓国は2000年代後半には基地局にのみ比較優位性があったものの、徐々に半導体素子の比較優位性が高まり、その反面として基地局の比較優位性が低下している傾向が分かる。一方、日本は2008年まで基地局、半導体素子の両方に比較優位性があったものの、徐々に低下していき2014年には両方の比較優位性がマイナスになるところまで進んだ。その後、半導体素子の比較優位性はプラスに戻ったものの基地局についてはマイナスで推移している。
グローバル・バリューチェーンとは、商品の構想から設計・製造・マーケティング・販売に至るまでのバリューチェーンが世界規模で展開されている状況を指し、モジュール化に基づく分業の進展、ICTの発展や普及が世界規模での企業間のやり取りコストを引き下げる中で形成されてきたとされる。スマートフォンを例にとると、図表2-5に示すように、モジュール化された部品の製造等を様々な国・地域の企業が担っており、グローバル・バリューチェーンを形成している36。製品の生産工程を上流から下流までを横軸にとり、各工程の対価または付加価値を縦軸にとり図示すると、この関係は一般的に「スマイルカーブ」と言い表される形状をとるといわれており、各国がこのスマイルカーブ上のどこに位置するかが、価値配分の世界地図を決めることとなる。グローバル・バリューチェーンの研究は、分析視点としてこの2軸の関係性を考察することであり、これまで多くの研究者によってグローバル・バリューチェーンを計測する手法が検討されてきた37。
こうした競争や参入の背景として、産業向けIoTは、特定のユースケースや業界に焦点を当てることで、水平展開する大手事業者が提供できない価値にフォーカスできる点が挙げられる。具体的には、ユーザ企業とソフトウェアの作りこみ(カスタイマイズ)を実施し、その後、当該ソフトウェアの標準化を行った上で、プラットフォームとして販売する傾向が強い。しかしながら、このように市場が断片化されつつも、IoTプラットフォーム間での買収や合併は2013年の3件から2017年には25件に増えるなど、長期的には統合化する方向に向かっている。2016年では上位10社がIoTプラットフォーム市場の約44%を占めていたが、2019年には上位10社が58%を占めているなど、IoTプラットフォーム市場の市場集中度が増していることがみてとれる(図表1-4-2-20)。
WIOD(2016)44を用いて、まず、日本、米国、中国において、製造業やサービス業(又はICT製造業やICTサービス業45)によって生み出される付加価値額の2000年、2005年、2010年、2014年の推移を観察する。日本と米国は、製造業に比較してサービス業の生み出す付加価値額が高い一方、中国の製造業とサービス業における開きは大きくない。また、米国、中国ともに、製造業とサービス業の生み出す付加価値は増加しており、製造業に比べてサービス業の付加価値額の方の伸びが大きい一方、日本ではいずれの付加価値額も減少または横ばいで推移している。この傾向は、ICT産業(ICT製造業やICTサービス業)に限ってみた場合でも、ほぼ当てはまる(図表2-9)。
この状況を組み合わせて定量的に捉えるため、まず、同指標の売上げた企業別の売上高(図中、企業別とする)と、仕向地別に集計したときの売上高(図中、仕向地別とする)との間で、世界3地域別のシェアがどの程度異なっているのか比較してみる34。「ゲーム機35」は、アジア企業が高い売上高シェアを占める一方、アジア地域への仕向けは全体の20%程度であり、40%以上がアメリカ、30%以上が欧州等に仕向けられている。「デジタルサイネージ」や「監視カメラ」もアジア企業による売上高シェアが高いが、アメリカや欧州等に多くが仕向けられている(図表2-1)。
他方、近年は、実店舗も急成長しており、2018年は前年比約200%となっている。レジのない実店舗Amazon Go も大きな話題となった。また、同社のクラウドサービスAWSもインターネット関連市場の継続的な拡大を背景に堅調に拡大しており、重要な収益源となっている(図表1-4-2-11)。
IoT Analyticsによれば、世界のIoTプラットフォーム市場(プラットフォーム利用料等の収益合計)は、2018年から2023年まで年平均成長率39%で成長しており、2023年までに220億米ドルを超えると予測している(図表1-4-2-17)。また、提供事業者をみると、2017年時点で既に450社が提供しており、2019年時点で620社へと増加している(図表1-4-2-18)。なお、2017年時点の450社のIoTプラットフォームのうち、47は事業が終了し、70が買収されるなど、競争が激しい状況にも関わらず、参入が堅調に続いている。


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