クレカ大手 富裕層サービス強化
インバウンド旅行者の決済や越境ECでは、クレジットカードやデジタル決済のオーソリ(承認)率が下がると決済が滞ってしまい、売上損失につながる恐れがあるが、Adyenでは、AIなどのテクノロジーを駆使することで、リスクを検出し、承認率を維持できるサポートを提供している(ブラウンステイン氏)。
また、クレジットカードについては、不正利用の懸念が常につきまとうが、ブラウンステイン氏は、3Dセキュア(本人認証サービス)について、「先行する欧州での経験を日本でも活かせる」との考えを示す。日本市場参入の際に、まず立ち上げたのはレギュレーションチームだったという。「規制については、他よりも先に取り組むべきエリア」と話し、セキュリティ重視の姿勢を示した。
サービス強化の背景には、株高などによる富裕層の増加がある。2024年度にJCBのザ・クラスとプラチナの会員数は、前年度比1割伸びたという。
まず、クレジットカード決済の基本的な仕組みを押さえておく。仕組みの中には、ビザやマスタカードなどの国際ブランド、そのカードを発行し、カード利用者の募集をおこなう「イシュア」、国際ブランドとアライアンス契約し、加盟店の募集と審査/管理をおこなう「アクワイアラ」、複数の国際ブランド/決済方法をつなぎ、アクワイアラに取り次ぐ「決済代行会社」がある。
内容によって対象になるクレカが異なる場合もあるが、21年は年間約100本の優待を予定。アメリカン・エキスプレスの空港ラウンジ利用や手厚い保険など旅行時の恩恵は受けづらい昨今、そのうまみをカバーし得るサービスだ。
エンリッチ読者の皆さま、ポイ探の菊地崇仁です。先月は企業やカード各社が富裕層向けに提供する新たなサービスについて触れました。クレジットカードに関しては、誰もかれもに高いポイント還元率、マイル移行を提供するのではなく、利用単価が高いと想定される上位カードのホルダーに対して、手厚いサービスを行い始めていることがわかりました。東急のように顧客向けサービスを強化するのも、比較的アッパークラスが住む地域で囲い込みをしたいというのが理由でしょう。いずれにしろ、彼らの目線は一般層からワンランク上を優遇するという点で一致しています。
新会社は三井住友FGが傘下企業を含めて60%、SBIHDが同40%出資する。新サービス運営の中核は三井住友カードだが、26年春にオリーブ向けにクレジットカード「インフィニット」を国内で初めて提供する。米Visa(ビザ)の「プラチナ」よりも上位に位置づける。
招待制で年会費が5万5000円の最上位カード「ザ・クラス」などの保有者や、松屋の外商顧客の一部などが利用できる。JCBの田丸友実主任は「富裕層は、『お得さ』よりも希少性を望まれる」と語る。
野村総合研究所によると純金融資産を1億円以上持つ世帯は23年に165万世帯に達し、05年以降で最多になった。特に40代後半から50代の会社員で株高を背景に確定拠出年金やNISAで運用した資産が1億円を超える個人が増えた。適切な分散投資や富裕層向け商品の知識が十分でない層も多いとみられ、専門家の助言が必要になりつつある。
NISAで運用の裾野が拡大しており、デジタルとリアルの融合が進む。みずほ証券と楽天証券は対面のコンサルを担う新会社の業務を24年4月に始めた。三菱UFJは投資先や運用を自動で任せるロボットアドバイザーの最大手であるウェルスナビを完全子会社にした。大手金融の個人向けビジネスの主戦場は初心者の口座獲得から、準富裕層の資産管理へとシフトしている。
カード利用者はイシュアと会員契約。一方、加盟店はアクワイアラと加盟店契約をする。複数の国際ブランドを活用している場合は、決済代行会社と契約する。クレジットカード利用者は、イシュアに購入代金を支払い、イシュアはアクワイアラにその代金を支払う。アクワイアラは、売上額から手数料を差し引いた金額を、ユーザーに代わって、加盟店もしくは決済代行会社の口座に振り込む。
「タッチ決済対応のクレジットカード」
日本では、2025年3月末から「クレジットカード・セキュリティガイドライン」に基づき、オンライン決済における3Dセキュアの導入がすべての事業者に義務付けられ、クレジットカードを使用した支払い時には、カード情報に加えて本人認証が必要となる。
新会社を設立する背景には、「スマホを通じた金融取引がさらに普及すると、デジタル富裕層が加速度的に増える」(三井住友FGの中島氏)ためだ。オリーブは23年3月にサービスを始め、25年4月末で570万口座に達した。証券口座で初心者を囲い込み、40〜50代で資産を増やした層に専門家が運用を指南する段階に移る。


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