
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年7月25日 13時50分
日米ともタカ派姿が見え隠れすれば不安定な値動きに
参院選通過で円売り巻き戻し
米ドル/円は下落。日本の参議院選挙で与党が大敗したものの、事前に結果を相当織り込んでいたことから、週明けは直近で進んでいた円売りの巻き戻しが優勢となり、米ドル/円は147円台前半まで下落しました。その後、揺り戻しから148.00円手前まで戻したものの、日米が通商協議で合意したことが伝わると、今度はリスクオンの米ドル売りが活発化。
加えて、日米貿易協議の一段落で日銀の年内追加利上げへの観測もくすぶり、米ドル/円は145.85円付近まで下落しました。その後、株高を背景にしたリスクオンの円売りから147.49円付近まで切り返したものの、見通しへの不透明感が残り、戻りは限定的でした。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
日銀の年内利上げ確率上がるか注目
来週は米FOMC、日銀会合、米雇用統計など、通常の月初のイベントに加え、日米の金融政策会合、自民党の両議員懇談会、米中通商協議など、目の離せない週になりそうです。
米FOMCについては、これまでに発表されたインフレ指標を見る限り、利下げへの期待感が燻っていても不思議ではありません。ただし、関税賦課による影響で、米国の物価上昇が今後明確になるとの見方も根強くあります。今回のFOMCの議論のベースとなるベージュブック(地区連銀経済報告書)でも、物価の上昇が12地区すべてで報告されており、企業は関税に関連した穏やかないし顕著な圧力を経験していると評価されています。こうした状況下では、米金融当局がインフレリスクを看過することは困難であり、様子見姿勢を示しつつも、米利下げ時期の後ろ倒し観測がやや強まる可能性もあります。この点では、米ドル/円は下値を支える展開が期待されます。
しかし、日銀の動向次第では、こうした期待も崩れる可能性があります。日銀会合については、これまでそれほど注目されていませんでしたが、日米通商協議の合意を受けて、日銀の利上げ時期を巡る議論が活性化しています。
さすがに今回の会合での利上げは現実的ではないものの、日銀のタカ派化が進展する可能性は十分にあります。こうした動きは、新たに公表される経済・物価展望レポートに反映されると考えられます。その中で、2026年・2027年のインフレ見通しが引き上げられれば、予見可能な将来において日銀が追加利上げに踏み切るとの期待が高まります。FOMCの内容を受けて米ドル/円が上昇したとしても、日銀会合の結果次第では、流れが円高に向かう可能性もあるのではないかと考えています。
上昇幅の50%ラインで反発は好感(テクニカル分析)
米ドル/円は、200日移動平均線に頭を抑えられると、日足一目均衡表の雲の下落に沿って、上値を切り下げる展開になっています。7月1日安値142.680円を起点とする上昇幅の50%押しレベルで切り返していることから、まだ上昇基調が続いていると判断できます。148.00円台を明確に超えてくれば、150.00円台回復も視界に捉えられそうです。
ただ、週足の一目均衡表の雲の下限が150.60円付近で推移しており、この辺りではいったん達成感から戻り売りがかぶってくるのではないかと考えています。一方、下方向は雲の上限付近となる145.00円付近では下げ渋るのではないかと考えています。
【米ドル/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:145.000-150.500
7/28 週のイベント:

一言コメント
日米が通商協議で合意しました。もう少しもめるか、合意のないまま期限を迎えて関税が発動されるかもしれないという懸念があっただけに、本当に期限内に合意したのは驚きでした。関税がかかることには間違いないため、素直には喜べませんが、25%から10%も低下して合意したことはすごいと思います。何も決まらずにやきもきして過ごすくらいなら、悪い結果でもはっきりした方が、ある意味分かりやすくて良いのかもしれませんね。
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来週の為替予想 米ドル 円
2029年3月のドル円見通し。当月始値 179.47、最低 179.47、当月最高 184.98。平均 181.54。月末 182.25。変更 1.5%。
2月の雇用統計は無難な内容となった。しかし、二転三転するトランプ関税政策の影響で今後企業の収益懸念が高まれば、労働市場にも悪影響を与えるだろう。それが数字に表れてくれば、米国経済を支えている個人消費の先行き懸念をさらに高める要因となろう。トランプ関税が米ドル安の要因となるシナリオも想定しておく必要がある。
2028年6月のドル円予想。当月始値 154.85、最低 154.85、当月最高 161.89。平均 157.77。月末 159.50。変更 3.0%。
注目は外為市場の動向である。4日の米債市場で金利が反発し米ドルの買い戻しが見られた。しかし、月初来の変動率をみると「リスク回避の米ドル高」は限定的である。対照的に選好されているのが日本円である。現状トランプ関税リスクは、米ドル安と円高の要因として意識されている。
一方、これら重要指標で景気不安が後退する場合は、米ドルの反発が予想される。
日足のMACDとモメンタムのトレンド、そして一目均衡表が「三役逆転」の状況にあることもドル円の地合い弱さを示唆している。
第一週 8月1日(金曜日)のドル円見通し: 為替レート 146.51、 最高 148.71、最低 144.31。 8月4日(月曜日)のドル円予想: 為替レート 146.73、 最高 148.93、最低 144.53。 8月5日(火曜日)のドル円見通し: 為替レート 147.46、 最高 149.67、最低 145.25。 8月6日(水曜日)のドル円予想: 為替レート 146.51、 最高 148.71、最低 144.31。 8月7日(木曜日)のドル円見通し: 為替レート 147.60、 最高 149.81、最低 145.39。
2028年8月のドル円予想。当月始値 171.06、最低 165.39、当月最高 171.06。平均 168.86。月末 167.91。変更 -1.8%。
転換線と基準線を上方ブレイクし、ドル円が148円台へしっかりと上昇する場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準148.21レベルの突破が焦点となろう。
2029年8月のドル円予想。当月始値 188.33、最低 183.08、当月最高 188.66。平均 186.49。月末 185.87。変更 -1.3%。
2028年1月のドル円見通し。当月始値 156.68、最低 156.68、当月最高 163.80。平均 159.64。月末 161.38。変更 3.0%。
2029年1月のドル円見通し。当月始値 172.49、最低 169.71、当月最高 174.87。平均 172.34。月末 172.29。変更 -0.1%。
2029年4月のドル円予想。当月始値 182.25、最低 178.29、当月最高 183.72。平均 181.32。月末 181.00。変更 -0.7%。
2029年6月のドル円予想。当月始値 178.22、最低 177.63、当月最高 183.03。平均 179.80。月末 180.33。変更 1.2%。
2027年2月のドル円予想。当月始値 144.98、最低 144.98、当月最高 151.57。平均 147.72。月末 149.33。変更 3.0%。


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