
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年8月1日 13時30分
ユーロ・ポンドは対ドルでの調整から、対円でも上値抑制
ユーロ/円・ポンド/円は荒い展開
ユーロ/円、ポンド/円は円安が支えとなり、下げ渋る展開となりました。米国とEUの関税協議を巡っては、米国がEUに課す「相互関税(自動車関税を含む)」の税率を15%に引き下げる代わりに、EUが米国から7,500億ドル相当のエネルギーを購入し、さらに6,000億ドル規模の対米投資を行うことで合意しました。
この大規模な対米投資により、ユーロ売り・米ドル買いのフローが今後発生するとの見方が広がり、足元で上昇が続いていたユーロに対する割高感が強まったことで、ユーロ売りが優勢となりました。この動きは他通貨にも波及し、ポンドも冴えない展開となりました。
ユーロ/円は173.893円を高値に169.724円まで、ポンド/円は199.214円を高値に196.970円まで下落しました。しかし、日銀が追加利上げに慎重な姿勢を改めて示したことで、ユーロ/円は172.383円まで反発し、ポンド/円も199.512円まで上昇するなど、荒い値動きとなりました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
英国は利下げ、0.5%利下げ支持が2名より少なければ・・・
私自身は、EUと米国の関税合意により、ユーロに対する不透明感が後退し、ユーロの支援材料になると見ていたものの、結果は逆となり、ユーロの調整が進む展開となりました。上でも述べたように、対米投資に伴うユーロ売り・米ドル買いフローへの期待からです。シカゴ通貨先物のポジショニングでは、ネットポジションでロングがかなり積み上がっている状況にあるものの、やや頭打ちの兆しが見え始めていることもユーロへの調整圧力を意識させています。
ECBの利下げサイクル休止観測はユーロを支える可能性があるものの、成長に対する不確実性が残る中では、支援材料としてはやや力不足に映ります。目先、ユーロには調整圧力がかかりやすい局面にあると考えています。
一方、英国では英中銀が政策会合を開催します。市場では、労働市場が軟化するなか、0.25%の利下げに踏み切り、政策金利は4.0%へ引き下げられるとの見方が強まっています。注目は投票行動になります。0.5%の利下げを主張する委員が2名程度出るのではとの見方が優勢になりつつありますが、これより多いようだとBOEのハト派な印象が高まりポンド安が強まりそうです。
逆に、これより少ない場合や、インフレの低下ペースが一服する兆しも見られる中で、据え置きを支持する委員がいれば、ポンドを押し上げる可能性があります。BOEの結果を受けて、ポンドの振幅が荒くなると見ています。
ポンド/円、200日線超えても持続力は限定か(テクニカル分析)
ユーロ/円は、172.30円を明確に上抜けられるかどうかが注目されそうです。7月28日に173.893円まで上昇した後、169.724円まで調整しましたが、そこから急反発し、現在は172円付近まで戻しています。
先の下落幅に対する61.8%戻しとなる172.30円付近を明確に突破できれば、175.00円に向けて下値を切り上げる展開が期待されます。逆に、今週の終値ベースで172.30円を下回るようであれば、調整地合いが続いていると見られ、169.00円割れに向けて目線が下がる可能性があります。
一方、ポンド/円は上昇の流れが一服し、直近は横ばいを続けながら次の方向性を探る展開になっています。日足一目基準線がサポートラインになっており、目先大きなレジスタンスラインである200円突破が現実離れしているとは言えませんが、対米ドルでポンドは三役逆転が点灯している点を考えると、ポンド/円の200.00円超えは少し厳しいかもしれません。仮に超えたとしても、200円を上回る水準での継続性には疑問が残ります。200.00円突破なら、戻り売りを仕掛けたいと考えています。
【ユーロ/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:EUR/JPY:169.000-175.000
【ポンド/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:GBP/JPY:195.000-202.000
8/4 週のイベント:

一言コメント
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来週の為替予想 ユーロ 円
2028年2月のユーロ円見通し。当月始値 217.92、最低 214.50、当月最高 221.04。平均 217.81。月末 217.77。変更 -0.1%。
2028年11月のユーロ円予想。当月始値 222.15、最低 222.15、当月最高 232.24。平均 226.34。月末 228.81。変更 3.0%。
2028年1月のユーロ円予想。当月始値 211.57、最低 211.57、当月最高 221.19。平均 215.56。月末 217.92。変更 3.0%。
2028年9月のユーロ円予想。当月始値 223.09、最低 223.09、当月最高 232.46。平均 226.92。月末 229.02。変更 2.7%。
2029年4月のユーロ円見通し。当月始値 238.16、最低 231.76、当月最高 238.82。平均 236.01。月末 235.29。変更 -1.2%。
2029年1月のユーロ円見通し。当月始値 224.26、最低 220.46、当月最高 227.18。平均 223.93。月末 223.82。変更 -0.2%。
2028年3月のユーロ円予想。当月始値 217.77、最低 217.77、当月最高 225.44。平均 220.77。月末 222.11。変更 2.0%。
ドルの代替通貨としての役割や、実際に世界の為替取引の約四分の一がユーロドルということもあり、ドルが上がるとユーロが下がり、ユーロが上がるとドルが下がる傾向にある。 中東・東欧・ロシア・アフリカとの関係が、他の先進国よりもつよく、これらの国で有事が起こった際には売りが出る傾向がある。
ドル 円 予想 2025、2026、2027-2029。
2027年10月のユーロ円見通し。当月始値 208.38、最低 204.02、当月最高 210.24。平均 207.44。月末 207.13。変更 -0.6%。
特定の状況において、ユーロ圏各国の財政状況に注目が集まる場合があります。
今週は8/12の豪中銀政策理事会の利下げ観測を巡り、7/30発表の豪4-6月期消費者物価指数や7/31発表の豪4-6月期小売売上高に注目。7/17発表の豪6月雇用統計では、就業者数が前月比0.2万人増と市場予想を大幅に下回ったことに加え、個人消費を支える役割を担うフルタイム雇用が3.82万人減、(パートタイマーが4.02万人増)と弱い結果となりました。さらに失業率も4.3%と2021年11月以来の水準へ悪化。7/8の豪中銀政策理事会では「インフレが2.5%へ継続的に向かうか否かを確認するため、より多くのデータを検証する時間的な余裕がある」との判断の下、市場予想に反し、政策金利を据え置いただけに、判断が誤りだったことになるか注目されます。そのほか、日米金融政策会合や米7月雇用統計、さらに石破首相の続投/辞任を巡る政局の行方に対する反応も含め、日足・転換線(96円53銭)を下値支持線として7/15の97円43銭を上抜けるか、転換線を上値抵抗線として基準線(95円64銭)へ下落するか注目されます。
一方、ポンド/円も底堅い展開が続いており、198.80円付近まで上値を伸ばし、200.00円到達後の一段高が期待される場面です。ただし、昨年秋以降、200.00円の壁に2度阻まれてきたことを考えると、今回が三度目の正直となるかが注目されます。200.00円を上抜けるまでは慎重に押し目買いを検討したいと考えますが、三度目も上値を抑えられるようであれば、調整局面を想定し、売り目線へ転換したいと考えています。
2029年2月のユーロ円見通し。当月始値 231.68、最低 231.68、当月最高 242.21。平均 236.05。月末 238.63。変更 3.0%。
前回5/29の委員会で0.25%の利下げを決めたほか、声明文で成長率とインフレ見通しをともに下方修正し、政策金利のさらなる引き下げを示唆。こうした中、7/31の南ア中銀政策委員会で現状維持か追加利下げか、また、7/23に議会下院で成立した歳出法案を受けて南アの財政悪化懸念が高まるか注目されます。そのほか、日米金融政策会合や米7月雇用統計に対する反応も合わせ、日足・転換線(8円31銭)を下値支持線として7/21の8円39銭、7/18の8円41銭を目指して上昇するか、転換線を上値抵抗線として基準線(8円22銭)に向けて下落するか注目されます。

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