外為どっとコム総合研究所の大嶋一彰氏に、先週発表されたFOMC、日銀金融政策決定会合、米雇用統計を踏まえた今後のドル円相場の見通しについてお話を伺いました。
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雇用統計が示した米国経済の転換点
■大きな見方の変化を余儀なくされた雇用統計
先週金曜日に発表された米雇用統計は、市場の見方を大きく変える内容でした。当月分(7月)の雇用者数が予想を下回ったことに加え、5月と6月分の大幅な下方修正が入ったのです。
これまで雇用者数の3ヶ月平均で見ると15万件の雇用が維持できており、「米国経済は安定している」との評価でしたが、今回の下方修正により、この3ヶ月平均が3万5000件まで右肩下がりに落ちてしまいました。
■ハト派とタカ派、二つの見方
ただし、この雇用統計に対しては二つの見方が可能です:
●ハト派的見方(弱気)
・雇用の伸びが明らかに鈍化
・米国景気に対する懸念材料
●タカ派的見方(強気)
・6月が底を打ち、7月は改善傾向
・企業の先行き不透明感が徐々に晴れ、雇用拡大へ
民間部門の雇用データ(BLS・ADP)を見ると、6月に一旦底を打って7月以降改善に向かっているという解釈も可能で、8月・9月はさらに拡大する可能性もあります。
年末のドル円予想を150円から142円に下方修正
■予想変更の背景
これまで年末に向けて150円を予想していましたが、先週の雇用統計発表を受けて142円に下方修正しました。
この変更の主な理由は:
1. FRBの利下げ期待の高まり
・年内利下げ回数の市場織り込みが1.3回から2.5回に増加
・来年の利下げ期待も5回程度から6回程度に拡大
2. 政治的要因
・クーグラー理事の任期前退任
・労働統計局長の解任
■下値の堅さも考慮
一方で、ドル円が大幅に下落する可能性は限定的と見ています。過去2年間で終値ベースでは140円台前半で下げ止まっており、投機筋が過去最高水準の円ロングポジションを積み上げても140円を割らなかったことから、一定の買い需要があると考えられます。
これは以下の構造的要因によるものです:
・日本から海外への投資増加
・日米企業間投資の拡大
・個人のNISA資金流入
最も注目すべき材料はFRBの金融政策
現在の市場で最も重要な材料はFRBの金融政策とそれを取り巻くトランプ政権の意向です。
■ジャクソンホールへの注目
今月下旬のジャクソンホールでのパウエル議長の発言が注目されます。雇用統計発表後、FED高官2名が早期利下げに慎重姿勢を示しており、パウエル議長がこれを追認するかが焦点です。
■パウエル議長のジレンマ
パウエル議長は基本的にハト派(利下げ志向)ですが、トランプ大統領がFRBに利下げを迫れば迫るほど、「政権の圧力に屈した」と思われることを避けるため、逆に利下げがしにくくなっているのが現状です。
エマージング通貨の見通し
■通貨別の評価
●トルコリラ:ネガティブ
・エルドアン大統領の政治的リスク
・独裁的政治体制によるテールリスク
・今年3月のようなトルコリラショックの再来可能性
●南アフリカランド:ポジティブ
・インフレ目標の3%への引き下げ予定
・金利引き下げは通貨にネガティブだが、経済にはプラス
・結果的に資金流入が期待される
●メキシコペソ:ポジティブ
・司法制度改革などの懸念材料はあるものの
・高金利の維持が可能
・米国経済の恩恵を継続して受けている
まとめ
先週の雇用統計を受けて、FRBの利下げ期待が高まり、ドル円は下押し圧力が強まっています。ただし、日本の構造的な対外投資増加により、大幅な円高進行は限定的と予想されます。
年末のドル円予想を150円から142円に下方修正しましたが、140円を大きく割り込む展開は考えにくく、この水準が当面の落としどころになると見ています。
今後の展開では、ジャクソンホールでのパウエル議長の発言と、トランプ政権の金融政策への圧力の程度が重要な判断材料となりそうです。
円卓で有名だった旧・上田ハーローの元ディーラー・ストラテジスト・アナリストの所属のチーム。マネ育chに「3分テクニカル分析」(動画)、週刊為替レポート「ハロンズ」、米雇用統計レポート「米国雇用統計の予想と戦略」等執筆。X(Twitter)アカウントTEAMハロンズ(@TeamHallons)では、マーケット雑感、経済指標のヘッドラインを呟いている。平日21:00からはLIVE番組【実践リアルトレード】も担当し、テクニカル分析の解説やリアル口座を使ったトレードをお見せするなど、FX個人投資家の皆様のお取引に有効な情報を日々、配信している。
外為どっとコム総合研究所 情報企画部 為替アナリスト
小俣 凪子(おまた・なぎこ)
大学卒業後、約2年メガバンクで勤務し個人営業で投資信託や保険販売等を行う。 2021年3月(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 銀行勤務時代に得た接客スキルを活かしながら、X(Twitter)やYouTubeなどSNSで個人投資家に寄り添った情報発信を精力的に行っている。元邦銀ディーラー今井雅人氏と共に「FX脱初心者塾」(動画シリーズ)を担当。
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2025年ドル円相場予想 年末は142円雇用統計ショックを受けて今後の為替相場見通し FX
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上値は、147.80-90に軽い抵抗が148.10-20,148.60-70,148.90-00,149.50-60に強い抵抗が出来ており、全てをクリアし切れない可能性が高いと見ていますが、149.60超えで終えれば“ニュートラル”な状態に戻して下値リスクがやや後退、150.90-00の抵抗を上抜けて終えれば“ドル強気”の流れに戻します。この場合でも長期トレンドがまだ弱く、156円台に乗せて越週するまでは下値リスクを残します。下値は、147.00-10に強い抵抗がありますがこれを下抜けて終えた場合は、下値余地が若干拡がり易くなり、146.60-70,146.20-30,146.00-10,145.40-50にある一段と強い抵抗をどこまで切り崩せるかトライする動きへ。現状下での可能性が低いと見ていますが、144円を割り込んで終えた場合は、新たな下落リスクが点灯、142円を割り込んで終えた場合は4月に付けた139.89が安値であったかどうかをトライする動きが強まり易くなります。
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一方直近の週足を見ると、上ヒゲが非常に長く、実体の小さい陰線引けとなりました。上値トライに大きく失敗した形で終えており、反発力の鈍い展開が予想されますが、一方で、4月に付けた139.89を基点とする週足のサポートラインが146.10-20に控えており、これを割り込んで越週しない限り、調整下げの範囲内となります。反発に転ずる可能性を残した状態にあることから、このレベルでの売りも慎重に臨む必要があります。また、146円割れで越週した場合は、下値余地がもう一段拡がり易くなりますが、4月の139.89と7/1に付け直近安値142.69を結ぶサポートラインが144.00-10に位置しており、これを割り込んで越週しない限り、下値余地も限られる展開が予想されます。また、今年1月に付けた158.87を基点として上値を切り下げて来た流れからも上抜けた位置をキープしていることも、反発に転ずる可能性を残しています。一方で、上値も148.50-60,148.80-90,150.00-10に週足ベースで見た強い上値抵抗が出来ており、これらを全て上抜けて越週しない限り、上値余地も拡がり難い状態です。今週の週足ベースで見た上値抵抗は前述の通り。下値抵抗は146.10-20,145.00-10,144.60-70,144.00-10にあります。31週、62週移動平均線は148.27と150.01に位置しており、実体ベースで上抜けきれておらず、下値リスクを残した状態です。
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同時に発表されたドットチャートでは、2025年末時点での中央値が3.875%で据え置きとなっています。一方で、2026年末、2027年末時点での金利見通しはそれぞれ上方修正されています。
2009年にみずほ総合研究所(当時)入社以来、一貫してエコノミストとしてマクロ経済調査を担当。2011年~2013年は内閣府(経済財政分析担当)へ出向。官庁エコノミストとして『経済財政白書』、『月例経済報告』などを担当。2021年4月より現職。2025年から景気循環学会・理事。主な著書(すべて共著)は、『TPP-日台加盟の影響と展望』(国立台湾大学出版中心)、『激震 原油安経済』(日経BP)。日本経済・債券市場、中国などのアジア情勢が専門、セクターは不動産、観光、半導体等を分析。
この時、鍵になったのは株価の動きだったと私は考えています。2017年12月の減税案成立の後、2018年1月から米国株は下落に向かいました。当時ナスダック総合指数の90日MAかい離率はプラス10%程度に拡大していましたが、これは短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっていることを示唆するものでした(図表4参照)。
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