百貨店 呉服屋系と電鉄系で明暗

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百貨店 呉服屋系と電鉄系で明暗
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電鉄系百貨店の事業縮小は名古屋に限った話ではない

電鉄系百貨店の事業縮小は鉄道会社の構造改革だけの話ではない。日本の社会構造の変化の反映ともいえる。

日本独自のビジネスモデルであるターミナルデパートの誕生からまもなく100年。人々の暮らしや移動、そして消費が大きく変化する中、電鉄系百貨店がどのような姿に変わっていくのか。今後相次ぐターミナルの再開発は大きな節目になる。

秋田拓士社長が日本経済新聞の取材で「郊外店は『百貨店』という店名から脱出させて新しい施設に生まれ変わらせたい」と...

近鉄百貨店は2029年2月期までに本店以外の店名から「百貨店」を外す。郊外や地方の店舗はアパレルなどのテナントを誘致する従来の百貨店モデルから脱し、日常使いの商業施設として生き残る姿勢を鮮明にする。とりわけ地方都市の百貨店をとりまく事業環境は厳しく、こうした動きが広がる可能性もある。

電鉄系百貨店の事業縮小は名古屋に限った話ではない。

百貨店は「一億総中流」と呼ばれた時代に全盛期を迎えた。全国百貨店売上高は91年の9.7兆円をピークに2023年には5.4兆円まで下がった。この30年間で「ユニクロ」に代表されるカテゴリーキラーが台頭。また2000年の規制緩和によって全国に大型のショッピングセンターが乱立した。特に百貨店の最大の稼ぎ頭だった衣料品は競争力を削がれていった。百貨店の店舗数は直近の20年間で4割も減っている。

東京急行電鉄(東京都~神奈川県)が中核を成す東急グループの百貨店。東京都渋谷区を中心に東京都・神奈川県・長野県・北海道などに店舗展開しています。オンラインショップでは、東急百貨店さっぽろ店より「北からの贈り物」として銘菓・逸品・旬の味覚などを取り寄せることができます(カニ・いくらなど海産物ほか)。

名古屋鉄道は同店周辺のビルを取り壊して、商業施設、オフィス、ホテルなどが入る高層ビルを3棟建てる。駅のプラットフォームの移設も含むため、最終的な工事終了は40年になる。この後継の商業施設は、百貨店以外のものになる見通しだ。

電鉄系百貨店は阪急電鉄の創業者である小林一三(1873-1957年)が、1929年に関西一のターミナルである大阪・梅田駅に阪急百貨店を開業したのが始まりだ。小林一三は鉄道会社がターミナルの小売業や沿線の住宅開発を通じて乗降客数を増やすビジネスモデルを確立したパイオニアだった。この手法は全国に広がり、戦前戦後にかけて全国のターミナルに百貨店が誕生した。当時、今でいうSCは未発達で、大型の小売業といえば百貨店だった。

落ち目の百貨店業界であるが、大都市圏の都心部店舗に限っては広域から吸引し、インバウンド客も集まり、非常に賑わっている。1店舗で年商1000億円以上も稼げるという例は他国でもないそうだ。

新宿店本館の跡地は、小田急百貨店の親会社・小田急電鉄などが再開発する。本館の建物は22年10月以降に解体。29年に地上48階の高層ビルに生まれ変わり、上層部がオフィス、下層部が商業施設になる。ここに再び小田急百貨店が入るかは現時点で「未定」(同社広報)だという。

これも明確に二分できるわけではないが、歴史のDNAは案外いまも継承されている。関西で圧倒的なブランド力を誇り、百貨店売上高で国内2位の位置にある阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)でさえ、「長年、富裕層向けの外商に関しては呉服系にかなわない部分があった。外商で戦えるようになったのは12年に建て替え開業してからだ」(関係者)と振り返る。

小田急百貨店が新宿店本館の営業を2022年9月末で終了すると発表した。東急百貨店も昨年春に閉店した渋谷の東急東横店に続き、同じく渋谷の東急本店を23年春頃に閉める。両者に共通するのは「電鉄系百貨店」であり、親会社のターミナルの再開発に組み込まれていることだ。今後、名古屋駅の名鉄百貨店、池袋駅の東武百貨店にも再開発の波が押し寄せる。

乗降客数で新宿駅に次ぐ国内2位の渋谷駅では、「100年に1度」の再開発が進行中だ。これを主導する東急は、子会社・東急百貨店の旗艦店である東急東横店の東館を12年に閉店し、跡地に複合施設の渋谷スクランブルスクエア第1期棟を19年11月に開業した。低層部は3万2000平方メートルのSCになり、200以上のテナントが営業している。20年春に閉店した東急東横店の西館・南館も現在解体工事が進んでおり、27年に渋谷スクランブルスクエア第2期棟が完成する。

日本の百貨店には2つの系統がある。一つは呉服屋を祖業とする「呉服系」。三越、伊勢丹、高島屋、大丸、松坂屋、そごう、松屋などである。もう一つが鉄道会社が沿線価値を高めるためターミナルに作った「電鉄系」。こちらは阪急、東急、近鉄、西武、小田急、京王、東武、阪神、名鉄などである。企業再編もあって現在は必ずしも呉服系・電鉄系に二分できるわけではない。たとえば西武は発祥こそ電鉄系だが、そごうとともに06年にセブン&アイ ホールディングス傘下になり、23年には米投資ファンドに売却された。

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