
東京市場は不安定か。米国株は上昇。ダウ平均は463ドル高の44922ドルで取引を終えた。べッセント財務長官がメディアのインタビューで0.50%の利下げを支持したことが伝わり、早期利下げに対する期待が株買いを促した。米長期金利が低下して為替はドル安(円高)に振れており、ドル円は足元147円20銭近辺で推移している。CME225先物は円建てが225円安の43145円、ドル建てが200円安の43170円で取引を終えた。
米国株は上昇したが円高は日本株には逆風となるため、強弱感が交錯するだろう。CME225先物は安寄りを示唆している。ここ数日はCME225先物がかなりの高寄りを示唆して日経平均も勢い良く上昇するといったケースが多かっただけに、初動が甘いと直近の上昇に対する利益確定売りが強めに出てくる可能性がある。とは言え、足元の地合いの良さから、押しが深くなるようなら下値は拾われるだろう。極端な動きは修正されて終値ではそれほど値幅が出ないとみるが、場中は方向感が定まらないと予想する。日経平均の予想レンジは42800-43500円。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
防衛支出拡大の寄与は 26年から本格化する見通しです
●日銀は、米国関税引き上げの影響による景気後退の回避が確認できれば、金融政策正常化を継続し、25年10月に利上げを行う見通しです。
●米国の25年の実質GDP成長率見通しを1.5%、26年を1.3%へ下方修正しました。トランプ政権の大幅な関税引き上げにより、スタグフレーション的な影響が出る可能性が高まっています。個人消費デフレーターの上昇率は25年3.2%、26年3.1%に上振れる見通しです。対中関税は最初の相互関税発表時の54%(薬物関連の20%含む)まで引き下げられると想定しています。関税の水準が大きく変動するため、不透明感を理由に新規投資や雇用を抑制する企業が増えていますが、家計、企業ともに手元資金が潤沢で、減税も見込まれることから、景気後退は回避できると予想します。
米国による報復税(899条)は、日本企業へのもう一つの足枷となる見通しだ。JPモルガンの試算によると、日本が不公正な税をかける「差別的な外国」と見なされ、法人や個人への法人税率や源泉税率が引き上げられると、年5%の引き上げで企業の純利益は1%ポイント近く、3年で3%ポイント押し下げられる。これは、トランプ関税の影響(純利益を4〜6%ポイント押し下げる)よりも小さいが、これまで関税影響が小さいとみられていた米国内での生産比率が高い自動車・医薬品メーカーへの負担となる。日本企業による米国への投資は関税負担を減らす一方、報復税を高めてしまい、企業は難しい対応を迫られることになるだろう。
ちなみに、先週の2月20日のNYダウは3営業日ぶりに反落し、終値は前日比450.94ドル(1.01%)安の4万4176.65ドルでした。この日は、ウォルマート(WMT)が発表した収益見通しが市場予想を下回ったことで、「トランプ政権の関税政策によってインフレが再燃し、先行きの消費が鈍る」との懸念が強まって、消費関連株や景気敏感株が売られました。
いずれにせよ、現時点においても、日本株全体を大きく上下させる材料は見当たりません。このため、当面の日経平均株価は膠着が続く見通しです。よって、飛びつき買いを厳に慎み、好業績の大型株の押し目を丁寧に拾う戦略で相場に臨むべきと考えます。
今回日銀が示した慎重な見通しは、サプライズをもって受け止められた。国内景気は堅調だが、米国の関税による不確実性を織り込んだためだという。ただ、日米交渉が進行中で関税を巡る状況が時々刻々と変わるなか、工夫の余地もあったのではないか。例えば不確実性の高さから、IMFの4月世界経済予測のようにシナリオ分析やいくつかの時点での見通しを示し、状況変化に応じて参照できる分析を示すこと。また、審議委員の経済物価見通しの幅が前回と変わらなかったことから、委員の情報源多様化などを通じてより多様な見方を政策運営に反映していくこと等だ。こうした工夫が日銀と市場の認識ギャップを埋める一助となるのではないか。
●欧州では、25年の成長率見通しを0.7%に引き下げました。米国の相互関税が想定より引き上げられたことが要因です。26年には1.3%成長に回復する見通しです。①エネルギー価格が低位安定している、②ECBの利下げや域内防衛費の拡大、③ドイツの財政支出拡大、などプラス効果が期待できます。防衛支出拡大の寄与は、26年から本格化する見通しです。
●米ファクトセット(FactSet)によれば、日米の企業業績の見通しは堅調です。4月末の米S&P500種指数の予想1株当たり純利益(EPS)は前年同月比+9.0%、TOPIXの予想EPSは同+12.1%となりました。ただし、足元のガイダンス撤回や業績下方修正はまだ反映されていません。
外国人労働者が増えることは、経済成長の観点からは望ましいことだ。日本の潜在成長力は少子高齢化から低下圧力を避けられない。将来人口推計によると、2070年までに日本の労働人口は約4割減る見通しだ。既に2022年頃から人手不足で医療福祉、建設、飲食などの業種では業務運営が難しくなり、賃上げ圧力も強い。大幅な賃上げ圧力は中小企業に重くのしかかる。推計では、外国人労働力比率は2070年には1割強になると想定されている。その道のりはまだ長いが、円安でも選ばれる国づくり、外国人とともに働く職場づくり、外国人に日本の生活を理解してもらう環境づくりなど、中長期で進めていくべき課題は多い。
それはさておき、今週の2月26日に、エヌビディア(NVDA)が2024年11月〜2025年1月期決算を発表します。決算で市場予想を上回る数値が出れば、エヌビディアのみならず、ハイテク株全体に影響が及ぶ見通しです。そうなれば、ハイテク株指数の色彩が強い日経平均株価にもポジティブに作用するはずです。具体的には、次世代AI半導体の「ブラックウェル」の販売好調が確認できる決算が期待されます。
日銀の高田創審議委員は2月19日、「賃上げなど前向きな企業行動の持続性が確認されて経済・物価見通しが実現していけば、利上げで一段のギアシフトを進める局面にある」との見解を示しました。
米国が3月26日に25%の自動車関税適用を表明して以来、日本株は米国株以上に下落した。主要市場は自動車関税に加え4月2日に明らかになる相互関税や欧州やカナダによる報復関税とその影響を警戒し、いずれも大幅に下落した。しかし、なぜ日本株の調整幅が米株以上に大きいのか?日本株市場では自動車メーカーの業績に対する市場予想が関税影響を十分におり込んでこなかった面はあるが、相互関税の影響は税率の低さから大きくならない見通しだ。関税により米国の2025年インフレは2.7%から4.5%に高まり、経済成長率は1.8%から1.3%へ減速する予想であり、日本への影響は米国より軽微ともみられる。冷静な判断が必要だ。
●欧州では、ECBによる利下げが見込まれますが、財政拡張へ政策転換した効果が経済を下支えし、長期金利はレンジ内の推移となる見通しです。
●日本株式市場では、トランプ関税の不透明感が強く、円高への警戒感もあるため、神経質な展開が続く見込みです。株価純資産倍率(PBR)の水準は既に低水準で、日本企業の新年度の業績見通しが悪いことは株価に織り込まれたようです。日本企業のガバナンスは改善しており、決算発表と同時に自社株買いなど株主還元の強化の発表も有りそうです。米国の関税政策の不透明感が和らげば、株価は回復に向かうと予想します。
●日銀は、24年度の政策金利の引き上げを2回とも実質GDP見通しの引き下げと同時に行っています。景気の減速は金利政策にあまり影響しないようです。3月の全国消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)は2.9%上昇でしたが、利上げの可能性は低くなっているようです。



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