お盆相場の激変とベッセント財務長官発言の影響【外為マーケットビュー】
動画配信期間:公開日から2週間
外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。
動画の内容抜粋
お盆相場での予想外の大変動
お盆であまり動かないという予想が多かった今週の為替マーケットだったが、ベッセント財務長官の発言などが重なって非常に大きく動いた。最初に米CPIが火曜日に発表され、市場予想よりも関税の影響で強い数字になるという思惑があったため、金利高とドル円高で推移し高値をつけた。
しかし米CPI発表がほぼ予想通りだったため下落した。予想通りであれば動かなくても良いはずだが、市場期待が高めの数字にあったことが影響した。米CPIの詳細を見ると関税の影響が徐々に出始めており、エネルギー価格低下で低く抑えられたが、中古車価格上昇に見られるように早めの購入行動が出てきている。
ベッセント財務長官の重要発言
最初は米CPI発表後の下落も押し目買いで3回ほど147円台から148円台に押し戻されていたが、最後は押し込まれた。その後13日のニューヨーク時間早い時間にベッセント財務長官の発言が重要な転換点となった。
ベッセント財務長官は10年債や30年債の金利について質問され、アメリカの10年債金利は今年下落している一方、他国の多くは上昇していると指摘した。30年債金利上昇については、日本やドイツの金利上昇に足を引っ張られているとし、特に日本について「インフレ問題を抱えている」「植田総裁との話で私の意見として日本もビハインド・ザ・カーブだ」と発言した。
ビハインド・ザ・カーブ批判の意味
中央銀行を評価する際の「ビハインド・ザ・カーブ」は最大の侮辱の言葉で、無能という意味合いも込められている。多くの中央銀行は現在データドリブンで動くが、これは遅れるリスクを伴う。ベッセント氏はグリーンスパンのような先読み政策を評価し、もし正確な雇用統計が出ていれば6月に利下げできたとも述べた。
各種経済モデルで計測すると1.5-1.75%の利下げが適切としたが、テイラールールでは現在の4.25%の政策金利はほぼ適正水準であり、どのモデルを使用したかは不明だ。ベッセント氏の日本政策批判が円高要因となり、146円近辺でショートが溜まった影響もあった。
関税の消費者転嫁と経済への影響
米PPIが市場予想より高い数字となったが、もともとぶれやすい指標だ。しかし消費者物価に反映される際は関税の影響で消費者転嫁が進み、消費不振と成長鈍化につながる。ゴールドマンサックスのヤン・ハチウス氏は関税の60数%を米消費者が負担すると分析しており、トランプ大統領は批判しているが正しい見方と考えられる。
これは米消費者への消費税と同じ効果で、成長見通しは2025年1.5%、2026年1.0%程度となる。成長鈍化でFRBは利下げ対応を迫られ、スタグフレーション的状況でドル売りが鮮明になる可能性がある。
今後の注目イベントと展望
8月15日にプーチン・トランプ会談が予定されており、プーチン側から戦争中止の意向があるとされる。ウクライナ戦争がドル円急騰のきっかけだったため、停戦・終戦は円高要因となる。
8月20-21日のジャクソンホールのテーマは労働市場で、米雇用統計の正確性が問題となる中、パウエル議長の講演内容が注目される。昨日のドル反応は下値でのショート溜まりによる反発だが、物価上昇でドルが継続上昇するわけではなく、消費不振による成長鈍化でFRBは利下げを選択する見込みだ。
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志摩力男 氏
慶應義塾経済学部卒。1988年ー1995年ゴールドマン・サックス、2006-2008年ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダーを歴任、その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。独立した後も、世界各地の有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。
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ドル売り相場の始まり米CPIとベッセント財務長官発言でお盆相場が一変 2025 8
トランプ再選は米国経済・金融市場が抱える問題を増幅:ドル高・円安が緩やかに修正されるのであれば日本経済にプラスだが。。。
ナショナルオーストラリア銀行(NAB)のストラテジスト、ロドリゴ・カトリル氏(シドニー在勤)は「ベッセント財務長官が発言すると市場は耳を傾ける。そして今、同氏は円高を望んでいる」と指摘。少なくともここ数日、市場はベッセント氏の発言をより注目しており、「その根底にはドルを押し下げるというテーマがある」と述べた。
お盆であまり動かないという予想が多かった今週の為替マーケットだったが、ベッセント財務長官の発言などが重なって非常に大きく動いた。最初に米CPIが火曜日に発表され、市場予想よりも関税の影響で強い数字になるという思惑があったため、金利高とドル円高で推移し高値をつけた。しかし米CPI発表がほぼ予想通りだったため下落した。予想通りであれば動かなくても良いはずだが、市場期待が高めの数字にあったことが影響した。米CPIの詳細を見ると関税の影響が徐々に出始めており、エネルギー価格低下で低く抑えられたが、中古車価格上昇に見られるように早めの購入行動が出てきている。
一時1ドル139円50銭台まで円高が進む:米国の大幅利下げ観測は行き過ぎか?
最初は米CPI発表後の下落も押し目買いで3回ほど147円台から148円台に押し戻されていたが、最後は押し込まれた。その後13日のニューヨーク時間早い時間にベッセント財務長官の発言が重要な転換点となった。ベッセント財務長官は10年債や30年債の金利について質問され、アメリカの10年債金利は今年下落している一方、他国の多くは上昇していると指摘した。30年債金利上昇については、日本やドイツの金利上昇に足を引っ張られているとし、特に日本について「インフレ問題を抱えている」「植田総裁との話で私の意見として日本もビハインド・ザ・カーブだ」と発言した。
米PPIが市場予想より高い数字となったが、もともとぶれやすい指標だ。しかし消費者物価に反映される際は関税の影響で消費者転嫁が進み、消費不振と成長鈍化につながる。ゴールドマンサックスのヤン・ハチウス氏は関税の60数%を米消費者が負担すると分析しており、トランプ大統領は批判しているが正しい見方と考えられる。これは米消費者への消費税と同じ効果で、成長見通しは2025年1.5%、2026年1.0%程度となる。成長鈍化でFRBは利下げ対応を迫られ、スタグフレーション的状況でドル売りが鮮明になる可能性がある。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストも、ベッセント氏発言が改めて材料視されたとし、ドルのサポートとなっていた147円を抜けたため、損失を限定する「ストップロス的なドル売り・円買い」の動きがあったのではないかとみている。
8月15日にプーチン・トランプ会談が予定されており、プーチン側から戦争中止の意向があるとされる。ウクライナ戦争がドル円急騰のきっかけだったため、停戦・終戦は円高要因となる。8月20-21日のジャクソンホールのテーマは労働市場で、米雇用統計の正確性が問題となる中、パウエル議長の講演内容が注目される。昨日のドル反応は下値でのショート溜まりによる反発だが、物価上昇でドルが継続上昇するわけではなく、消費不振による成長鈍化でFRBは利下げを選択する見込みだ。


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